34・女神みたいな鳥と祈る猫
屋敷三大美声の一人の彼女がいきなり入ってきた私を見て驚いていた。当然といえば当然だ。だって歌って踊っていたら、いつの間にか私がいたからだ。
それに彼女はどこかの方言を使うみたいだ。
「そう!そう!この方です!な、なんと!屋敷三大美声の一人のダガダガダガダガダン!『ヒナマツリ』さんです」
シシミはそう言って一人で大袈裟にパチパチパチと手を叩く。
「ええー!?すごい!私、ヒナちゃんっでいいかな?ヒナちゃんの歌と踊りがすごくて、ついつい勝手に部屋に入ってきちゃった」
私はおどおどしながら答えた。
「そうやっちゃー(そうなんだ)。っで、シシミちゃんのことは知っちょるけど(知ってるけど)、あなたは誰やと(あなたは誰なの)?」
ヒナマツリちゃんは方言が出ているが、だいたい言っていることはなぜかわかる。
「わ、私はミケです。えっとヒナちゃん、面白い方言で喋るね」
私はヒナマツリちゃんに自己紹介をして方言の事を聞く。
「あっ!ごめんなさい。ウチが生まれた場所の方言なんだよ。ちゃんと標準語も喋れるっちゃけど(喋れるけど)、たまに方言が出るんだ。ほら、ちゃんと標準語で喋れてるでしょ?」
ヒナマツリちゃんは自信満々に言う。うん!方言が出てる。
「そ、そっか。・・・・・・」
私はなんと言えばいいのか分からなくなり、無言になってしまった。
それにしても白いワンピースに白い翼のおもちゃを背中に付けて、なんだか目の前に女神様が降臨したみたいだ。
「・・・・・・・・女神様みたい・・・・・」
私はボソッと呟いた。
「んっ?」
私の小さな呟きに反応するヒナマツリちゃん。
「私は天からの使者ヒナエル。ミケよ!私と契約しましょ!」
馴れない台詞を目を閉じ両手を広げて言うヒナマツリちゃん。最後の方は恥ずかしくなったのか、少し頬を赤くして笑顔で言う。
「おおー!女神様が降臨!!」
そう言って私はヒナマツリちゃんの前で祈るポーズをする。
「なんか!なんか!面白いですねぇ。なんだかマツリンって、さっき会った!さっき廊下で会ったおサルさんみたいです!」
シシミが私とヒナマツリちゃんのやり取りを台無しにする台詞を言う。
「えっ?えっ?おサルさん?」
ヒナマツリちゃんが意味がわからず、驚いて首をかしげる。
「ヒナちゃん。おサルさんっていうのは、さっき廊下でエンリュくんって男の子に会ったんだよ。その・・・・。エンリュくんが変な言葉を喋るっていうか、スケッチブックに書いて痛い台詞を書いて私達に見せるんだよ!」
私はシシミが言ったおサルさん、エンリュくんについて説明した。
「あっ!エンリュくんね。ウチ、知ってるよ!」
あー!あの人ね!みたいな感じでヒナマツリちゃんが言う。
「実はウチ。エンリュくんに敵と思われているみたい・・・・・」
悲しそうな顔をしてヒナマツリちゃんが言った。
「ええっ!敵ってどういうこと?」
私は意外な言葉が出て驚いた。いったい、エンリュくんとヒナマツリちゃんの間で何があったんだろう。