表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/32

第7話 研修修了

「では、魔獣使いということであかりさんには、魔法を使って貰いましょうか」

「ま、魔法が使えるんですか……?」

 安倍さんの言葉に生唾を飲む。

 つ、ついに、憧れの異世界ライフの幕開けだっ!


「魔獣使いも魔獣を使役するため、色々と魔法が使えるんですよ、ちなみに初期レベルで使える魔法は、『ブライン』です」

「ひ、一つだけ……ですか?」


 安部さんは頷き、「職にもよりますが、最初は皆そうですよ。レベルが上がれば使える魔法も増えていきますから」と言った。

 むぅ、仕方ないか。

 そりゃそうだよね、最初からバンバン使えたらチートだし。


「じゃあ、早速使ってみましょう。端末の職業選択の項目で『魔獣使い』をタップして下さい」

 端末を取り出して、タップする。

 すると、私のステータス画面上部の職業欄に『魔獣使い』と表示される。

「できました」

「次に、魔法の欄をタップして下さい」

 言われた通りにタップすると、魔法リストの一覧が表示され、使用可能魔法の欄に『ブライン』が表示された。


「その『ブライン』をタップすると、詠唱に必要な呪文と効果、使用MPなどが表示されます」

 わー、本当だ。

 えーっと、

 ◇ブライン……自身を中心とした半径5メートルの空間を闇で包む(使用MP2)

 なるほど、で、トリガーとなる呪文は『闇よ、闇よ、我を包み給え』か、ふむふむ。RPGっぽい感じなのね。


「OKです」

「では、早速使ってみましょう」

「頑張って」

 私はエリナに頷くと、「闇よ、闇よ、我を包み給え!」と詠唱した。


 ……あれ?

 何も変わらないけど?


 二人を見ると、どこか落ち着きの無い様子だ。


「あれ、使えて……ますか?」

「あかり凄いじゃん! 真っ暗で何も見えないよ」

 エリナがキョロキョロしながら言った。

「問題ないようですね、おめでとうございます」

「い、いや、明るいまんまなんですけど……?」

「あー、なるほど。これは説明不足でした。あかりさんは『暗視』のスキルをお持ちですから、暗闇の中でも通常と変わらない視界が確保できているはずです」

「な、なるほど! いや、全く暗くないですもん」

 待てよ、ていうことは、寝る時も明るいまま?

「ちょ、安部さん、まさか、寝る時とかは明るいままじゃないですよね?」

「はは、大丈夫ですよ。心の中で切り替えるイメージです。スイッチのような感じで」

 ふぅ……、危ない危ない。

 私は試しにスイッチをイメージする。

 すると、暗視の効果が切れ、辺りが真っ暗になり何も見えなくなった。


「ブラインの効果はどうやって切るのですか?」

「一定時間で効果は失われますが、戻れとイメージすると解除できます」

「やってみます」 

 ブラインを解き、視界が戻った。

 な、なるほど……。うわーなんか楽しいな。


「いや、お見事でした。当面は魔獣使いを鍛えていけばいいでしょう」

「ありがとうございます」

「いえいえ、装備などは端末に装備可能リストが表示されますし、色々と試してみて下さい」


 安部さんは言い終えると、エリナの方を向く。

「次に有薗さんですが、風属性のEX適性に加え『エターナルアロー』のスキルを活かすには、弓術の使える職が良いとは思うのです」

「他に何かあったりするんですか?」とエリナ。


「問題は、有薗さんのスキルです。『妖精王の加護』による『詠唱破棄』これはもう、チートとしか言いようがありませんし、これを活かさない手は無いと思います。ですので……」

 そう言いかけて、安倍さんが私達を見た。

「ですので?」

 エリナと私は続きを促し、ゴクリと喉を鳴らす。


「ここは……」

「ここは?」

 安倍さんが私達を見て続ける。


「やはり……」

「やはり?」

 私とエリナは顔を見合わせ、やけに焦らす安部さんの言葉を待つ。


「超レア職――魔弾の射手、これが最適解でしょう!」

 安倍さんは鼻息を荒くして、何かをやり遂げたかのように額の汗を拭った。


「魔弾の射手……」

 か、かっこいい……。

 私の魔獣使いとは響きが違う。


「ふーん。じゃ、それで」エリナは即答した。

「ちょ、エリナ⁉」

「いいのいいの、強そうだし」

 安部さんは苦笑いを浮かべている。

「確かに、私でも即決だとは思うけど、本当にいいの?」

「うん」

 そう頷きながら、エリナはさっさと端末を操作していく。


「できた」

「では試してみますか?」

「うん、えーっと。お、何か色々使えるみたいね」

「え?」

 エリナの端末を覗くと、魔法欄には『エターナル・アロー』『フレイム・アロー』『フリーズ・アロー』の文字が⁉

「こ、これは凄いですね。これだけでもう、Cランク程度のクエストはこなせるレベルです……」と言って、安部さんが嘆息する。

「エリナ……凄い……」

「へっへーん、これでクエストは私に任せろってもんよー」


 得意そうに胸を張るエリナ。

 確かにエリナがいれば強敵も倒せそう。

 でも、もしかして、私、足手まといになっちゃうんじゃ?

 折角仲良くなったのに、嫌われちゃったらどうしよう……。


「ん? あかり、どうかした?」

「い、いや、何でもないよ……」

 様子を察した安部さんが、

「藤沢さん、心配しなくても、初期値には個人差が出るものです。でも、しっかり鍛えていけば、闇のEX適性を持っている貴方なら、すぐに追いつけますから」と励ましてくれた。


「は、はい! 頑張ります」

「あかりったら、そんな心配してたの? 大丈夫よ、一緒にがんばろ?」

「う、うん! よーし、負けないよ?」

「ふふ、競争だね」

 私はエリナと拳を合わせて笑った。


 すると、突然安部さんが叫びだす。

「エ~クセレンッ! オ~、レディたちっ! すばらしき友情っ! ミーもうれしいよ‼」

「も、戻ってる……」

「どうしたんだい⁉ さあ! この素晴らしい門出を、共に祝おうじゃないかっ! ボンボヤ~ッジュッ‼」

「はぁ……」

 二人で溜息を吐いた後、私とエリナは互いを見て笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ