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第3話 現れた女神は、想像と違う感じだった

 挿絵(By みてみん)

10年くらい前のイメージ。

 病室から突然、雲と光の世界……天国の様な場所に来てしまった俺の目の前に立っていたのは、金髪碧眼の白人女性だった。


 外国人なのでよくわからないが、年齢は10代くらいで、恐ろしいほど整った顔立ちをしている……のはいいのだが、その服装は超ミニスカートに紺のハイソックス。第2ボタンまで開けたワイシャツ、胸元には斜めになったリボン。


 ……まるで、日本留学中にギャル化した、外国人女子高生の様だ。


「ハァーイ。女神だよん」

 外国人ギャルは両手を広げて、少し古い時代の決めポーズをした。


 整った顔が台無しだ。


「……えっと……なに、これ?」

 俺は呆れた顔で女神と名乗った女を見上げる。


「わかるぅ、ワケわかんないよねっ」

 わかるぅ、じゃない。なんだこのギャルは。本当に女神か?わけわからんのはお前だ。


「いや……あの……」


「わかってるって。なんで女になっちゃったの!? ありえなくね? って思ってるっしょ」

 ギャル女神は俺を指差してウィンクした。


「いや、それもそうだけど……」


「そうだよねー!っていうかぁ、死んだと思ったでしょ!」

 このギャル、全く話を聞かない。


「うん、それもそうだけど……だからぁ!」


「死んだよ」

 女は不意に真顔になる。恐ろしく整った顔から表情が失われる事で、得体の知れないプレッシャーを感じた。


「……」

 そして、助かったと思い込んでいた俺は、突然自分の死を告げられたショックで、言葉に詰まってしまった。


「キミは転生したんだよ。東雲忍」


「……てん、せい」

 ……死ぬ寸前に思い描いた通りのことが起きたと、この女はそう言っている。


「んで、その身体は東雲しのぶ。25歳営業職の女の子よ。すっごい偶然ね」


「この、身体…? いや、東雲忍は俺だよ。男だろ!?」

 この女は何を言っているんだ?


「あー、もう、ややこしい! あのね! あなたは東雲忍、漢字で忍。その身体はひらがなでしのぶ。漢字の忍とは、別人の身体なのよ」


「えっと……? なんて?」


「だーかーらー! 貴方の身体はもう無いの! 別人の身体に仕方なく貴方の魂を入れた! それが、同姓同名同年齢の女の子だったの!」


「はっ!? えっ? ちょっ……な、なんで!?」


「それもこれも……加古ちゃんのせいなのよ!」

 ギャル女神は先程まで隣にいた、医師の名前を出した。


「あの医者が……何をしたんだよ」

 やはり、性転換? いや、何だ? わからん。何が起きてるんだ!?


「加古ちゃんったら、死ぬはずの身体を助けちゃったんだから! いくら前世が優秀なドクターだからってさぁ。この世界の技術を超えちゃ駄目よね! その子の魂はとっくに転生させちゃってたのに!」

 そう言って、ギャル女神はむくれた顔をしながら俺を指差す。


「前世……?」

 わからない事だらけだ。転生? 前世? あの医者も?


「そうよぉ。加古ちゃんはちんちくりんのおデブだけど、スーパードクターなの。しのぶちゃんの頭の怪我も、オーバーテクノロジーでちゃちゃっと治したのよ。まぁ……そんなことの為に前世の記憶を残したわけじゃないから、あとでお仕置きね」


「待ってくれ……り、理解が追いつかない……」


「ま、それはいいんだけどね、とにかく魂の無い身体が残ってたら、何が起こるかわかんないからさぁ、しのぶちゃんの身体が生き返った瞬間に、たまたま死んじゃった忍クンの魂をこう、スーッ、ポンっと、ね」

 ギャルは両手を右から左に動かすジェスチャーをした。


「なにその間に合わせみたいな転生!?」

 思わずツッコミを入れた。


「それでね」

 ギャルは構わず話を続ける。


「おい!」


「あなたにはその身体……しのぶちゃんの人生を、続きから送ってもらうことになるわ」

 女神はなおも俺の言葉を無視しながら話し続けたかと思うとニヤリと笑い、改めて俺を指差した。


「……え? ちょ、ちょっと待ってくれ! どういうことだよ! 元の身体に戻してくれてもいいだろ!?」


「そうねぇ。でも……貴方の身体、とっくに焼かれてお墓の中よ」

 女神はアメリカ人が「さあ?」と言うときのポーズを取った。


「じゃ、じゃあ別の世界に転生とか! そういうのはないのか!」


「別世界はあるにはあるけど……それも無理ね。もう、魂入れちゃったし」


「えーと、じゃあせめて男に戻してくれ!」

 いきなり女にされても、さすがに困る。


「それだけはなんとかできそうだけどねぇ……」


「じゃ、じゃあそれで!」


「……分かったわ。でも、条件があるの」


 女神は人差し指を立てて、不敵に微笑んだ。

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