47・集う仲間と総大将の猫
私はゆっくりとドアを開けた。
もしかして、エンリュくんはエンリュちゃんだったのかもと思ったのだが、あの時の「なー!」という声は紛れもなく男性の声だった。なら、なぜ部屋から女性の声が聴こえたのか。
それは分からなかったが、冷静に考えたら聞き覚えのある声だった。
そう、それは屋敷三大美声の一人、ヒナマツリちゃんの声であった。
「ヒナちゃん。ここで何しているの!?」
私は少しドアを開けたところで気付いたので、びっくりした拍子にドアを勢いよく開けた。
「あっ!ミケちゃんとシシミちゃんだ!」
久しぶりに会った私とシシミに笑顔で言うヒナマツリちゃん。
しかし、私とシシミはまだ2人の仲良し大作戦は実行していなかった。なのでエンリュくんとヒナマツリちゃんが仲良くエンリュくんの部屋に居る事に、とても驚いてしまった。
「な、なんと!なんということでしょう!ここに!ここにマツリンがいるなんて!エンリュさんとは仲良くなったのですか?」
「えへっ!仲良くなっちゃった!」
情報収集が得意なシシミも今回のことは全然知らなかったようだ。
話によると、前回の私とシシミの仲良し大作戦の話でヒナマツリちゃんは凄くエンリュくんを意識していたらしい。そのあと私達がたこ焼きパーティーなどをしているときは、ヒナマツリちゃんはエンリュくんをストーk・・・・じゃなく、遠くから様子を見ており、それにエンリュくんも気付き仲が急接近したらしい。
「まさか!まさかそんなことが私の知らないところで起こっていたなんて!!」
驚きのあまり、シシミは2・3歩後退りをする。
「ところで何の用事やと(何の用事なの)?」
ヒナマツリちゃんは首を傾げて私とシシミに聞いてきた。
「あっ!そうだった!ねぇ、エンリュくん。お願い!私に力を貸して!!」
私はエンリュくんの右手を取りお願いする。
「なー?」
とエンリュくんは言い、スラスラとスケッチブックに書いていく。
『何故!我の闇の力を求める?』
と書いていた。
「実は・・・・・・。」
私はエンリュくんとヒナマツリちゃんに、友達が門の向こうに旅立ったことを話した。それで今、一緒に門番と戦ってくれる仲間を探していることも話す。
『黒き猫よ!話は分かった!だが、我々は協力出来ぬ!』
エンリュくんのスケッチブックにはそう書かれていた。
「えっ?何で?」
私はエンリュくんなら協力してくれると思っていたので、びっくりして聞き返してしまった。
「ごめんね、ミケちゃん。実はエンリュくんは怪我人なの。ほら、この両腕の包帯は本当に怪我をしちょっとよ(怪我をしているんだよ)!」
ヒナマツリちゃんはエンリュくんの腕を指差し言う。
そうだったのか、てっきり中二病特有の包帯かと思っていた。
「なー。」
『すまぬ。我は闇の力が足りず、手助けはできない。しかし、闇の儀式でお主らの健闘を祈るぜ!』
とスケッチブックには書いていた。
「私も戦いに行けないけど、エンリュくんと一緒に応援しちょるよ(応援してるよ)!」
「ありがとう。エンリュくん、ヒナちゃん。」
自分達は戦えないから、応援してる。私はエンリュくんとヒナマツリちゃんのその言葉がすごく嬉しかった。
ー(幕間)ー
「断るのじゃ!」
ここは310号室。私は最後の希望であるミジャと羊に事情を説明したばかりであった。
ミジャは私の説明を聞いたあと即断ったのである。
「ミケよ!考え直すのじゃ。門の向こうに行った者を連れ戻す事はダメなのじゃ。」
私は何故、ミジャが心配そうにそう言うのか分からなかった。
「じゃあ、お願い!ミジャがダメなら羊さんを連れていっていい?」
私は両手を合わせてミジャに頼む。
「ミケ様。私はミジャお嬢様の執事でございます。私がミジャお嬢様から離れることはできません。」
羊は礼儀正しくお辞儀をして答えた。
「そ、そんな・・・・。」
みんなが助けてくれると思っていたが、実際はそうではなかった。クルミちゃんを助けたいと頑張っていたのは私だけであった。
みんなは何故か私の心配をしているような気がする。
「そういうことなのじゃ。でっ?ミケはもう宛がないのだろ?クルミとやらを助けるのはやめるのじゃ。」
ミジャは優雅に紅茶をすすり、横目で私を見る。
「・・・・・・。」
確かにもう、私には頼る人がいない。
「それでも・・・・。それでも、私はクルミちゃんを助けたいの!」
私が諦めるわけにはいかないのだ。私は握り拳に力を入れる。
もう、ここでおわるのか・・・・・・・。
私は悔しくて目を閉じた。
「話は聞かせてもらった!」
その声とほぼ同時にミジャの部屋のドアは『バン!!』と開いた。
そう!そこには、ドアを思いっきり開けたからか、右手を開いて前に出している豚の勇者が立っていた。
「僕様が来たからにはもう大丈夫だ!」
豚の勇者はかっこよく腕組をする。
「こら!ちゃんとノックをしてから入るのじゃ!」
ミジャは手足をバタバタさせた後に勢いよく立ち豚の勇者に指を差す。
「姫様!姫様と羊さんが行かないと言うなら、僕様がミケのお供をするぜ!」
豚の勇者はミジャの文句を無視して話を進めた。
「むぅ・・・・。勝手にするのじゃ。」
豚の勇者が勝手に入ってきたからか、私を止めようと説得をしているのを邪魔されたからか知らないが、ミジャは頬を膨らましていた。
「ありがとう!とても助かるよ!」
「ふん!困っている人を助けるのが、勇者なんだぜ!」
豚の勇者は腰に手を当て鼻を伸ばしていた。
「よーし!それじゃあ、クルミちゃんを助けに行くぞー!」
私は思いっきり右手をグーにして上げたが、他の二人は乗ってくれなかった。
ー(幕間)ー
「よろしかったのですか?ミジャお嬢様。」
羊は紅茶のお代わりを注ぎながらチラッとミジャを見る。
「ああなってしまったら仕方ないのじゃ。」
ミジャはとても悲しそうな顔をしてカップに注がれた紅茶を眺めていた。
ミジャはミケの服の色を思い浮かべていた。
「ミケ様は2番目の危険度の赤い服でございましたね。勇者様とシシミ様はまだ黄色ですので先はありますが・・・・。」
羊もミジャと同じで"服の色"の事を考えていたらしい。
(もしかしたら、ミケと会えるのもさっきが最後かもしれぬ。無茶をするでないぞ!)
そんなことを思いながらミジャは天井を注がれたばかりの紅茶が冷めるまで眺めていた。
ミジャは心の中でずっと恋敵の事を思っていた。




