幕間 女性化の特権
俺は、転生して女になってしまった。
頭の切開部は医療の進歩で最小限。そのため髪も長く、なによりすっぴんだというのにかなりの美女、いや、可愛い顔をしている。俺の好みはもう少し可愛くなくて良いのだが、可愛くても良いか。
つまり…
この身体で色々したい!
よく漫画で見た、「女の子になっちゃった!」という話がそのまま自分に起こっているのだ。これは男子の夢だろう。
…ところが、女になったばかりでいきなり生理を迎え、性の象徴として見えるべきものが、グロい塊の製造機にしか見えなかった。
そして、なぜか日中にやたらとムラムラしてトイレに駆け込むと血を見ることになり、その気が失せるという繰り返し。そのため、今の今までまったくその気にならなかったのだ。
また、とにかく痛い日やとにかく眠い日もあり、女性の身体の大変さばかりを味わった。おかげで生理用品の使い方をバッチリ覚えてしまった。
性転換漫画がいかにご都合的かがよく分かった。生理シーンがあっても1コマ程度だが、実際は何日も続くのだ…
そして昨日、生理が終わった。
下半身の衣服を全て脱ぐ。
手鏡でそれを見てみる。
「おぉぉ……うーん」
全く興奮しなかった。おかしいな。
いや、まだだ。俺は巨乳なのだ。
全裸になった。自分の胸元を見下ろす。
「おぉ……うーん…」
まるで興奮しない。
そういえば…喜多嶋に「女の子レッスン」を受けた時…聞いた気がする…
「あ、あとね。女の子に転生して男の記憶が強く戻った患者さんって、すぐ自分の身体を見たがるんだけど…女は視覚では興奮し辛いから無駄よ!」
魂は男でも脳は女だもんなぁ…女って何で興奮するのかな。触ればいいかなとも思うが、気が乗らないので服を着た。
女に転生ってもっと楽しいのかと思ってたんだが…やっぱり男に戻りたいなぁ…
「しのぶちゃん、起きてる?」
喜多嶋が病室に入ってきた。あ、危なかった…
「起きてますよ」
「他の患者さんやナースがいたらやりづらいからさ…これから、メイクを教えるわよ」
「えぇ…?いいですよ、素顔で」
「バカな事言ってんじゃないわよ!営業でしょ!?メイクはマナーよ!ネクタイと一緒なんだから!」
「ネットで何度も議論になってるのに当の女性がそれ言っちゃアカンでしょ…」
「いいから!」
そうして俺は、女性としてのイロハを喜多嶋にみっちり仕込まれ…この入院生活を、女の子レッスンを受けながら送ったのだった…
現実に女性化しても、なにも良いことが無かった。面倒が増えるだけだ。
女って大変だなぁ…
全年齢の限界に挑戦しました。




