63・中3
中3になった。
受験勉強をする年だ。私は帰宅部だったので、サッカー部の応援以外は受験勉強をすることにした。
っといっても、私は特に将来の夢を考えていなかったので、行きたいという高校はなかった。それに、私は少し勉強が苦手である。偏差値が高い高校はすでに諦めて、偏差値が低い高校を狙おうかと考えていた。
秋の事である。
「ハァ~。大神くんはどこを受験するんだろう・・・。」
何となく独り言を言った私。それを聞いていた初陽が走ってどこかに行ったのを私は気付かなかった。
そして、すぐに戻ってきた初陽。
「わかったよ!大神くんは私と同じ高校、『勇平亜高校』を受けるんだって!」
初陽は目を輝かせて言った。
私は、私の独り言を聞いていた初陽が大神くんに聞きに行った事と、偏差値がとても高い高校の名前が出たことに驚きひっくり返りそうになった。
「ゆ、勇平亜高校!?無理!無理!無理!私には無理だよぉ。」
私はとても弱気になった。
「大丈夫だよ!ほら、この学科。ここの高校で一番偏差値が低いよ?ここを目指してみたら?」
初陽が高校パンフレットの指を差す学科。確かに他の学科よりも偏差値が低い。しかし、他の高校と比べると偏差値は高かった。
「えっ?えっ?ここでも無理だよ~。」
「大丈夫!私と一緒に勉強しようよ!」
私はダメ元で勇平亜高校を受験することになった。
「「・・・・・・・・・。」」
私と初陽は無言で勉強を頑張っていた。
「ああー!もうダメだ!」
沈黙に耐えられなかった初陽は鉛筆を持ったまま両手を上げて背伸びみたいなポーズをとる。
「ねえ!ねえ!聞いて!今年、弓道部にすごい1年生が入ったんだって!確か、名前は・・・・・いて・・・・。」
「ごめん!私、勉強に集中したいの!」
ダメ元でも私は大神くんと同じ高校に行くために勉強を頑張った。
そして、努力が実ったのか、無理かと思った勇平亜高校に見事、私は合格したのであった。