36
ユリウスとアバトは、大陸中央へ向けて歩みを進めていた。
旅路は順調そのもの。やや単調すぎて飽きそう、くらいだろうか。
「…魔物って絶滅したのかな?」
「いやぁ…どうだろう?」
本当に順調そのもので、ただただ歩くしかない。
実は飽きてしまって一度アバトに飛んでもらうことも考えたし、実際やってみた。が、以外と旅人が多く十数分に一回は誰かに見つかりそうになってやめた。中央に近づけば近づくほど、使い魔という存在に対しての理解度が低くなるだろうと予測したからだ。
折角里の追っ手をなんとか撃退したのに、今度は魔物扱いされて終われるなんていうのは洒落にならない。
なので、今は単調で代わり映えしない道をテクテクと歩いているだけ。
勿論最初は結構感動したものだ。里周辺とは自生している植物も違う。ちょっとだけ街道から外れて薬草摘みなんかもした。けれどその感動も数時間もすれば薄れてしまう。
自分は戦闘向きではないと思っていたユリウスだが、こんなに暇だと魔物が飛び出てきてくれないかなと思ってしまうくらいには暇だった。
「そういえば、今アバトは人型だけど、その場合魔物の気配って感じられるのか?」
「んー、一応?
でもやっぱあっちの姿の方がめちゃくちゃわかりやすいな」
「なるほどなぁ。
で、今はいる?」
「いるにはいる。でもなんていえばいいかな…今にも襲いかかってきそうってのはいない。
警戒してる、のかな」
ユリウスに感じられない魔物の気配も、アバトは感じられる。しかし、それでも探知しづらいらしい。
「もしかして…この辺りの魔物って人慣れしてるのかもな」
これから向かう場所は辺境に比べて人が多い。何せ街道というものがきちんとあるくらいだ。里周辺なんか道という概念がないし、里からユエル村に至る道だって大型使い魔に何度か往復してもらって作った獣道でしかない。見る人が見なければ道だとわからないだろう。
それに比べて今通っている道は草木が刈られ馬車が通れるように整備されていた。結構でこぼこしているのでずっと馬車に座っていたら尻が酷いことになりそうだけれど。
「この道を歩く連中はそれなりに備えしてるだろうから様子を見て襲いかかろう、みたいな?」
里でも稀にあったことだ。討ち漏らした魔物が知恵をつけてしまい、手強くなってしまう。警戒し、知恵をつけた魔物は厄介だ。自分の命を守るためになんだってする。弱いものから狙う、不利を悟れば逃げる。魔物だって自分の命が大事なのだから当たり前の行動だろう。人に慣れているとそういう弊害があるもんな、と一人納得しているとアバトから予想がの言葉がふってきた。
「あと、マスターのせいもあるんじゃねぇかな」
「俺!?」
アバトの言葉にちょっと驚いてしまう。魔物が寄ってこないような特別なことをした覚えはないのだが。
「周辺の魔物とマスター比べたら、やっぱ圧倒的にマスターのが魔力強い、と思う。
俺は生まれる前から浴びてるから慣れてるけど、普通にびびるレベルじゃねぇかな」
「そんなにか!?」
コクリと頷かれて頭を抱える。
魔物が出てこないのは好都合ではあるものの、アバトの食料を考えれば少々問題だ。可愛い使い魔がお腹を空かす事態になりかねない。ただでさえそんなに強くなさそうな魔物なのだから、お腹一杯にするにはかなり狩らなければいけないのではないだろうか。
「うーん。魔力のコントロールができればいいのかな。
そしたら寄ってくるかも?
そうじゃなくても、俺が近寄っただけで逃げられるのは問題だしな」
「ただ歩いてるのも暇だし、練習してみれば?」
「うん、そうしようか」
とは言うものの、今まで意識していなかったものをやめるというのはなかなか難しい。暇潰しにはちょうどいいけれど。
「アバトはその間暇じゃないか?」
「んーそうだなぁ。
マスター武器貸してくんねぇ? 素振りでもするわ」
「いいよ。
人型で戦えた方が今後楽そうだもんな」
「そうなんだよな。下手にあっちになったら俺人間に襲われそうだわ…」
否定できないところがなんとも言いがたい。
人は未知のものを恐ろしく感じる。それに、ユリウスから見れば可愛くて仕方がないアバトだが、一般人の感覚からするととても恐ろしい見た目になるのだろう。実はユエル村で蛇型アバトを見た少女がかなり怯えてしまったという事件があったのだ。使い魔にそこそこ理解のあるユエル村でそうなのだから、他の町ではどうなるか、考えるだけで疲れてしまいそうだ。
しばらくお互いに無言で色々試してみる。
端から見ればとても不可思議な光景だろう。一人は黙々と刀をふるい、もう一人は目を閉じたり何かに集中するようなそぶりを見せている。その癖歩みは結構早いものだからいっそう不気味だ。
幸いなことにその光景を誰かに見られる前にアバトが接近に気づいてくれたけれど。
「あ。こうかな?」
そうやって黙々と魔力コントロールや素振りをしながら歩くこと数時間。太陽はちょうど真上で輝いていて、昼の休憩をとるにはもってこいの辺りだ。
アバトに魔力をそそいでいたときのことを思い出して試行錯誤していたのだが、ようやくこういうことかと感覚を掴めた。
「お? おお、すげぇ!
マスター弱そう」
「それ褒めてる、のか? いやでも、アバトがそう思ってくれたってことは出来てるってことだよな」
苦労の甲斐あってどうにか外に漏れ出る魔力を減らすことに成功したようだ。
しかしながら、問題点もある。
「でも、出来たのはいいけど、すごいなんていうか…窮屈だな」
「動きづらい?」
「うん。なんていえばいいかな。
できるだけ空気吸わないようにしてるみたいな…」
「うわー…」
「そういうアバトはどうだ? 刀使えそう?」
「…微妙。力加減間違って折りそうで怖いな」
ユリウスの刀はユリウスが使いやすいように調整を続けてきたオリジナル品だ。素振りをする分にはいいかもしれないが、実践となると難しいだろう。
「人型で戦う練習をするなら、アバトの武器も調達した方がいいだろうな」
「うげ。それどんくらい金かかるんだ?
もういっそマスター作ってくれよ」
「作るのは全然構わないんだけど素材がなぁ…。
周辺に良い牙とか爪とか持ってそうな魔物いるか? 打撃武器でいいなら植物系統でもいいけど」
ユエル村で得た素材は全部行商人や村人に売りはらってしまった。これから武器を作るのであれば素材から入手しなければならない。
「んーと…お? よさそうな気配あるかも?」
アバトが新しいおもちゃを見つけた子供のように笑った。
ユリウスとアバトは、大陸中央へ向けて歩みを進めていた。
旅路は順調そのもの。やや単調すぎて飽きそう、くらいだろうか。
「…魔物って絶滅したのかな?」
「いやぁ…どうだろう?」
本当に順調そのもので、ただただ歩くしかない。
実は飽きてしまって一度アバトに飛んでもらうことも考えたし、実際やってみた。が、以外と旅人が多く十数分に一回は誰かに見つかりそうになってやめた。中央に近づけば近づくほど、使い魔という存在に対しての理解度が低くなるだろうと予測したからだ。
折角里の追っ手をなんとか撃退したのに、今度は魔物扱いされて終われるなんていうのは洒落にならない。
なので、今は単調で代わり映えしない道をテクテクと歩いているだけ。
勿論最初は結構感動したものだ。里周辺とは自生している植物も違う。ちょっとだけ街道から外れて薬草摘みなんかもした。けれどその感動も数時間もすれば薄れてしまう。
自分は戦闘向きではないと思っていたユリウスだが、こんなに暇だと魔物が飛び出てきてくれないかなと思ってしまうくらいには暇だった。
「そういえば、今アバトは人型だけど、その場合魔物の気配って感じられるのか?」
「んー、一応?
でもやっぱあっちの姿の方がめちゃくちゃわかりやすいな」
「なるほどなぁ。
で、今はいる?」
「いるにはいる。でもなんていえばいいかな…今にも襲いかかってきそうってのはいない。
警戒してる、のかな」
ユリウスに感じられない魔物の気配も、アバトは感じられる。しかし、それでも探知しづらいらしい。
「もしかして…この辺りの魔物って人慣れしてるのかもな」
これから向かう場所は辺境に比べて人が多い。何せ街道というものがきちんとあるくらいだ。里周辺なんか道という概念がないし、里からユエル村に至る道だって大型使い魔に何度か往復してもらって作った獣道でしかない。見る人が見なければ道だとわからないだろう。
それに比べて今通っている道は草木が刈られ馬車が通れるように整備されていた。結構でこぼこしているのでずっと馬車に座っていたら尻が酷いことになりそうだけれど。
「この道を歩く連中はそれなりに備えしてるだろうから様子を見て襲いかかろう、みたいな?」
里でも稀にあったことだ。討ち漏らした魔物が知恵をつけてしまい、手強くなってしまう。警戒し、知恵をつけた魔物は厄介だ。自分の命を守るためになんだってする。弱いものから狙う、不利を悟れば逃げる。魔物だって自分の命が大事なのだから当たり前の行動だろう。人に慣れているとそういう弊害があるもんな、と一人納得しているとアバトから予想がの言葉がふってきた。
「あと、マスターのせいもあるんじゃねぇかな」
「俺!?」
アバトの言葉にちょっと驚いてしまう。魔物が寄ってこないような特別なことをした覚えはないのだが。
「周辺の魔物とマスター比べたら、やっぱ圧倒的にマスターのが魔力強い、と思う。
俺は生まれる前から浴びてるから慣れてるけど、普通にびびるレベルじゃねぇかな」
「そんなにか!?」
コクリと頷かれて頭を抱える。
魔物が出てこないのは好都合ではあるものの、アバトの食料を考えれば少々問題だ。可愛い使い魔がお腹を空かす事態になりかねない。ただでさえそんなに強くなさそうな魔物なのだから、お腹一杯にするにはかなり狩らなければいけないのではないだろうか。
「うーん。魔力のコントロールができればいいのかな。
そしたら寄ってくるかも?
そうじゃなくても、俺が近寄っただけで逃げられるのは問題だしな」
「ただ歩いてるのも暇だし、練習してみれば?」
「うん、そうしようか」
とは言うものの、今まで意識していなかったものをやめるというのはなかなか難しい。暇潰しにはちょうどいいけれど。
「アバトはその間暇じゃないか?」
「んーそうだなぁ。
マスター武器貸してくんねぇ? 素振りでもするわ」
「いいよ。
人型で戦えた方が今後楽そうだもんな」
「そうなんだよな。下手にあっちになったら俺人間に襲われそうだわ…」
否定できないところがなんとも言いがたい。
人は未知のものを恐ろしく感じる。それに、ユリウスから見れば可愛くて仕方がないアバトだが、一般人の感覚からするととても恐ろしい見た目になるのだろう。実はユエル村で蛇型アバトを見た少女がかなり怯えてしまったという事件があったのだ。使い魔にそこそこ理解のあるユエル村でそうなのだから、他の町ではどうなるか、考えるだけで疲れてしまいそうだ。
しばらくお互いに無言で色々試してみる。
端から見ればとても不可思議な光景だろう。一人は黙々と刀をふるい、もう一人は目を閉じたり何かに集中するようなそぶりを見せている。その癖歩みは結構早いものだからいっそう不気味だ。
幸いなことにその光景を誰かに見られる前にアバトが接近に気づいてくれたけれど。
「あ。こうかな?」
そうやって黙々と魔力コントロールや素振りをしながら歩くこと数時間。太陽はちょうど真上で輝いていて、昼の休憩をとるにはもってこいの辺りだ。
アバトに魔力をそそいでいたときのことを思い出して試行錯誤していたのだが、ようやくこういうことかと感覚を掴めた。
「お? おお、すげぇ!
マスター弱そう」
「それ褒めてる、のか? いやでも、アバトがそう思ってくれたってことは出来てるってことだよな」
苦労の甲斐あってどうにか外に漏れ出る魔力を減らすことに成功したようだ。
しかしながら、問題点もある。
「でも、出来たのはいいけど、すごいなんていうか…窮屈だな」
「動きづらい?」
「うん。なんていえばいいかな。
できるだけ空気吸わないようにしてるみたいな…」
「うわー…」
「そういうアバトはどうだ? 刀使えそう?」
「…微妙。力加減間違って折りそうで怖いな」
ユリウスの刀はユリウスが使いやすいように調整を続けてきたオリジナル品だ。素振りをする分にはいいかもしれないが、実践となると難しいだろう。
「人型で戦う練習をするなら、アバトの武器も調達した方がいいだろうな」
「うげ。それどんくらい金かかるんだ?
もういっそマスター作ってくれよ」
「作るのは全然構わないんだけど素材がなぁ…。
周辺に良い牙とか爪とか持ってそうな魔物いるか? 打撃武器でいいなら植物系統でもいいけど」
ユエル村で得た素材は全部行商人や村人に売りはらってしまった。これから武器を作るのであれば素材から入手しなければならない。
「んーと…お? よさそうな気配あるかも?」
アバトが新しいおもちゃを見つけた子供のように笑った。
閲覧ありがとうございます。
明日も12時頃更新予定です。
よろしくお願いいたします。




