第77話 先輩と恋人③
「女神なら、葵ちゃんの転生先も知ってるんじゃないのか?」
「確かに…」
「まあ、知ったところで何も出来ないけどな」
加藤先輩はタバコに火を点けた。
「そうですね…ただ」
「ただ?」
加藤先輩は煙を吐く。
「最後の電話で、俺と何を話したかったのかなって…それだけ聞けたらいいな…って」
「忍…」
「…」真理衣は気を遣って黙っている。
「いや、やめましょう。真理衣ちゃん、先輩が奢ってくれるんだからたくさん食べよ」
「そうですね!」
「おいおい…」
「いいじゃないですか。両手に花ですよ?」俺が先輩にウインクすると、先輩は避ける様な動きをした。
「ですです。許しますから」真理衣もウインクした。
「…花同士がくっついてるじゃねえか」
「確かに!」
「うまい!」
「なんだお前ら!そんな下手な褒め方しても今回しか奢らんからな!」
「ははは…」
「…そういや忍、お前…タバコは?」
「この身体は吸ってなかったから、ニコチンゼロの電子タバコにしてます」
「へえ、普通の転生じゃない弊害…いや、タバコなんて吸わない方がいいか。そこは転生のおかげだな」
「そうですね」
「転生かぁ…人間って、何回転生するんですかね?」真理衣が首をひねる。
「あぁ、ナターリャ…女神がそんな事話して…」
「おいおい君たちィ、オカルト研究会かぁ?」
俺たちの背後に、喜多嶋が立っていた。
「ミクさん!?どうしたんですか!?」
「どーしたもこーしたも、今日の合コンがハズレだったから一人で寂しく飲んでたろよぉ」
喜多嶋は相当酔っている様だ。いつから飲んでんだこの人…
「ミクさん…大丈夫ですか?」
「らいじょーぶらよ!しのぶちゃん見つけたと思ったらぁ、しのぶちゃんとこの子がイチャついてるんらろ!しのぶちゃん!あらしがタイプなんじゃらいろぉ!?あらしのためにお姫様らってフッたくせにさぁ!」
「ちょっ…ミクさん!」
「…しのぶさん?」真理衣が俺に微笑みかける。その目は笑っていない。
「あわわ…」
「お前、昔から…女に気を持たせすぎなんだよな」加藤先輩は呆れた様な顔をした。
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バーKAMOKUに来た俺たちは、暴れる喜多嶋をマスターの大村に預け、そのままそこで飲み直す事にした。
「で、しのぶさん。今の人と、お姫様って?」真理衣は相変わらず微笑んでいる。怖い。
「いや、なんでもないよ!?今の人は、この身体になった時に色々お世話になった転生者の看護師さんで…」
「で?」
「で、お姫様ってのはこの身体の友達で…その子からは告白されたけど…断ったんだよ!」
「看護師さんのためにでしょ?」
「違うよ!」
「田野島さん、こいつはね…女をその気にさせるのが得意なだけで、浮気はしないよ。でも、付き合ったらすぐ捨てられるんだ」
加藤先輩はフォローにならないフォローをした。
「…まぁ、いっか。信じます」
「でもなんで急に…その…好きになったの?媚薬のせい?」
「いえ?しのぶさんが入れ替わった時から、もうめちゃくちゃタイプだったので、意地悪したくなっちゃってたんです」
「小学生かよ!?」
「元から好かれてたんだろ。気づけよお前も」
「そうですよ!鈍いんだから!」
二人揃って俺を責める。
「えぇ…?だって、俺が課長に気に入られてるから嫌がらせしてたのかと思ってたよ…」
「課長にアプローチして出世したいのもあったけど、ほんとは課長にしのぶさんを取られたくなかったんですぅ」真理衣はぶりっ子の口調に戻った。
「その口調やめなよ…じゃあ、栗田は?」
「あいつはいい顔してたらプレゼントくれるので…」
「やめなよほんと…」
俺たちが盛り上がっていると、大村が店の裏で喜多嶋を寝かせて戻ってきた。
「申し訳ございませんでした。姫がご迷惑を…」
「姫!?」




