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 道中に色々ありつつも、徒歩の旅で三日ほど。ユリウス達は最初の目的地である町に到着した。

 里ともユエル村とも雰囲気の違うここはラヴァーナの町というらしい。

 行商人達の言葉通り、かなり賑わっている町だ。


「里の何倍の人が住んでるんだろうな」


「うん…」


 目をキラキラさせているユリウスとは対照的に、アバトはしゅんとしている。


「もー…元気出せって。ここで新しい武器買おう?」


「だってさぁ…折角マスターが作ってくれたんだぜ?

 それを俺は…うぅ」


 数日前、ユリウスはアバトにお手製の武器を作ってあげた。倒したホーンラビットの角と丈夫そうな枝を組み合わせて作った簡素な槍だ。それをアバトはいたく気に入り、楽しそうに振り回していた。

 が、この町に着く直前にクマに出会った。魔物でも何でも無く、ただのクマである。戦えない人達にとっては魔物でなくても脅威かもしれないが、戦い慣れたユリウス達にとってはただのお得意様だ。上手く倒せばまるごと引きずっていって素材として高く売れるかもしれない。

 そんな気持ちで戦闘を始めたのだが、アバトの初撃でポキリと槍が折れた。

 呆然とするアバトだったが、それでクマが攻撃をやめてくれるはずもない。むしろ、ホーンラビットの角を刺された痛みにより暴走しそうだった。

 このままだとアバトも危ないし、アバトが暴走したら本人は無事でも今度は素材が危ない。ということで、今までは魔力を抑える練習をしていたユリウスだったが一時的に解除して全力でクマの首を切り落とした。

 が、その後も暫くアバトは凹んだまま。

 そして今に至ると言うわけだ。


「ありもので作った武器だから壊れるのも仕方が無いよ。

 しかも、今は旅の最中だからきちんとした道具もなかったしさ」


 里にいれば、まだそこそこ道具は存在した。今ユリウスが持っている双刀のように、微調整できるだけのものはあったのだ。が、今は旅先。本当に原始的な武器しか作れないのだ。今は抑えている魔力を自由自在に操れるようになればまた別かもしれないけれど。


「わかってるよ…。でもさ、ショックなもんはショックなんだって!」


「うんうん、アバトは良い子だなー。

 でも、きちんとした武器なしで戦ってアバトが怪我する方がイヤだからさくっといい武器買おうな。

 微調整できそうな道具があればちょっとずつ整えてアバト専用にしてやるからさ」


 専用武器、という言葉にピクリとアバトが反応する。

 もう一息だろうか。


「俺専用に整えてくれる?」


「そうそう、アバトと俺の共同作業だな。ちゃんとココが使いにくいとか、もっとこうならいいってアバトからの意見を聞いて、俺が調整するの」


「共同作業…」


 もしもアバトが犬型の魔物であれば、ブンブンと尻尾を振っている場面だろうか。すっかりご機嫌が治ったようだ。良かった。


「そうと決まればさくっとこのクマ売らないとな。血抜きはしてあるけど重いし…あと目立つ」


 目立つ、というのは正直今更な気もするけれど。

 筋骨隆々というわけではない、どちらかと言えば細身の男ふたりでどでかいクマを運んでいるのだ。目立たないわけがない。


「高値で売れるといいなー。俺頑張るから任せてくれていいぜ、マスター」


 機嫌の直ったアバトと共に、まずは素材を売りに行くことにした。

 町の人に尋ねると、こういった素材は大概皆冒険者ギルドというものに持って行っているということだ。場所も教えて貰い、クマを運んでいく。

 冒険者ギルドがあるという建物の中には、同じ服を着た人達が動き回っていた。お揃いの服というのが物珍しくてキョロキョロと見てしまう。すると、入り口付近にいたおねーさんが驚いた様子で声をかけてくれた。


「まぁ、こんな立派なクマどこで?

 このサイズで魔物化していないというのも珍しいですね」


「動物がでかくなると魔物化するんです?」


「詳しいシステムはまだ解明されていませんけど、長生きをして大きくなった個体が魔物化するというのはよく見られる現象ですよ。

 一杯魔素を取り込むせい、というのが今の主流の説ですけど」


「…魔素を取り込むと魔物化する」


 思わずアバトと目を合わせてしまう。

 食べ物のほとんどが狩った魔物である里の人間はもしかして…。

 同じ考えに至ったらしいアバトとうなずき合う。聞かなかったことにしよう。


「ええと、それでこれを売りたいんですけど」


「はい。冒険者カードを見せていただけますか?」


「へ? 冒険者カード…?」


 冒険者という職業があり、冒険者ギルドという組織らしきものがあるのも聞いた。が、カードとはなんだろう。

 もしかして、狩ったものを売買するには特殊な何かが必要なのだろうか。

 悩んでいるユリウス達を見て、おねーさんはテンションがあがっていく。


「…もしかして、冒険者の方ではない?

 それで、このデカいクマを二人で狩っちゃったんですか!?」


「あ、はいまぁ」


「すごーい! 是非これを機に冒険者になりませんか?

 メリットもたくさんありますし!」


 グイグイこられるけれど、そもそも冒険者とは何か、ということがわからない。このままだと勢いに流されてしまいそう、というところでアバトが割って入ってくれた。


「ちょいまち。俺もこの人も田舎育ちでそもそも冒険者が何かとかわかんねーんだわ。一から説明してもらえるか?

 それと、その前に重いからこれ売っぱらいたいんだけど」


「えーとそうですね。ではこのクマはこちらで一時預かりします。

 冒険者になってから売った方がちょびっとお得なものですから」


「冒険者にならなくても売れるわけ?」


「もちろんです。素材はいくらあっても困りませんからね。

 でもやっぱり冒険者になった方がお得ですよ。ご案内させていただきますのでカウンターのほうへどうぞ」


 そう言うとおねーさんは周囲の職員に声をかけていた。どうやらクマを倉庫へ運ぶように指示しているようだ。


「クマ…持ってかれちゃうかぁ」


「こんだけ人がいるんだから騙しとられるってことはないだろ。全員グルならわっかんねーけど。

 とりあえずその冒険者とやらの話聞こうぜ。

 得ならなればいいしさ」


 アバトの言葉に頷く。確かにそれはそうだ。

 しかし、ユリウスの顔は晴れない。どうした、とアバトが見つめてくるのでボソリ、と心情を吐露する。


「…俺、自分のことを結構人好きなタイプって思ってたんだけどさ」


「ん?」


「なんていうか…グイグイこられるのは苦手かもしれない。

 食われそうっていうか」


 先程のおねーさんの目から「逃がすものか」という強い意志を感じ取ったというか。ああいう視線を浴びるのは初めてで、少しびびってしまう。あれはいったいなんなのだろう。


「そーゆー時のための俺だろ。

 マスターが苦手なら俺が前に出ればいいだけだしさ…。とはいえ、なんであんなにグイグイくるんだかなぁ」


 二人は知らない。

 優秀な冒険者を引き込んだ受付には特別ボーナスがでることを。

 あの受付嬢には、二人が金一封に見えているのであった。

閲覧ありがとうございます。


明日も12時頃更新予定です。


よろしくお願いいたします。

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