59・4~5
私は4歳になり、体は弱いものの活発に走ったりしていた。っといっても外よりも部屋の中で絵本を読んだりしていることが多い。ついでに病院に行くことも多い。
今日は家の中で兄とふざけておいかけっこをして遊んだ。
「キャハハハ・・・。」
私はとても楽しくなり、いつもは入らない和室に入っていたのである。
和室には白黒の写真で笑顔で写っている女性の写真がとても高いところに飾ってあった。
「ねぇ、お兄ちゃん。この人はだれ?」
「その人はね、僕たちのおばあちゃんだよ。」
「おばあちゃん?おばあちゃんはどこにいるの?」
「天国にいるんだって。」
「“てんごく”?天国ってどこにあるの?」
「それはね、雲の上にあるんだよ。」
「そう」
私はあまり分からなかった。
5歳になり、私は検査入院で数日入院をすることになった。
入院して2日目、私は母と一緒に病院内を探検という名の散歩をしていた。
ロビーに行ったとき、不思議な女の子を見つけた。椅子の座る所に裸足で立ち、変な仕草をする眉が太く、肩までの黒髪の女の子がいたのだ。
「何しているの?」
私は不思議に思ったので、つい訪ねてみた。
「わたしの名前はいてだよ!」
私は名前をきいていないのに、いてちゃんは名乗ってきた。
「わたし、大きくなったらきゅーどーぶに入る!」
話を聞くと、さっきロビーのテレビで弓道部の特集をやっていたみたいだ。
「そっか。私は恵聖だよ。よろしく。」
「うん!よろしくね!」
そう、これこそが私といてちゃんが初めて会った日だったのだ。
私は宛もなく歩いていると、今回も看護師や患者の話し声が聞こえる。
「ねぇ、研修生の佐次田さん。とても可愛くてしっかりしているよね。」
「うんうん!私もそう思う!」
「私、ねこみみのお姉ちゃん。優しいからすきー!」
「俺、あの木刀を持ったお姉ちゃんはおっかねーとおもう。」
などなど。
人の話を聞きながら散歩をしていたら、いつの間にか診察室まで来ていた。
ここには数人の子供が診察を待っていた。
そして、ちょうど診察が終わったのか診察室から男の子とその子の母親だと思う人物と國矢部先生が出てきた。
男の子の母親は深々と頭を下げる。國矢部先生は「お大事に!」と言っている。
男の子は先生の胸の所をずっと見ていた。そして、口を開く。
「お母さん。俺、この漢字を知ってるよ!『矢』と『部』だよ!」
男の子は自慢気にいう。たぶん、覚えたばかりの漢字なんだろう。
「ヤブ医者先生!ありがとうございました。」
男の子は大きな声で、この言葉を発した。母親の顔は真っ青になり、「すみません!すみません!」と謝っていた。
私はその言葉の意味を知らなかった。
本当ならここでこの『ヤブ医者』という言葉は終わりであるが、私はその言葉がとてもおもしろかった。
「あははは!ヤブ医者だって!ヤーブ医者ー!ヤーブ医者ー!」
と私は『ヤブ医者』で音頭をとったのであった。私はその場で母に怒られ、豪快なげんこつを貰った。
しかし、『ヤブ医者』というあだ名はその場にいた子供達によって広まってしまったのだ。




