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猫はふて寝する  作者: 山神ゆうき
ミケのその後の生活
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52・凶暴な虎と固まる猫

「親方!空から女の子が!って何言ってんだ私!!」


いきなりの事で動揺して訳が分からないことを口に出していた。そもそも、落ちてきたのが女の子とも限らない。

私はすぐに窓から身を乗りだし、下を見てみた。落ちてきた人物は1階の壁を思いっきり蹴り落ちてきた衝撃を和らげ、綺麗に庭で受け身を取った。(※みなさんは絶対に真似はしないでください!)


私はその人物の行動に言葉を失って固まってしまった。

落ちてきた人物は男性だった。所々に黒が混ざっている金髪をオールバックにしており、黄色い獣耳に黄色と黒のシマシマのシッポがある。赤い服であった。十中八九トラだと思う。


「ふぅー!久々の外は気持ちがいいぜ!」


そんなことを言いながら、トラは思いっきり背伸びをした。そして何かを企んでいるのか、周りをキョロキョロを見ている。


「わっ!何だ?この黒い人間みたいなのは!?」


私が居るところからは見えないが、たぶん影法師にビックリしているんだと思う。しかし、ビックリしていたのは一瞬ですぐに攻撃をしていたのだが、庭に行かないと影法師は見えないのでシャドーボクシングをしているようにしか見えない。

それに影法師の体は透けるので、攻撃をしてもまったくの無意味である。


「ねぇ!」


私が庭にいるトラに叫んでみると、トラは攻撃をやめてこちらを見る。


「ああん?何だてめぇ?」


とても恐いトラだった。オオカミくんの何倍も恐い。


「そ、そこに泣いている女性がいるよね?女性が何者か調べてほしいのだけど・・・。」


私は花壇近くにいる体育座りで泣いている女性を指差し、叫んだ。

トラは何度か私が指を差した方面を見た。


「誰も居ねぇじゃねえか!それより、ここら辺にいる黒い影みたいなのはなんなんだ?」


庭はとても不思議である。部屋の窓からは女性が見えて影法師は見えない。しかし庭に行くと影法師は見えて女性が見えない。なぜか知らないがそういう仕組みになっているようだ。


「そっか。分かった。ありがとう。」


私はあまり関わらないようにしようと簡単に感謝をした。

するとトラは勢いよく屋敷に走ってきた。そして1階の窓の水切りの部分に右足を乗せジャンプする。その後、何回か壁を蹴るようにして上がってきた。私の部屋の窓の水切りに手が届くと、窓の(せん)の部分に腕を組むように掛けた。

今、トラの状況は腕と頭だけが私の部屋に入っている状態だ。


「みみゃあー!」


私は勢いよくトラが上がってきたのでビックリした。ビックリしたのは私だけではなかった。下の方から窓が開く音がして、「今のはなんやと?今のはなんやと?」というヒナマツリちゃんの声が聞こえてきた。

そう、私の真下の部屋はヒナマツリちゃんの部屋であり、多分トラが下の窓の水切りに足を掛けた音にビックリしたのだろう。しかし、音の犯人が真上に居ることを知らなかったらしく、「気のせいか。」の声と共に窓が閉まる音がした。


「おい!」


トラは私に声を掛けてきた。その言葉に私はビクッ!としたのだ。


「俺はトラオだ!この部屋から微かに姉貴の匂いがするな!お前、姉貴を知っているだろ?」


鋭い目付きで私を睨むトラオくん。しかし、いきなり来て『姉貴を知っているか』と言われても分かるはずはない。

私は考えてある結論が出た。口調やヤンキーっぽいことから何となくだが、メイド副長の引田(ひきだ)に似ている気がする。そっか、引田の弟なんだな。


「あの・・・・。トラオくんのお姉ちゃんは・・・。」


お姉ちゃんの名前を聞こうとした直後、凄い勢いで窓の水切りに足を掛け、トラオくんは自分の部屋に戻っていった。


「みみゃあー!!」


いきなりの事で私はまた悲鳴をあげた。

それとほぼ同時に私の部屋のドアが開き、五月(さつき)が入ってきた。私は何事か分からず、ただ立っているだけであった。

五月は私の部屋を見回し、少し頭を傾げた。


「ミケちゃんー。ごめんねー。いきなりビックリさせてー。」


と笑顔で言って帰っていった。色々と状況がわからない私だけが、そこに立っているのであった。




ー(幕間)ー




211号室から出た五月は廊下を歩きながら、再び首を傾げていた。


(おかしいわね。確かに弟の気配がしたはずなんだけど・・・・。)

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