LAST・幸福な人と微笑む人
単刀直入にいうと、私は元気になり、ついに退院することとなった。
っといっても17歳で小児緊急センターは恥ずかしい。
病院の出入り口に看護師長の雲木、看護師副長の引田、私の面倒を見てくれた看護師の五月や宇美や他数名の看護師さんが来てくれた。
ここでは言えないが、この光景を見るのは2度目である。そう、"あの屋敷"と同じような光景が今、目の前にあるのだ。
「退院おめでとう!」
雲木が私に花束を贈る。
「ありがとうございます。」
私は頭を下げてお礼を言った。
「け、け、恵聖ちゃん。ほ、本当に退院おめでとう!グスン。」
寝たきりになっていた私の面倒見ていた五月は泣いていた。
「五月さんもありがとうございました。今までお世話になりました。」
私がそう言って頭を下げると、『うわーん!』と大泣きをしてしまった。
「あの・・・・・。」
私は雲木の顔を見て聞いてみた。
「私を助けた、救急車を呼んでくれた人って一体誰ですか?」
「男性の方でしたよ。残念ですが、名前までは聞かなかったけど・・・・。」
「そうですか・・・。」
私は空を見上げる。風が吹き私の髪がなびいた。
「私は自分の命を終わらせようとしました。けど、今は生きてて良かったと思います。どなたか分かりませんが、今はその救急車を呼んでくれた人に感謝しています。」
私は再び雲木を見て微笑んだ。
「そう。良かった。また死ぬって言ったらどうしようかと思ったわ。強く生きるのよ?」
雲木は目にうっすらと涙を浮かべて言った。
私は首を縦に頷いた。
私は看護師達に見送られながら門に向かって歩いていた。
私はミィちゃんの事を思い出していた。ミィちゃんが不安定だった私の心を正常にしてくれたのだ。そのお陰で今の私はあるのだと思う。
「本当にありがとう。ミィちゃん。」
私は門に迎いながら独り言を言った。
みみゃあ~。
どこからかミィちゃんの鳴き声が聴こえたような気がした。私は病院の方を振り向く。
玄関には看護師達がまだ手を振っていた。私は恥ずかしくなり、軽く頭を下げて再び歩きだした。
ーーーー(幕間)ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
門の手前数メートルに警備員がいる小屋みたいなのがあった。そこには警備員が2人いて、私に頭を下げてきた。
「おおー。君は前に救急車で運ばれてきた人だね?もう、大丈夫かい?」
「元気になってよかったよ!」
と笑顔で声をかけてくれた。私は笑顔で頭を下げて過ぎていった。
ふと、胸元の名札を見ると、『馬場』、『牛尾』と書いてあった。
(馬と牛。門の近くにいる警備員。・・・・・まさかね。)
私は変なことを考えながら門を目指した。
ーーーー(幕間)ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
門のところで大神くんが待っていた。壁に寄りかかり、本人はそのつもりではないと思うけど、なんだかかっこつけているように見える。
「ここじゃなくて、玄関のところに来てほしかったな。」
私は少し頬を膨らまして言う。
「いや、見送りがあっただろ?なんだか恥ずかしいぜ。」
そう言って大神くんは顔を赤くして右手の人差し指で耳近くを掻く。
「意外と恥ずかしがりやなんだね。」
私は意地悪をする子供のようにクスクスとしながら言う。
「ほっとけ!」
あっ!流石に怒った。
「ねぇ。どこに行く?」
私は大神くんの右腕を抱きしめて上目遣いで言う。
「そうだな・・・。遊園地でもどうかな?」
「良いねぇ。あっ!その前にこの花束をもって帰るね。」
私が笑顔で言うと大神くんも笑顔になっていた。
「ねぇ、大神くん。」
「なぁ、恵聖。俺のことは『京』と呼んでくれ。」
「うん!」
『生きていると楽しい事がたくさんある!
もちろん辛くて悲しいこともたくさんある。
私はいつまで京の隣にいるのだろうか?
明日、前触れもなくどちらかに不幸なことがあるかもしれない。
喧嘩などをして別れるかもしれない。
顔がしわくちゃの年寄りになるまで一緒にいるかもしれない。
だけど、私は可能な限りたくさん京に言いたいことがある。』
「ねぇ、京。」
「お、おう。なんだ?」
「あのね。私ね、入院しているときに不思議な夢を見てたんだ。夢っていうには違う感じがするんだけど。そこでは私がね・・・・・・。」
『今がすっごく幸せ!ってたくさん伝えたい!』
ご愛読ありがとうございました。
次が最後の話です。




