第四章 婚約者ができました!?~2
凛とした声の方を見るとそこには、同い年ぐらいの少女が立っていた。
月夜に照らされたような優しい金髪にやや猫目の形をした瞳はエメラルドグリーンでとても美しい。
とにかく、何が言いたいかと言うと…
"めちゃくちゃ美少女!!"
ルベルナ嬢が可愛い系美少女ならば、この子は綺麗系の美少女である。
それにしてもこの子は誰だろうか…?
見たことのない、美少女に首を傾げているとその美少女がゆっくり近付いてきて淑女の礼をしてくれた。
「カイル王子、挨拶もせず話に割り込んでしまい申し訳ございませんでした。
私は、ブロッサム公爵の娘、リリィ・ブロッサムと申します。」
『え?君があのブロッサム公爵の娘なんですか!?』
驚くのも無理はない。ルーベンス公爵家に並ぶ大三家の一つがブロッサム公爵家である。
ブロッサム公爵は、何度か見て知ってはいた。ルーベンス公爵とは違い真面目で"義"を重んじる硬派な性格だ。
見た目も硬派なイケメンで公爵と言うよりは騎士に近い風格である。
まぁ、それよりも何故、僕がここまで驚いているかと言うと…ブロッサム公爵の娘、リリィは今まで表舞台に出てこなかったのだ。
つまり、僕だけではなくここに居る者全てがブロッサム公爵の娘を見るのが初めてで、その証拠に全ての視線が彼女に注がれている。
「は、はい。今まで病弱のため、なかなかこのような席に出席出来ず、申し訳ございませんでしたわ。」
『そうだったんだね。いや、気にしないで…リリィ嬢に会えてとても光栄だよ!』
僕はにっこりと笑う。
「そんな…勿体無いお言葉ですわ。」
リリィ嬢は、少し頬をポッと赤らめる。
大人顔負けの毅然とした態度を取ってはいるけどやっぱり女の子なんだなぁ~と愛らしい反応をみてそう思った。
「むぅ~いきなりなんなのぉ?カイル様との時間を邪魔しないでよぉ~」
もはや、空気のような存在になり掛けていたルベルナ嬢が不機嫌さを隠そうともせずリリィ嬢を睨み付けていた。
「嫌ですわ…邪魔なんて。ただルベルナ様が王族に対する礼儀がなってないものだから同じ公爵家の者として注意しにきただけですわ!」
フフッと口元を隠しながらリリィ嬢は、にっこりと笑う。
「そっちこそぉ~いきなり話に割り込むなんて礼儀知らずじゃない!」
ルベルナ嬢…それが礼儀知らずって分かってるのにどうして他は分からないんですか…
ルベルナ嬢は、やはりちゃんと礼儀作法は身に付いて分かってるのに何故かわざとあの様に振る舞う。きっと小悪魔系女子を演じているのだろう…七つでこうなら将来が恐ろしい。
「あら、ルベルナ様の礼儀は、婚約者でも夫でもない異性の殿方に腕を絡め愛称で呼ばせようとなさる事なんですか?」
「何よ!いいじゃない!ベルとカイル様はこれから婚約者になるんだから!!」
えっ!?何それ初めて聞いたよ!?そんな話!!??
『まさか…父上が会わせたい人って…』
それを聞いて先程、父から言われた言葉を思い出す。
つまり嫌な予感が的中したのだ。
まさか会わせたい人が婚約者なんて…そろそろ話が来るとは思ってはいた。けど…婚約者ぐらい自分で選びたかった!
王族に産まれた時点で好きに選べないのは分かってはいたカイルだが、苦手なルベルナ嬢との婚約は、はっきり言って嫌だった。
「ふふん、このあと陛下に呼ばれてるのぉ~」
自信あり気にニヤリと笑うルベルナ嬢…
周りはルベルナ嬢の発言にざわついている。
なるほど今までの無礼な行いは自分が王子の妃候補だから出来たわけだ。
「あら、そうなんです?私も呼ばれてますのよ?」
「えっ!?」
リリィ嬢のサラッとした発言にルベルナ嬢は、大きな目を更に見開いて驚いてる。
それはカイルも同じだった。
えっ!?…どう言うことなんだろう…
そしてクスッと後ろに控えているジェイルが微かに笑ったのを感じた。
どうやら、ジェイルは何か知っている様だった。
「カイル様、そろそろ他のお客様にご挨拶をなさいませんと…それと陛下に呼ばれてる方は先にご案内させて頂きますね!」
ジェイルはやはり何か知っているようで意味あり気な笑みを浮かべていた。
『ジェイル…わざと黙ってたね?後でその事はゆっくり話すことにしてとりあえず挨拶回りをしてくるよ。』
それだけ言ってその場所を後にしたのだった。
その後ろでは、ジェイルが恍惚とした表情を浮かべているのをカイルは知っていた。
このドMめ!