序章
時計が好きなので時間という概念を元に書きました。
初めて書いた小説で10年以上前の作品になります。
思い出の小説です。
最後までお付き合いしていただければ嬉しいです。
誰もが寝静まる時刻――深夜。ここ高級住宅街にある公園も寝静まっていた。
月も雲に隠れ、光源と言えば僅かに光る外灯のみである。
聞こえる音も何処からか聞こえる犬の遠吠えに、たまに公園のそばを通り過ぎていく車の音ぐらいだ。
いつも通りの光景である。
だが、その日は違った。
突如、蒼い蒼い光が公園に生まれたのだ。
まるで、蒼海を連想させるその光は、周囲を激しく照らしたかと思うと、瞬く間に消えた。
そして、蒼い光の代わりに、男が現れた。
男は神父服を着ていたが、神父ではなかった。例え神父だったとしてもまともな神父ではないだろう。何故なら、先ほどの蒼い光と同じく蒼海を連想させる蒼い髪に、瞳、唇、そして爪まで蒼かったのだ。神父よりもガラの悪い不良のような男である。
男は周囲を油断なく観察してから、ゆっくり立ち上がる。
「……帰って来られたのか?」
見覚えのある公園の風景に、男は安堵のため息を吐く。
実際本当に危なかったのだ。下手をすれば、あのまま何処に飛ばされて、二度と帰って来れない可能性もあった。
「はい、そのようです。三代目」
突如、上空から羽音と共に女の声が聞こえてきた。
見上げると左右非対称の翼を羽ばたかせた、天使が舞い降りてくるところだった。
天使は蒼い男に向かって膝をつくと、その頭を垂れる。
「お前も無事だったか。ああ、何とか全員帰って来れたみてえーだな」
そう言った男の視線の先には、二つの人影が見えた。
一つは男だ。衣服こそぼろぼろだが、その身体には傷一つなく安らかな寝息を立てている。
もう一つは女だ。金色の髪と顔つきから彼女は日本人ではない外国人だということが分かる。しかし、注意を惹くのは彼女の容姿ではない。外灯に照らされて鈍く光る鎧。そして剣。それはコスプレなどではなく、本物であることを主張する重々しい重圧感を相手に与えた。まるで――そう。中世時代の騎士のようだ。
「はい、そのようですが……これから、如何いたしましょうか?」
天使が薄暗い闇夜でも分かる、琥珀色の瞳を爛々と輝かせながら男に問う。その表情には困惑が張り付いていた。
男も悩む。
とても面倒なことになってしまったが、あの時は他に方法などなかった。だが、いまは……。
「悩むのは後だ、今は帰ってゆっくり休むぞ」
男は宝物を抱き上げるように、鎧姿の女を抱き上げた。
雲が欠け、月が顔を出す。
「だから、今はゆっくりお休み、ジャンヌ」
優しい月の光が、ジャンヌ・ダルクの寝顔を優しく照らした。
どうでしたでしょうか?
メールでもそうですが、よく言葉が足らないと言われるので、
おかしく感じるところがなければ、と思います。