数日の戦い
翌日、ジャンヌは強硬手段に出た。
少数の兵と共にイングランド兵に戦闘を仕掛けたのである。
誰もが負けると思ったその戦。
しかし、ジャンヌはその戦に勝利した。
初めての勝利の余韻に奮い立つフランス兵士達。
町の権力者はそんな様子に危機感を感じ何とか手綱を握ろうとするが、勢いのついたジャンヌは止まらない。
連日イングランドに戦いを挑み、次々と領土を奪還していった。
最初の戦いからわずか数日後。
オルレアンにある最大の拠点トゥーレル砦を奪還し、とうとうイングランド兵をオルレアンから完全に退けたのだった。
オルレアンは解放された。
最大の功績者であるジャンヌのパレードが開かれ、町はかつてないほどに賑わっていた。
もう明日を怯えて過ごす日々は終わったのだ。
もちろん、犠牲はあった。
その中には秋が知っている人もいた。
ジャンヌも矢で討たれ怪我をした。
秋もウイングに守ってもらわなければ怪我をし、最悪死んでいたかもしれない。
二度と体験したくない経験だった。
だが、こんなに喜んでくれる人達がいるなら、やったかいはあったのかもしれない。
「なに、やり遂げた顔してんだよ」
「いいじゃないか、少しぐらいそう思ったって」
三代目に叩かれた頭を押さえながら秋は抗議の声をあげる。
「よく言うぜ。ただ馬に乗って見ていただけだろ」
「す、少しはジャンヌを助けたわい!!」
ジャンヌが怪我をしたとき、危険を顧みず助けに行ったのは自分である。
「ジャンヌを抱きかかえて逃げることも出来なかったくせに」
「っぐ、だ、誰かから聞いたのか?」
だって、ジャンヌが着ている鎧ってやっぱ重いだもん。
ウイングや他の兵士が来てくれなかったら、確かにやばかった気がする。
まったく、ホムンクルスは反則だ。
あんなに細腕なのに、自分どころか屈強な兵士達より腕力がある。
秋の視線を勘違い何か勘違いしたのか、恥ずかしそうに頬を染めるウイング。
違う、そういう視線じゃない。
かわいいけど。
「それより明日はオルレアンを発つぞ。館に帰ったら準備しとけ」
「え、もう?」
まだ観光すら満足にしていないのに。
「おいおい、まじか?本当に何も知らねーんだな。歴史通りなら、すぐにジャンヌは出るんだぜ」
「え、そうなの?」
秋の言葉に三代目は、信じられない、という顔をする。
でもウイングも、そうですよ、というので、どうやら本当らしい。
「マジか」
遊びではないことは知っているが、もう少し滞在したかった、と秋は思うのであった。
翌日秋達はオルレアンを発った。
次の目的地はランス城。
フランス国王が誕生するところである。




