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里周辺の樹海よりは、なんというか大人しい感じがする森の中。アバトと一緒にユリウスは特にアテがわけでもなく散策する。
目当ては魔物との遭遇だ。
本来であれば魔物は避けて歩くもの、なのだろう。
少なくともユエル村の人達に「ちょっと魔物を探してきます」と言ったら驚かれてしまった。彼らの感覚からすると、滞在中に見かけたら倒してくれると嬉しい、くらいのものだったらしい。積極的に狩りにいくことを伝えると、以前この辺りで変なうなり声を聞いた等の有力な情報を貰えたのでヨシとしよう。
「ゴハン?」
「そうだなー。アバトのご飯になるようなやつが出てきたらいいんだけど」
そういえば、起きたら少しだけアバトに変化があった。
今までは手のひらにのせて運搬できるくらいのサイズだった。だが、今はもう手のひらサイズとは言えなくなっている。
まっすぐにピンと伸ばせばユリウスの腹くらいには届くだろうか。
ただ、蛇なのでそんな風に直立不動とはならない。
それでも運搬するのはちょっと大変なので、今日からは頑張って本人に歩いて、というか這いずって貰うことにした。
抱き上げた結果、思っているよりは重量がないため、もしものときは抱きかかえるけれど。
「ゴハン、タベテ、オッキクナル」
「この急激な成長はやっぱり魔物を食べたからだと思うんだよなぁ。
ちなみにスキキライあるか?」
「ワカン、ナイ」
「無理して食べようとするなよ?
お腹壊したら大変だから」
そんな会話をしながら道のない森の中を散策する。
一応魔物らしき姿を見かけた気がする、という地点は教えて貰ったが、それだって完璧じゃない。魔物だって移動したりするだろうし、そもそも情報が結構古い。だから結局はのんびりと散策しつつになる。
その間に、薬草らしきものが見つかれば摘む、といったスタンスだ。
「これは多分、乾かして薬にするヤツだなぁ。
薬研がないんだよな…作るか」
「ユリウス、キヨウ」
何気ない呟きも、たどたどしくアバトが返事をしてくれるからそれだけでなんとも言えず楽しい。今までもギィギィと鳴いて返事をしてくれてはいたけれど、やっぱり言葉が通じるのは格別だ。
今後もっと成長したら、さらに色んな喜びがあるんだろうなと思うと、変化というのも悪くないように思う。
「…!? ユリウスユリウス!」
「どうした?」
「ニオイ!」
緊迫した雰囲気を漂わせたアバトが、しゅるりとユリウスに巻き付いた。あらかじめ、何か危ないと思ったらユリウスの動きを阻害しない位置に巻き付くよう教えておいたからだ。
つまり、アバトがこんな行動をとったということは、アバトには危険が感知できたのだろう。
「…なるほど。俺より探知能力に優れてるんだな。
ありがとう。これで不意打ちを食らわなくなる。
すっごいアドバンテージだぞ、これは」
ユリウスは筋力がそこまでない分、どうしても一撃が軽い。できる限り急所を狙うが、それも相手に気付かれていれば難しいことだ。結果、どうしても戦闘が長引き持久戦になる。
勿論それに耐えきれるように持久力は鍛えているつもりだ。というか、ガイおじさんたちをはじめ里の大人に鍛えられた。
だが、アバトが先に気付いてくれるのであれば、そんな心配は格段に減る。何より、奇襲を受けないというのが最大のメリットだ。
「方向はこっちだな?
どういう魔物かわかるか?」
「…ケモノ? ケモノクサイ」
「なるほど、おっけー。匂いで嗅ぎ分けたんだな」
「ウン! タブン、ケモノ」
イマイチ自信がなさそうだが、仕方が無い。今後色んな魔物と戦って経験をつめば詳細を嗅ぎ分けることも可能だろう。
とりあえず、方向が分かっただけでも良しとして、気配を殺して進んでいく。
見よう見まねでアバトも頑張って気配を殺している。なんなら呼吸すらも忘れていそうでちょっと怖いけれど。少なくともユリウスに巻き付いているので足音は立たないからオーケーだ。
ソロリソロリと歩を進める。
そうして、その魔物の影がチラリと見えたときにやっとユリウスも匂いを感じた。
首の長い、鳥だった。
確かに鳥類特有の匂いがする。
ただ、知っている鳥よりも首や尾も長くバランスが悪い。恐らくあれでは空を飛ぶことは難しいだろう。その分脚が発達しているらしく、跳躍してかわしたりしそうだ。目をこらせば爪が異様に発達していることもわかる。
今のところ、まだこちらの存在には気付かれてはいないらしい。
(正直あの首をスパッとできれば解決だろうけど、無駄に長いだけあって普通は対策してるよな。アリの触角みたいに固いとか…。
ってことは…目か)
周囲を確認したが、今のところアレ一体のみのようだ。
であれば、先手必勝で目を潰し、そこからトドメを差すのがベストだろう。
ユリウスは手近な石を掴み、魔力でコーティングする。これでちょっと軌道がブレても修正できるし、何より普通の石より硬くなったはずだ。多少の小細工を施してから、ユリウスは狙いを定めた。
多少草木を揺らして音を立ててしまうが、今此処で仕留めてしまえば問題ない。思い切り振りかぶって石を二つ投げる。
「グゲエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?」
命中を知らせてくれるかのように、鳥が鳴き叫ぶ。
その鳴き声に仲間が釣られてくるのではと一瞬たじろいだが、そんな様子は今のところ無かった。
それよりも、叫ぶ元気がある鳥にトドメをささなければ。
「うっわ…当てずっぽうで暴れてこの威力かよ」
あの長い首はどうやら偵察をするために伸びたらしく、視覚以外で敵を判断する方法はないらしい。だが、それでも一矢報いてやるとばかりに鳥はやたらめったら鋭い爪のある脚を振り回す。
それが偶然周りの木々にあたり、なぎ倒される。
あれがもしユリウスに当たっていたら即死だろう。
「ギッギッ…」
アバトは死ぬ間際の大暴れに若干引き気味なのか、それともちょっと怖くなってしまったのか。ギュウと巻き付く力を強くした。そういう仕草もちょっと可愛い。
が、そう和んでもいられない。
死ぬ間際の悪あがき、火事場の馬鹿力がどのくらい持続するかコチラからはわからないのだ。
暴れ疲れた隙を突こうと、ユリウスは注意深く観察する。
そして、その時は訪れた。
「そこだ!」
気が狂ったように暴れに暴れた鳥が、一瞬静まった時を狙い、ユリウスは愛用の双刀を振り抜いた。
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