~未改稿~
もう1つ行きます!
7月23日【アメリカ合衆国 オレゴン州上空 高度30000フィート 米国大統領専用機】
「これで終わったと考えて良いのかね?」
ペンス大統領はモニター先の相手に問いかける。
「とりあえずは、といったところでしょう。」
シャイアン・マウンテンの地下深くにあるNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)からCDC(疾病管理予防センター)のホフマン所長が答える。
「日本のNIID(国立感染症研究所)をはじめ、英国、ロシアの専門機関からも同様の連絡を受けております。」
「人体の溶解現象は不確定ながら、世界的に終息しつつあります、閣下。」
ペンスは濃い隈のある碧眼をしばし瞑って長いため息を吐いた。
ここ数日、世界の破滅を避けるべく、不眠不休で陣頭指揮を執り続けたのだ。地球でもっとも絶大な権力を持つ大統領の彼をもってしても、何度、絶望した事か。
やがてゆっくりと息を吸い込んだペンスは決断した。
「マッコイ国防長官、デフコンを3に下げよう。クレムリンには私から伝える。」
「我々は前に進まねばならんな。DCに戻ろう。」
「畏れながら閣下、まだ報告がございます。」ホフマン所長がやや緊張した顔で報告する。
「溶解した人体サンプルのうち、いくつかの検体で細胞が活発に活動しておりました。DNAはヒトのままです。」
「つまり、それらはまだ生きていると、人として生きていると言うのかね?」
「おそらくは。ただゲル状のままで僅かに動くだけの存在ですが。」
「なんということだ。」思わずペンスは顔をしかめて考え込む。
横から国務長官が「では、あの液体を無下に処理出来んな。しかしそれでは都市機能の回復に時間がかかり過ぎてしまう。冷却システムを維持する原発の職員は疲労が限界にきている。一刻も早く休ませたいところなんだがな。」
「ゲル状でも守るべきわが国民だろう。所長、液体を適切に移動させる方法は無いのかね?」ペンスが訊ねる。
「ゲル状の液体を布で包んで運ぶことで持ち運びは可能です。ゲル状の液体は全体の2割です。残りはゲル状に成ることもなく、ただのリンパ液としてバラバラに飛び散っております。」
「わかった。まずは都市部や政府機関、重要施設からゲル状の国民を優先して救助し、適切な施設で保護しよう。州兵も動員して救助にあたらせよう。」
「かしこまりました、大統領閣下。」
こうしてワシントンDCに戻ったペンス大統領だが翌朝、ゲル状の国民が植物に変化したとの驚くべき報告を受ける事になる。
ここまで読んで頂き本当にありがとうございますm(__)m