進軍の準備
翌日、遂に進軍の準備が始まった。
進軍の目的地はオルレアンと言う名の町だ。
現在オルレアンはイギリス軍に包囲され、孤立し、多くの人々が助けを求めているらしい。
ジャンヌとしては、すぐに向かいたいところだろう。
しかし、今回ばかりはフランス軍も負けるわけにもいかない。
準備は念入りに行われた。
もっとも本当の理由は齟齬が出てきた歴史を修正するため、記録に残っている出発日に合わせるよう上の権力者にウイングに圧力を掛けてもらっただけである。
その間、秋は乗馬の練習をすることになった。
オルレアンまでの道のりは遠い。
たった10日前後の旅路で体調を壊した秋だ。
また、徒歩での移動だと疲れから体調を崩す恐れがあったので、馬で行くことになった。
しかし、秋は乗馬をしたことがない。
そのため、秋は何度も馬から落ちそうになりながらも練習する必要があった。
因みにジャンヌは早々に乗馬の技術を習得した。
流石は村娘である。
秋も10日ほどで、ある程度自由に馬を操れるようになった。
次は鎧と剣である。
秋は心が弾んだ。
男の子である。
鎧や剣は大好きなのだ。
しかし、鎧は重かった。
40キロ近くある。
動けなくはないが、着込むと痛いし、重いし、熱い。
すぐに嫌になった。
仕方なく皮で出来た服に多少の鉄板を合わせたものを選ぶことになった。
また剣も同様だった。
重いのである。
10キロぐらい。
10回も振れば重くて腕が上がらない。
仕方なく少し長めのナイフを選ぶことになった。
因みにウイングは鍛冶師が面白半分で作った、大人二人でやっと持ち上げる大型剣を片手で振って、周囲の度肝を抜いていた。
そういえば、ジャンヌはどうするんだろう?と秋は思った。
何も選ばなかったが、戦場に何も持たずに行くわけにはいくまい。
ジャンヌに聞くと、サイズの関係で特別に作ってもらっているとのこと。
明日には届くだろう、とのことだった。
そして、翌日。
館にジャンヌの鎧と剣、そして純白の旗が届けられた。
鎧はジャンヌの小柄な身体に合わせて通常より小さく、また動きやすいように軽量化されていた。
剣も同様に軽量化されているようだが、代わりに耐久性はないように感じられる。
おそらく、2.3回打ち合ったら折れてしまいそうだ。
ジャンヌに聞くと、
「わたしは剣を抜くつもりはないので、そうしてもらったんです」
とのことだった。大丈夫だろうか?
「それより、この旗をみてください。わたしの指示で作ってもらったんです」
ジャンヌが嬉しそうに旗を振るう。
室内にも関わらず旗を振り回すジャンヌは、まるで自分の宝物を見せびらかす子供のようだ。
「これで、すべての準備は整いましたね、後は三日後、オルレアンに向かって進軍を開始するだけです」
そう。
準備は整った。
進軍の開始日も三日後に決まっている。
三日などあっという間だ。
すぐにその日はやって来た。




