第4話 適性
◇エターナルアロー……大気を圧縮した魔法の矢を放つ(MP20)
◇EX適性BONUS:妖精王の加護……魔法攻撃耐性強化・魔力増強・詠唱破棄
「ちょ、これチートってやつじゃない⁉」
エリナはきょとんとした顔で「そうなの?」と答えた。
「だ、だって、詠唱破棄って、凄いプロの魔術師でも難しいって聞いたことがあるけど」
「そうなんだ。ラッキー」
「……ま、まぁ、いいか」
無邪気に笑うエリナを見ていると、細かいことなんてどうでも良くなってくる。
それよりも、このステを踏まえて進むべき職を考えないと……。
「それより、ねぇ、これ便利じゃない?」
見せられた端末を覗き込むと、各職業の一覧と取得に必要なEXPが表示されていた。
所々、『???』で見れない職もあるけど……。
ん? おすすめ職業って欄が。なんだろう、ヘルプを見てみるか。
何々……えー、『あなたの適性を考慮して、AIが最適職を選ぶ機能です』、か……。
「これは確かに便利だよね」
「私は、おすすめのアーチャーだとすぐになれるみたい」
「ほんとだ。私は……」
ちょ、ネクロマンサーって……。
他に何かあるだろ、何か!
ぐぬぅ、他で取得しやすそうなのは……。
「お! これいいかも。薬士ってアウトドアに向いてそうじゃない?」
「いいじゃん、ケガとかしたら薬作れるんでしょ?」
「うん、多分。ちょっと説明見る」
【薬士】 自然鉱物や動植物などを調合し、色々な薬を作るエキスパート。
「ほら、良さそうじゃん」
エリナが私の端末を覗き込む。
その瞬間、ふわっといい香りが……。それに、ち、近い。
うわぁ、お肌もすべすべだぁ……。睫毛もくるんとカールして……。
私は思わずエリナに見とれてしまう。
「ん? 何か付いてる?」
「いやいやいや! 別に!」
あ、あぶないあぶない……。
「ねぇ、あかりは一人暮らしなの?」
「あ、私は学校の寮なの。お金かからないし……へへへ」
身寄りのない私にはひとり暮らしのお金は用意できないし、さすがにそこまで村のみんなにも甘えられない。
学校の費用も、村にある唯一の雑貨店でバイトして貯めたお駄賃と、村のみんなにカンパしてもらったお金でやっと工面することができたのだ。
「そっかぁ。あ、今日は泊まっていきなよ?」
「えっ⁉ でも……」
「大丈夫、パパも帰ってこないしさ」
「そうなの?」
それはちょっと残念。ミケルさんに会えるかもと期待してたんだけどなぁ……。
そういえば、こんな大きな家でエリナは独りなんだろうか?
雰囲気を察したのか、エリナが自分から話し始めた。
「うちは片親なの。小さい頃にママは事故にあったって」
「そうなんだ……」
親がいない辛さはよく分かる。
私も生まれてすぐに両親をなくして、村のみんなに育ててもらった。
みんなが親代わりになってくれたから、生活の面では不自由なかったけれど……、でもやっぱり寂しくて、小さい頃は一人でよく泣いて過ごしたなぁ……。
「私も両親がいないから良く分かるよ」
「え!? そうなの?」
エリナが目を大きく開いた。
「うん、私は生まれたときから両親がいなくてさー、村のみんなが親代わりになってくれたんだ。あ、すぐにお尻を触ろうとするスケベな爺ばっかだったけどね、あははは。でも、それでも……、たまには寂しい時もあったよ」
「……なんか、私達似てるね」
「いやいや、私は初めから居ないのが当たり前だったから……。みんなも優しかったし、エリナの方が辛いと思うな」
「そんなことないよっ……。でも、ありがとう、あかり。大好き!」
突然、エリナが胸に飛び込んでくる。
ちょ……うわぁ、柔らかいし暖かい……。
いかんいかん。そんなこと考えてる場合じゃないよね。
「ちょ、ちょっと、エリナ? 大丈夫?」
私は離れようとした。
だけど、腕の中で小さくなって震えるエリナを見て、胸がぎゅっと締め付けられる。
こんな広い家で一人だもんね、寂しかったんだろうな……。
背中にそっと手を回し、エリナを優しく抱きしめた。