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第21話 遺跡(前編)

 ――次の日の放課後。

 私とエリナは、雷堂さんと七瀬さんの4人で異世界へ向かった。

 着いてすぐにルイスがパッと現れたが、

『なんか邪魔そうだから帰る』と言ってすぐに消えてしまう。

「あ……」

 ま、まあ今日は皆一緒だし、仕方ないか……。

「またすぐに会えるさ、いくぞ?」

「あ、はい!」


 私達は原初の森に向かって歩き始めた。

「ふぅ~、あっつい! おい雷堂、何とかならんのか?」

 七瀬さんがだるそうに言う。

「無茶言うなよ……」

「副部長、メジッハ遺跡まではどのくらいあるんですか?」

「森に入って……、一時間程度だ」

「い、一時間……」

 エリナがうへぇとため息を漏らした。

「おいおい近い方だぞ? しっかりしろよ」

「へーい……」

 両腕をダラ~ンと下げ、前屈みになりながらエリナが歩く。

「だ、大丈夫?」

「この暑ささえなきゃね……」

「だ、だよねぇ。あはは……」


 草原を抜けて原初の森に入った。

 森の中は木陰が多い分、空気がひんやりとしている。

「お、ちょっと涼しい……」

 エリナがぐ~っと背筋を伸ばした。

 そういえば、と私は雷堂さんに尋ねる。

「遺跡に出るモンスターって、どんなのがいるんですか?」

「そうだな……、依頼書には特に注意事項はないから、出ても低レベルのモンスターだろう。ゴブリンや、もしくはスライム、ワーウルフってとこだと思う」

「ネットで見たんですが、遺跡にはアンデッドが出るとか……」

「出るぞ~、いーっぱい出る!」

 後ろから七瀬さんが、私達に向けて両手を広げた。

「やめろよ、ったく。怖がらせてどうすんだ? 大丈夫、まあ出てもスケルトン程度だ」

「はあ……」


 大丈夫なのかな? 不安だ……。

 ただでさえ、漆黒の花嫁なんて闇属性全開スキルを持つ私がそんな場所に行くなんて。

 スケルトンとか集まってきたら嫌だなぁ……。

 私の不安を感じ取ったのか、エリナが肩に手を乗せた。

「大丈夫よ、私がババーンとやっつけてあげるから」

「う、うん……」


 そのまま小川を越え、自分の背より大きな草をかき分けながら進むと、突然開けた場所に出た。

 目の前には大きな岩壁が立ちはだかっている。

「ついたぞ、ここがメジッハ遺跡だ」

「おぉ……」


 岩壁に大きな入り口があり、倒壊を防ぐ巨大な支柱が等間隔に立てられていた。

 想像していた石像や装飾はなく、無骨な造り……。

 ただぽっかりと口を開け、訪れる冒険者を待っているようだった。


「洞窟っぽいね」

「うん、一応床は石が敷かれてる」

 石の支柱には蔦が絡まり、自然と一体になっている感じがした。


 雷堂さんが振り返り、

「よし、装備は大丈夫か?」と私達に確認する。

「はい、大丈夫です!」

 私は鞭を握りしめ、頷いた。

「ほらほら、行った行ったー!」

 七瀬さんに背中を押され、躊躇する間もなく私達は遺跡に入った。


 

 中はひんやりとしているが……何となく嫌な雰囲気で、ジメッと纏わりついてくるような空気が立ち込めていた。


「うわー、制服がはりつくんだけど!」

「うん、気持ち悪いね……」

「まあ、瘴気が混ざってるからな、我慢しろ」

 雷堂さんはハンマーを片手に、奥へ進んでいく。

 しょ、瘴気って……。


 古びた地下道のような道をしばらく進むと、大きな円形の広間に出た。

 広間には五つの入り口が繋がっている。

「うわー、いかにもな場所ね」

 エリナが呟く。

 すると、七瀬さんがスタスタと中央まで歩いて立ち止まり、腰に両手を当てた。

「とりあえず、モンスターを狩るんだから、呼んじゃおう」

 雷堂さんが慌てて、

「ちょ……馬鹿! やめろ!」と声を押し殺しながら言う。

 七瀬さんはニヤっと笑い、大声で叫んだ。


「おーーーーーーーーーーーい! 出てこーーーーーーーーーいっ!」


「やっちまった……、二人共、来るぞ! 俺から離れるなよ!」

「は、はい!」

 のわわ……どうしよう~!

 き、緊張する……。


「あかり、何か聞こえない?」

「え?」

 耳を澄ましてみると、遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。


 ――ドドドド……。


 次の瞬間、五つの入り口から大量のモンスターが飛び出してきた!


「のわっ!」

「来たぞ! 有薗、一気に撃つなよ! なるべく直線状にモンスターが重なったところを狙え!」

「おっけーです!」


 エリナは左手を伸ばし、人差し指で照準を合わせ始めた。


 わわわ、私はどうすれば……。

 そ、そうだ!

 鞭を握りエリナの背後に回って、背後からの敵に備えた。


「いいぞ藤沢! そのまま見張ってろ!」

「は、はいぃ!」


 紅い眼が無数に光る。

 広間にギギギっという不快な音が、幾重にも折り重なって広間に反響する。

 そんな中、七瀬さんは中央で腕組みをして、平然と私達の様子を見ていた。


「ゾンビラットだ! 弱いが数が多い! 有薗、こいつらは火に弱いぞ!」


 雷堂さんの言葉にエリナが頷く。

「あかり、ぶっ放すよ!」

「う、うん!」

 エリナが照準を天井に向けた。

「え⁉」

「お、おい‼」


 ――フレイム・レイン‼


 エリナが真っ赤に発光する矢を放つと、天井スレスレで矢が弾けたように分散し、周囲を囲んでいたゾンビラットに降り注いだ。

 

『ギギギーーーーーッ‼』


 ゾンビラット達は炎に包まれて断末魔を上げる。


「す、すごい……」

 私が呆気に取られていると、雷堂さんが叫んだ。

「藤沢、まだ残ってる奴がいるぞ! 気を抜くな!」

「はひぃ!」

 私は燃えるゾンビラット達から飛び出してくる生き残りを鞭で打った。

 かなり弱っているようで、私の鞭でも倒すことができる。

「い、イケる!」

 よーしっ! どんどん倒しちゃうよー!

『ギギッ!』

 その時、一匹が死角から飛び出してきた。

「あ!」


 ――フレイム・アロー!


 ゾンビラットは火達磨になり、床に崩れ落ちた。

「エリナ! あ、ありがとう!」

 エリナは親指を立て、

「あれで最後ね」とフレイムアローを放った。

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