第43話 ひと肌脱ぎます!①
加古医師のおかげで、坂巻にかけられていたまやかしの外法の効果は消えた。しかし、毒島が曽根崎を騙した魔導師という確証は得られなかった。
天衣社総務課長、毒島。
異世界ガルガトルから来た転移者の魔導師、エドガー。
この二者が同一人物だった場合、俺は毒島を一人にし、ナターリャを呼ぶ。できれば曽根崎の前に連れていきたいところだ。
それで転移者の送還は2人目となる。
目標は5人だが…女神自身が転移者1人を探し出すのに、どれほどの力を使うのだろう。
俺を男にし、周囲の記憶をすり替える…それだけの力を温存するための人数が5人。
本当にそうなんだろうか。今まで見せた数々の女神の力は、どの程度だったのか…
女神ナターリャが何を考えているのか、真の目的は謎のままだ。
「…東雲?」等々力の顔が目の前にあった。
「ぬわっ!」
俺は驚いてのけぞった。
「あぁ!すまん!せ、セクハラじゃないからな!?」
こんな事でセクハラになるのか。
「あ、いえ。考え事してました。すいません」
「いや、いいんだ。…大丈夫か?頭を打ったんだから、調子が悪いならすぐ病院で検査を受けてくれよ」等々力は心配そうな顔をしている。
「大丈夫です。あ、そういえば明日は作田さんと営業ですね」
「ああ、そうだな。サクさんと組んで行ってもらう。先方はサクさんがずっと対応している老舗だから、天衣社の訪問日もそろそろ近いし、リハビリのつもりで頼む」
「はい」
毒島の事も気になるが、まだこの部署内の転移者も把握できていない。作田と2人で営業に行けば、また何か分かるだろう。
翌日。
俺は作田と営業に出る…はずだったが、急遽栗田と営業に行く事になった。
まぁ、目的は達せるので構わない。女神フォンの反応は無し。栗田はこの世界の住人だ。それよりも…
「すんません、しのぶさん」
「仕方ないよ。先方は女性の意見を聞きたいんでしょ。田野島さんの方が適任だけど、課長命令ならね…」
栗田の今回の営業先は食品関係の大手で、作田と行くはずだった企業よりも規模が大きいため、より天衣社に近いということで…等々力は俺を指名したようだ。
「女性の意見、ね…」
俺で本当に大丈夫だろうか…
「国枝食品、企画課の林田です」
「栗田の同期の東雲と申します」
林田は差し出した名刺を俺の名刺の下に素早く潜り込ませた。大企業のそれなりのポストの人間がこれをやるのは珍しい。
「恐縮です。頂戴いたします」
営業は、訪問約束までが前哨戦、名刺交換がゴングだ。ここから戦いが始まる。
いかにして自分と商品を相手に売り込むか…ありとあらゆる要素を駆使して相手に「うん」と言わせる。そこが営業の面白いところだ。
「さっそくですが、私なんかで良かったのでしょうか…女性の意見なんて…」
「意見?いやぁ、お手伝い頂く立ち場ですし、もうどなたでも有り難いです。しかし、いやぁ、栗田さんには聞いてましたが…東雲さんは美人でいらっしゃる…いやぁ…なんというか、こんな美人にお願いするのも、いやぁ…」
何回いやぁって言うんだよ。
「お世辞でも、ありがとうございます。栗田がお世話になっている御社のお願いでしたら、なんでもお引き受けしますよ!」
「いやぁ!本当ですか!それは助かります!では…」
林田は俺に衣装を手渡した。
「いやぁ、助かります!ウチの女子社員が急遽長期休暇に入ってしまって!イベント会社も派遣会社も急過ぎてダメ!いやぁ、私がそれを着ようと思ったくらいです!いやぁ、ありがとうございます!東雲さんは救世主だ!」
「は?」
栗田の方を見た。栗田は舌を出してウィンクした。
はめられた…!
手渡された衣装は、ノースリーブ、ミニスカートの…
キャンペーンガール衣装だった。




