ジャンヌの戸惑い
「何なんですか、あれは?」
館に帰った後、ジャンヌは疑問を爆発させるように机を叩く。
勿論、問い詰められているのは、ウイングと三代目、そして秋だ。
あのウイング事件の後、皆は挙ってジャンヌを褒めたたえた。
紛れもない聖女だと。
もっともそれはジャンヌを認めたわけではなく、ウイングの姿と力を恐れてだろう。
ジャンヌもそれは分かっている。
自分が認められたわけではないことに。
だが、それだけではないだろう。
ジャンヌは混乱しているのだ。
突如現れた自分の信じる神以外の存在に。
ああ、本当にうまくいかないな、と秋は思う。
もっともそのことで、自分に問い詰められても困る。
ホムンクルスとは聞いていたが、まさかあんな光景を見ることになるなんて。
ジャンヌの混乱は秋の混乱でもあるのだ。
「アキ!!」
我関せずの三代目と困り顔のウイングでは埒があかないと思ったのか、ジャンヌは矛先を秋に向けてきた。
じっと見つめられる。目には涙が浮かんでいる。
秋は悩む。
うまく説明できなし、下手に喋ると未来から来たことまでばれる可能性がある。
「ジャンヌ、そこまでです」
困り果てた秋を助けたのはウイングだ。
「ジャンヌ、確かに私達は貴女にとって怪しいでしょう。もう気づいているかもしれませんが、私達が来た処は遠い処では言い表せない処ですし、また私達が何者なのか説明することもできません。例え説明したとしても理解できないでしょう。でもこれだけは分かってほしい。私達は貴女を助けたい」
それは透き通るような声だった。
その言葉を聞いて、誰が疑えよう。
あれほど、混乱していたジャンヌも茫然としている。
「分かりました、わたしも貴方達を信じます」
ジャンヌは最後にそう微笑んでくれたのだった。




