第37話 危険なデート!?③
魔女コルネリア。坂巻から聞いた俺の身体の元の主人、東雲しのぶの…前世。
コルネリアは悪業の限りを尽くし、魔王となった。そして勇者に討ち滅ぼされ、転生してしのぶとなった。そのため、異世界から逃げ出してきたということではなく、転生の様だ。
ちなみに、中学卒業の日にショッキングな出来事があって記憶を取り戻したらしい。枡田こころの告白だな…
「そーいうわけでさ、しの、アンタを知ってるやつに会ったら元の世界に還されて、魂を封印されるんじゃないかって言ってたのよ」
「そうなんだ…」
全くの初耳だが、女神は別にコルネリアを封印してはいないはずだ。転生したと聞いた。
「だからさ、アイツらがそうなんじゃないかと思って。チョー心配なの!アタシのしのを奪うヤツは許さねえ!」
しのぶは本当に友人に愛されている。母親に始まり、枡田こころも坂巻も、しのぶを本気で大事にしている。本当に悪人だったのだろか。
そして…坂巻を守るには真実を言うしかないだろう。
「あのさ、心愛…いや、坂巻さん」
「え?」
「あなたの大事な友人の魂は、ここには入ってません…俺、別人なんです。魂が抜けたしのぶの身体に入ってる、男です。しのぶの魂は、もう…別世界に…」
「…」
「騙してすいません!」
俺は頭を下げた。
「…」
「この身体は大事にします!二度とあなたの前には現れません!だから…」ここ数日のモヤモヤが涙となって溢れ出る。申し訳ない気持ちが眼から流れ落ちる。
「…しのの魂はさ、アンタが追い出したの?」
「しのぶ…さんが死んで、魂が抜けてしまった後で女神が同時に死んだ俺の魂を入れたらしくて…」
「…そっか。じゃ、しのは死んじゃったかぁ…」
「…」なにも言えない。
「でもアンタ、アタシが元の世界に帰りたくないって言ってたから…その話したっしょ」
「…」
「アタシは、しのがいるから残りたいって言ったんだけど?」
「それは…」
「なーんてね!アンタ、カッコいいじゃん!出会ったばっかの女守ろうとするなんてさぁ!アンタ、しのにそっくりだよ!そりゃアタシも気づかねえわ!」坂巻も涙ぐんでいる。
「しのの身体に入ったのが、アンタで良かった…だからさ、今からアタシら友達ってことでいいじゃん!」
「坂巻さん…」
「心愛でいいよ。アンタの元の名前は?」
「東雲、忍です」
「だから元の名前!」
「同姓同名なんです」
「…マジ?」
「オラァ!」坂巻がバーの扉を蹴り開けた。
「やりすぎ!」
「おかえり、しのぶちゃん。食べながら話しましょ」
喜多嶋は動じない。
倒れたテーブルは何事もなかったかのように戻っており、その上にはちょっとしたオードブルが載っている。
「…あのさ、おねーさん!コイツに色々言う事あるんじゃないの!?」坂巻が喜多嶋に迫った。
「…何かあったっけ?」
「とぼけんなよてめぇ!」
「落ち着いて。俺が言うよ。あの、ミクさん…元のしのぶの魂が、凶悪な魔女だって知ってたんですか…?」
喜多嶋は不敵に微笑んだ…
そしてその直後、驚いた顔になる。
「はぁ!?知らない知らない!なにそれ詳しく!」
あれ?
「なにそれ?しらばっくれてんの!?」
坂巻は余計に怒った。
「いやいや、マジで!ほんとに!大村!アンタは知ってたの!?先生は!?」
喜多嶋は振り返ってマスターを見るが、マスターは両手を前に出して全力で首を振っている。
「おねーさん、マジで知らなかったの?」坂巻は脱力して椅子に腰かけた。
「マジで知らないわよ。私はただ、しのぶちゃんが男に戻るために、転移者探しの手伝いをする様に女神様から言われてるだけで…」
「じゃあ、その事を知ってるのって…」
「私だけだよー」
「うわぁ!」
いつの間にかナターリャがカウンター席にいた。




