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時のオーケストラ  作者: オーケストラ
7/15

ヘイ、シャチョウ

 秋達はジャンヌの審問会が開かれている建物の前までやってきた。 

 門は兵士達がふさいでいる。

 とても入れてくれそうにない。

 もっとも当然であろう。

 建物の中にはフランス中より有力者が集まっているのだ。

 下手な人物を通してしまえば大事である。

「で、どうやって入るんだよ」

 既に怪しい人物として、兵士達にロックオンされているらしい。

 こちらを睨むように見ている。

「ふん、俺を誰だと思っているんだ」

 三代目が自信満々に答える。

 ゆっくり三代目が兵士達に向かって歩いていく。

 その背中が語っていた。

 お前達はそこで見ておけ、と。

 激しく不安である。

「なあ、ウイング大丈夫か?」

「……信じましょう。三代目を」

 最初の沈黙は何だったんだろう?と思いながらも秋はウイングと共によく見えるように物陰に移動する。

 いつでも逃げられる体制である。

 あ、兵士達が剣の柄に手を伸ばした。

 やっぱり駄目か、と秋は思う。

 兵士達の声が聞こえてくる。

「おい、そこの怪しい神父もどき。そこで止まれ!」

 あ、やっぱ神父として認められていないっぽい。

「まあまあ、兵士諸君。お勤めご苦労サマー。それよりさー、少し休まねーか?」

 三代目の目が細められる。

 その右手が懐の中に隠れる。

 まさか、拳銃か?

 そんな動作である。

 拳銃を知らない兵士達にも、不思議な威圧感に飲まれたのか緊張が走る。

 ……ごくり。

 秋達と三代目、そして兵士達の間で緊張が走る。

 そして、三代目の目が、かっ、と開かれた。

 同時に懐から四角い何かが取り出された。

「ヘイ、シャチョウ。イマナラココトオスダケデ、コノオタカラ、シャチョウノモノヨ」

「お、おい。お前ふざけるな。いい加減に……って、こ、これはああああああああああああああああ!?」

 なんだろう?様子がおかしい。さっきまで、この場を満たしていた緊張感は胡散し、別のものにかわっている。

 秋とウイングはお互い頷くと、こっそり三代目の背後から近づいていく。

 そして、見た。

 三代目の手に握られているものを。

 エロ本である。

「ダイジョブ。ダイジョウブ。コレトテモイイモノネ。カワイイコイッパイウツッテイルヨ。タイヘンオカイドク。イマナラスコシメヲトジルダケデコノカワイイコガアナタダケノモノネ」

 三代目は何か危ないバイトでもした経験があるのだろうか?

 その口調その行動がその道のプロのように見えた。

「さ、さ、三代目ええええええええええええええ!!何を持っているんですかああああああああああ!!」

 ウイングが切れた。

「あ、いやこれは交渉道具で、な」

「問答無用」

 三代目が女遊びをしていた時から鬱憤が溜まっていたのだろう。

 とうとう本気でウイングが切れたようだ。

 ホムンクルスの腕力は常人を遥かに超えるらしい。

 三代目の襟首掴み片手で、ぶんぶん振り回している。

 そんな、二人と、それを見て怯える兵士達の姿を見ながら、秋は本当に建物に入れるのだろうか?と疑問を感じずにいられないのだった。

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