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「おーすげー。

 マスター器用なんだな」


「そうだなー。腕力はあんまり自信ないけど手先は器用な方だと思うよ」


 アバトが成長し、一人でトレントを倒した次の日の朝。

 やはりというかなんというか。アバトはまた一回り成長していた。

 トレントの素材は魔力ののった枝以外は薪や普通の木材として活用するしか利用法がない。少し丈夫な木材ではあるので重宝されるところもあるが、運ぶにしても重すぎるということで不要な部分はアバトが食べたのだ。その前に鳥も食べているため、すぐにお腹一杯になっていたようだけど、本人曰く魔力は摂取できたらしい。

 魔物を食べると成長するのだろう、という仮説は当たっていた。仕組みはよくわからないけど、そういうものらしい。

 蛇型のアバトはそろそろ納屋で眠るのも一苦労になりそうなサイズ。というか、入り口につっかえて出入りがしにくそうだった。

 人型の方は、10歳前後の子供といった感じだ。ユリウスは人の美醜にあまり頓着しない方だが、これだけは断言できる。アバトは年頃になればめちゃくちゃモテる、いわばイケメンと言う奴だ、と。

 主人の欲目もあるとは思うが、サラも昨日絶賛してくれたから多分間違いない。


「よし、出来た。

 ちょっと着てみてくれ」


「おう」


 本日の仕事は、まずアバトが辺りを歩いても大丈夫なように服を作ってやることだった。

 幸いなことに、村の人たちにとってきた素材を渡したところ、様々なものを提供して貰えた。特にトレントの枝は喜ばれ、村長さんが直々に買い取ってくれたほどだ。

 今までも、稀に落ちているのを見かけては行商人に売っていたらしい。イイお値段で売れるそうだ。確かにあれは加工のしがいがあるものなので頷ける。

 村の人の中にはお下がりを提供しようか、と提案してくれた人もいたけれど、それは丁重にお断りした。何故ならアバトの成長速度の予測がつかないから。

 一晩で人間でいうところの五年分の成長をしているのだ。折角お下がりを貰ったとしても多分一日で着れなくなってしまう。

 何より、大事な使い魔の服なのだから、出来る範囲で自分の手でなんとかしてやりたいとユリウスは思っていた。とはいえ一から手作りするのは難しいので、素材をもらってリメイク作業をするのが主となる。


「おー、いいじゃん」


「多分、明日には詰めてる丈を伸ばさないとダメだろうけどな」


 作ったのは簡易なローブとインナーだ。インナーはもう最初から使い捨てのつもりである。この成長速度のままであれば、どう考えても明日には入らなくなっているはずだ。


「へへっ」


 ローブは気に入って貰えたらしく、クルクルと周りながらヒラヒラする裾を確かめて楽しそうにしている。回る度にローブの裾がひらりと浮いて、膝小僧が見える。

 とても、可愛い。


「うん、これで人がいるところも歩けるな」


 いくら使い魔とは言え服も着せずに歩いていたら奇異の目で見られてしまうところだ。アバトは今のところ「裸を見られたら恥ずかしい」ということを知識としては知っているものの、その辺りの感覚は分からないらしい。

 昨夜もサラの家に鶏肉を届けた際に得意げに人型を見せてしまい大騒ぎになったものだ。


「でも、お日様こーんな高くなっちまったぞ?

 今から狩りだと難しくないか?」


「あー確かに。

 今からだとそんなに遠くには行けないだろうな。魔物に会う確率はかなり低そうだ」


 食事自体は昨日狩った鳥肉が少し残っているのでなんとかなるはずだ。なんなら昨日トレントの枝を売ったことでお金というものも手に入ったし、村で何か買ってもいい。


「なぁ、俺がひとっ走りなんかとってくるか?」


「えぇ…?」


 どうしたものかと悩んでいると、アバトから提案があった。

 それも、許可しづらいやつ。


「なんだよ、ダメなのか?」


「…心配なんだって」


 アバトが戦えるようになったのはつい昨日のこと。

 確かに今日は昨日よりもかなり成長しているため、そんなに苦戦はしないかもしれない。けれど、昨日の段階ではアバトよりもユリウスの方が強いのは確かだった。

 この村に来るまでの道中はヘロヘロで弱そうな主人としてアバトの目にはうつっていたかもしれない。けれどそれは里からの追っ手や魔物の不意打ちを気にしてほとんど寝ていなかったせいだ。実はサラを助けたときも、アントと戦ったときも本調子ではなかったのだ。

 今は納屋を借りてぐっすりと眠れるようになり、気力体力もバッチリ回復している。

 だからこそ断言するが、アバトはまだユリウスよりも弱い。

 翻って、ここ周辺の魔物の実力はどうか。

 全てを見たわけではないのでなんとも言えないが、昨日の段階のアバトとほぼ互角程度と見ていいと思う。ただし、強い種族がいないとも限らない。それを考えると安易に一人で行かせるのは躊躇われた。


「でもよ、多分足はもうマスターより速いぜ?」


「それはなんとなくわかる」


 アバトは主人であるユリウスに戦闘スタイルが似てしまったようで、スピード重視のタイプらしい。今から森を巡回してきても、アバトの足であれば何かしらの収穫はあるかもしれない、と思える程度に。

 そして、そのアバトの移動速度にユリウスの足で長時間ついていくのは無理そうだった。一瞬であればついていけるが、トップスピードで走り続けることは難しい。

 だからこそ、アバトは自分一人での狩りを提案しているのだろう。


「でも、心配なんだって。わかるだろ?」


「過保護め…」


「過保護で結構。

 …でも、過保護にしてるだけじゃ成長しないってのはわかってる」


 里にいた頃は、それこそ今の人型アバトと同じくらいの年齢の時にぽいっと里の外に出されたものだ。魔物を一体狩ってきて、戦利品を見せられるまでは帰ってくるんじゃないぞーといった感じ。今から考えれば大分スパルタだ。

 けれど、それも多分大人があとからコッソリついてきてくれていた、はず。多分。

 同じことをしてやりたいけれど、アバトが全力で動けばユリウスは着いていくのはほぼ無理だ。見守ることができない。だから、迷ってしまう。


「なー。絶対に無理しないからいいだろ?」


「無理しないの条件は?」


「ええと、格上だと思ったら挑まない」


「そりゃ当然だ」


「同レベルでもじゃあ挑まないで、確実に倒せるやつだけにする」


「うん、慎重すぎて悪いってことはないからそうしてほしい。

 それともう一個。

 確実に倒せるって思っても相手が複数なら撤退すること」


「えぇー…?」


「稀に連携するやつもいるんだよ。個々が弱くてもそういうやつらは手強い」


 ユリウスの脳裏に、過去の記憶がよみがえる。


閲覧ありがとうございます。


本日夜も更新の予定です。


よろしくお願いいたします。

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