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旋と律のシンフォニー  作者: 杉 薫田
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「翼をください」という名の カンタータ

旋は 合唱コンクールの終わった夜、このコンクールの出来事、クラスのみんなが頑張ったことや どうしても5組に勝てなかった不満を「東京ナイト・フレンド」のりょうたん宛の1枚の葉書に書き綴って送った。


そして、そのリクエストの曲は赤い鳥の「翼をください」だった。


 葉書が読まれるかどうかも分からない中で、待ち遠しい1週間が過ぎ去り、その葉書が りょうたん目に留まり、合唱コンクールの話題はりょうたん自身の思い出話も重なって深夜の楽しい時間への投げかけとなった。


 70年安保闘争と言われた時代を生きた 旋よりも10歳ほど年上の りょうたんの年齢層にとっては中学や高校時代に合唱コンクールを開くことは珍しい出来事だったらしいが、静岡という地方出身者のりょうたんは 音楽祭を学校で開いた思い出があると言う事だった。  

 高校の文化祭でのメインイベントが体育館ステージで繰り広げられるフォーク、ロックフェスティバルで、ビートルズやジョーン・バエズの「勝利を我等に」、ボブ・ディランの「風に吹かれて」、ピート・シーガーの「花はどこへ行った」といった曲などをフォークギターを弾くことの出来る学生を取り囲んで声を張り上げて歌い、その歌の輪は文化祭の中で最も盛り上がったという。

 ステージ上では アメリカやイギリスのロックバンドに刺激を受けた幾つもの学生バンドも登場し、決して上手くもない演奏でも会場はノリノリの熱波に包まれたそうだ。 フォークソング派とロック派のふたつの派閥は若者の心をつかみ大きな音楽文化の流れを作り出してきたと言う。


 りょうたんの語る高校時代の文化祭の思い出は、旋の合唱コンクールの出来事とは少し状況を異にしていたようにも感じられたが、音楽を通して仲間たちが一つになって行くと言う出来事、音楽の持つパワーのすごさをこの日の深夜放送の2時間で熱く語り合ったような気がしてならなかった。


 1週間後の12月14日の「東京ナイト・フレンド」の放送は 旋の合唱コンクールのエピソードに対しての慰めの葉書に加えて、りょうたんが熱く語った高校時代の文化祭での思い出に対しての反響やリスナーそれぞれの 合唱コンクールや学校での文化祭などの話題で一色となり、フォークソング派や洋楽のロック愛好派等のそれぞれの意見が交じり合い、それぞれの主張や音楽性の違いなどを熱く語る葉書の意見でその日の話題があふれかえった。


「やっぱり 僕たちの心の叫びを語ってくれる フォークソングが最高だよ。たくろうの歌うフォークソングこそが日本人にとっての現代の民謡だと僕は思うな。」


 よしだたくろう応援団に 井上陽水、小椋佳、ジローズと言った人気者に加えて、昨年大ヒットした「学生街の喫茶店」で一躍スターダムに躍り出た ガロを指示するファン層もいて、輪になってみんなで歌うならやっぱりフォークソングが良いという意見が強く出されたかと思えば、一方でロックファンの勢いも強く、


「音楽の主流は、間違いなくアメリカやイギリスのロックやポップスによって大きく変わっていくんじゃないかな。」


「ビートルズが日本の音楽シーンに与えた影響はやっぱり大きな音楽革命だと思うし、すごいし、最近のディープ・パープルやレッド・ツェッペリン。ローリング・ストーンズのパワーのある音楽を聞いたら 日本の音楽なんて眠たくなってくるぜ!」


 フォークソング派やロック派とも違うアメリカンポップスを指示する人達はカーペンターズやサイモン&ガーファンクル、エルトン・ジョンと言った音楽のファン層も多く、それに加えて、全く次元の違うような、ザ・タイガースやザ・テンプターズと言った日本の「ニューロック」に端を発したグループサウンズを応援する女性の声も想像以上に大きく、もちろんグループサウンズ事態はすでに過去のものという思いが強かったが タイガースから独立したジュリーこと沢田研二や ショーケンといったその生き残りはフォークやロックと言った男性の音楽ファンとは全く違った視点で大きな女子達のファン層を作り出していたと感じられた。


「東京ナイト・フレンド」で旋が投げかけた 合唱コンクールのエピソードからは大きくそれて 話題はりょうたん自身の高校時代の文化祭の話題と重なり合って 音楽性についてのそれぞれのファンからの意見が出される中で いつもの放送内容とは少し違うような音楽論に対しての意見の出し合いのような番組の内容で盛り上がって行った。


 そんな音楽論の葉書が読まれ続けていた中で、旋に向けての慰めの葉書が りょうたんによって改めて取り上げられてラジオから流された。


「先週から、寄せられた怪傑黒頭巾君の合唱コンクールのエピソードから、みんなの音楽論の話題で盛り上がってきましたが、こちらに 改めて 合唱コンクールでの怪傑黒頭巾君の惜敗に対しての慰めの葉書が寄せられています。」


「秘密のメロディーさんからの手紙です。」


「怪傑黒頭巾さんの合唱コンクールのエピソード 胸が熱くなりました。先生の家にまでクラスみんなで押しかけて合唱の練習をしてコンクールに挑んだ事に すごいな~って思いました。みんな頑張ったんだよね。負けたのは悔しかったのだろうけれど、クラスが一つになれた事ってすごい事だって思いました。そんな学級や友達っていいな・・・」 


「う~~ん 確かに クラス全員が一つになって ぶつかっていける事ってすごい事だよな!」


秘密のメロディーの葉書に呼応するようにりょうたんも改めて 旋達の合唱コンクールのエピソードに対して賛辞の声がかけられた。


 旋には 誰のメッセージよりもうれしい秘密のメロディーからの慰めの言葉であったが、この秘密のメロディーからの葉書の言葉の裏に隠された思いに気が付くことはまだなかった。

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