第28話 クエスト完了
「よっと」
クエストを頼まれていた店の前で、二籠分の宵の実を下ろす。
「ふぅ~!」
「あ~、疲れた~」
私とエリナがその場に座り込むと、店の奥から髭モジャの店主が小走りで出てきた。
「おぉ~! 見つかったか! ありがたい、早速数えさせてもらうよ」
店主は籠を受け取り、実を数え始める。
その間、ルイスが私の顔の上に座ったり、エリナの制服の中に入ろうとしたりするけど、ぐで~っと抵抗する気力もなく、されるがままになっていた。
実を数え終わった店主が戻ってきたので、慌てて立ち上がる。
「56個だね、報酬は11,200Jだ、端末ある?」
そう言って、店主はポケットから端末を取り出した。
端末は私たちのと違っていて、一回りくらい大きめだ。
「あ、はい」
私とエリナは端末を取り出す。
「二等分して、それぞれに渡そうか?」
「いいよね?」
店主の言葉に、エリナを見ると、
「うん、元々山分けするつもりだったし」と頷く。
「わかった、じゃあ5600Jずつね。確認してくれ」
店主は端末をしまい、腕組みをした。
端末を確認すると、確かに5600Jが入っていた。
「わー、ありがとうございます!」
「へへ、ちょっと減っちゃった。ごめん」と、エリナが苦笑いを浮かべる。
「大丈夫大丈夫、私も食べちゃったし……あはは」
「いやぁ~本当に助かったよ、ありがとな」
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」
お礼を言って、学校に戻ろうとした時、店主がフレンド登録をしようと言ってきた。
「フレンド登録って何ですか?」
「登録しておけば、端末でメッセージのやり取りができたり、固定メッセージが表示できるんだ。例えば俺の場合、店で高く買い取っている商品のリストを常に固定表示してる」
「わわ~っ、それは便利です!」
「いいじゃん、登録しよ?」
「おぉ、ありがとう、じゃあ早速……」
店主が隣で端末を指差しながら説明してくれる。
「このフレンドってところの、登録開始って、そうそう、そこをタップしてくれ」
「おk」
「できたよ」
画面に流れる矢印が表示された。
「あとは、端末を重ねて『フレンドリドンレフ』って唱えるんだ」
「……ふ、フレンドリ……ドン……なんでしたっけ?」
「フレンドリドンレフだよ」
「あはは、すみません……、じゃ私から」
端末を重ねて、「フ、フレンドリドンレフ」と唱えた。
ピローンと音が鳴る。
画面を見ると雑貨・青果のお店モレスとフレンドリストに表示されていた。
エリナが私の端末を覗き込み、
「ふーん、なるほど。じゃ、つぎ私ね。……フレンドリドンレフ」
ピローン。
「よし、登録完了だ。えーっと、フジサワアカリとアリゾノエリナだな。俺はモレス、これで俺たちは商売仲間さ、宜しく頼むぜ?」
「おっけーモレスさん。私はエリナでいいわ」
「私もアカリで大丈夫です」
「わかった、そう呼ばせてもらうよ」
ぼうぼうの眉と髭で隠れて顔は見えないけど、モレスさんの口元はニッコリと笑っていた。
「じゃあモレスさん、またねー!」
私達はモレスさんに手を振り店を後にした。
それから急いでポリスを厩舎に預けた後、ルイスに見送られながら学校へ戻る。
「間に合ったーっ!」
「ふぁー、疲れたー!」
飛び込みセーフ。
あと5分でタイムオーバーだった……危ない危ない。
「おぅ、時間は守れたようだな」
扉の横に雷堂さんが立っていた。
もしかして、待っていてくれたのかな……?
「あ、副部長、お疲れ様です」
「お疲れでーす」
挨拶をすると雷堂さんが、
「どうだ? 収穫はあったか?」と訊いてきた。
「あ、はい! 初めてクエストをしたんですよ!」
「ほぉ、じゃあまた、ミーティングで聞かせてもらとするか……、よし、今日はもうゆっくり休め」
「あ、はい」
「鍵はあとで俺が掛けとくから、そのままでいいぞ」
そう言って、雷堂さんは部屋を出ていった。
「ありがとうございまーす」
「じゃ、帰ろうか?」
「うん」
さて、帰ってお風呂でも入るかな……。
私はエリナと別れて、寮に帰った。
***
――異世界専門学校学生寮。
「ふわぁ~……気持ちいい……」
大きなお風呂に浸かりながら、背伸びをする。
お風呂の中で背伸びができるなんて贅沢だなぁと感動しながら、私はキャンプの事を考えていた。
私のレベルがあと3上がればキャンプかぁ……。
テントも必要だし、ランタンもいるよね。
あ、携帯コンロもあれば、夜中のコンポタも飲めるじゃん。
お弁当? いや、折角なら現地で料理したいとこだし。
向こうの夜は冷えるのかな……?
毛布、いや、寝袋の方がいいかも。
あ、でもエリナって、お嬢様育ちだよね?
寝袋って大丈夫なのかな?
ま、お父さんがミゲルさんだし、何回か使ったことがあるかも知れないよね。
明日、聞いてみよっと。
私はお風呂から上がり、脱衣所で髪を乾かしてパジャマに着替えた後、ルシファーの間に戻った。
「ふぅ……」
勉強机に向かい、探索ノートを開く。
これは、探索部に入った時に作った。
気になったことや面白かったこと、注意点など異世界に関することを私なりに纏めるためのノートで、半分は日記のようなものだ。
『○月△✕日、晴れ。今日はエリナと原初の森で初クエストの宵の実を採った。お店で報酬をもらった。(一人5600J)エリナとルイスがつまみ食いした分減っていたけど、とても可愛らしく思った。可愛いは正義だ。宵の実も綺麗だったし、また見たいと思った……』
「んー、あと何だっけ?」
あ、そうだ。モレスさんとフレンド登録をした、と……。
おっと、副部長が待っていてくれたのも書いておこう。
キャンプ道具かぁ……、向こうで探したほうがいいかな?
明日、雷堂さんに聞いてみよっと。
「ふわぁ……」
机の置き時計に目をやると、もう12時前だった。
そろそろ寝なきゃ……。
私は布団に潜り込み、静かに目を閉じる。
宵の実が光った瞬間の光景を思い出しながら眠りについた……。




