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第二章 悪役執事登場

 「カイル様~?どちらに行かれたのですかぁ~」

暫し、考えていると部屋の外から呼ぶ声が聞こえた。おそらく私の世話をしてくれている執事のジェイルだろう。

 私が慌てて物置部屋から出ると…


 「あぁ、そちらに居られたのですね。」

ジェイルは、にっこり笑うとこちらに近付いてきた。


 『ご、ごめんなさい…あそんでたら…このへやが…きになって…』

カイルの幼少期は、大人しくおどおどしている感じだったのでその様に振る舞う。

三年間の記憶が消えなかったのがせめての救いだ。


ちなみに、このジェイルという執事は、カイルとヒロインの前に立ちはだかる悪役である。

今はそこまでではないが、カイルの病んでしまう例の事件の後、急激に王になるため成長していくカイルを傍で見ていくにつれて、ジェイルはカイルに対して敬愛の念を深めていく。


そのためカイルを変えていくヒロインに嫉妬と怒りを募らせていき、裏でヒロインを暗殺しようと企む。

なので、まずカイル攻略のためには、このジェイルに認められるよう行動をしないといけない。


『じゃないと、ヒロインはバッドエンドルートに入ってしまう。』

「え?何か仰りましたか?」

 どうやら考え事が口から漏れていたらしい。


『ううん、なんでもないよ?』

にっこり笑うと

「アッ」

ん?なに?その恍惚とした表情は…

カイルの時は気付かなかったが、明らかにジェイルの反応が変わった。私はこの目を知っている…この目は。


 "ショタを愛でる目…"


とても敬愛している目ではない。

しかもまだカイルは病んでないのに、そんな目でみてくること自体がおかしいのだ。

 あと誤解しないで欲しいのが別に私は、ショタコンという訳ではない。確かに、病院のベッドで人生の大半を過ごしていて、友人?と呼べる者は、居なかったが、同じ趣味の相棒なら一人いた。

その子は、一時期両足骨折で入院していた子で、私と同い年&乙女ゲームにハマッていたので、すぐ意気投合した。ある事を除いては…。


それは、その子はショタやロリを愛する変態だったということ…。


その相棒も今のジェイルのような変態染みた視線を向けていたことを思い出したのだ。


「カイル様?どうなさいました?」

ジッと見ているのに気付いたジェイルは、普通ににっこり笑う。

さっきの顔が嘘のようだ。


 だが、私は思った…念のために確認しとこう。

とりあえず、相棒から耳にタコができるぐらい聞かされたショタコンがグッとくる仕草をしてみようと思い…。



 『あ、あのね?ジェイルは…いつもかっこいいなぁって…』

そう言いながら、両手を口許に持っていき、首を右にコテンと倒して照れたようにはにかむ。


 別に嘘は、言ってない。ジェイルは、紺のサラッとした髪に目は深い海の色で綺麗だし、高身長なイケメンだ。いつもカイルの後ろに控えているが、見目麗しいカイルと同じぐらいに女性に人気があり、悪役で登場したのにもかかわらず、孤独なプリンスのファンから攻略キャラに追加してほしいと言われるぐらいだ。


 まぁ、私はヒロインを傷付けるジェイルも苦手な人物に入るんだけどね…。


 「………………。」

あれ?無反応??もしかして勘違い…?


『……ジェイル…?』

無反応すぎて逆に不安になる。私は恐る恐るジェイルの顔を覗き込もうとしたその時…。


「はぅぅうううんんん!!!!」

いきなり自分の体を抱き締めるようなポーズを取り、奇声をあげた。


 うん、これは間違いないようだね…


ガシッ!!


 『!?』

 「駄目ですよ!カイル様ぁ!!

そんな天使では、どこかの変態に誘拐されちゃいますよ!!」

 勢いよく肩を掴まれただけではなく、鼻息荒くしながら意味不明な事まで言われる。


 うん、もし私が誘拐されたら真っ先に、ジェイルが怪しいと思ってくださいと、お父様に言っておこう。


 『ぼ、ボクがてんし??どーして?』

いい機会なのでいつからショタコンに目覚めたのかぜひとも聞いておこう。

こんなことゲームの設定にはなかったからね。


 そう、こんな設定はなかった。幼少期のカイルとジェイルの関係は、至って普通だったはず…?

ちなみに、メインのストーリーが始まるのは、カイル十六歳の時、それ以外のストーリーは省かれるか、ちょっとした回想で語られるだけだったのでもしかするとこのジェイルが、通常なのかもしれない。


 「いいですか!?カイル様はリゼリア様にそっくりなんです!

つまり、美しいのですよ!??」

 

 うん、答えになってないね…。


ちなみに、リゼリアとは私の…否、カイルの母親の名前だ。

リゼリアは、ほかの王妃達と違い、儚い美しさを持っていた。もちろん、他の王妃も美しいが、皆妖艶な感じでリゼリアとは、正反対だ。

そしてこの国の王…つまりカイルの父親は、六人以降の妻はもう娶らないと宣言していたが、第五王子が誕生した祝いのパーティーに参加していた、儚い美しさを持つリゼリアに一目惚れして、第七王妃として迎えたのだ。


 確かに、髪も目もお母様譲りだし、容姿もお母様そっくり…


 あ、まさかお父様がカイルに甘いのって…それにジェイルのこの反応は…


 『…もしかして…おかあさまが、すきなの?ジェイルは…』

 「それとは…ちょっと違うのですが…。

カイル様には、少々難しいお話になるのですが、この国…いいえ、我ら一族は、容姿が美しい者こそが正義なのです。」


 禁断の恋が、始まらなくて済んだが、それよりもまたゲームの設定にはない話が出てきて驚く。


 え?つまり吸血鬼一族は、高貴な血筋とかは関係なく、容姿が全てだと!?なんてこった、それが本当ならこの国には、容姿差別があるのか!!?


 なるほど、通りでこの城にはモブ顔が存在しないのか…


 普通なら重要人物以外は、モブのはずなのだが、この城には容姿が美しい者しかいない。王はもちろん、王妃、他の兄弟、そして使用人さえも美しい者ばかりだ。


 これで謎が解けた…その中でもカイルとリゼリアは、群を抜いて美しい容姿なのだから、王と使用人には一目置かれ、他の王妃達には嫉妬されるわけだ。


 てか、容姿が美しいから殺されるってどうなんだろう?


 「それに我ら一族の中には、その美しい者を拐い観賞用に飼う変態もいますから、そのように愛想を振り撒いては危ないのですよ?」


 あ、そうなんだね。でも私からすればジェイルも危ない人だと認識してます…はい。


 『そうだったんだ…ジェイルありがとう。

おしえてくれて。』

私は、もう一度にこっと笑っておく。一応、重要な事を教えてくれたからね。


 「カイル様、だからそのような笑顔は!!くっ!」

まるで眩しい太陽を見るかのように手の平で顔を隠す。

その指の間からチラッと見えたジェイルの顔は、イケメンとは呼べないほど、ゆるゆるになって鼻息が荒い。

 

 うん、まずは五年後のリゼリアの死を回避するのと…ジェイルをまともにする調きょ…教育を始めないとね…。


 そう心に強く私は、決意したのだった。

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