32・混ぜるな危険!猿と猪
屋敷の1階の廊下に猿がいた。シシミは笑顔で猿のところへ走っていき、私も呆れ顔でシシミの後を歩いて追いかける。
「なー」
死んだ魚の目をしている猿はそう言うと、スラスラとスケッチブックに何かを書いている。書いた後、私達にそれを見せる。
『動くな!』
と書いてあり、私とシシミはその言葉に反応してピタッと止まった。猿は更にスラスラと書いていく。
『我が名は「エンリュ」!闇に選ばれし者である!』
エンリュくんはそれを見せて右手をパーにして右目のところに持っていき、人差し指と中指の間から覗きこむボーズをする。
こ、これはもしかして・・・・。噂で聞く中なんちゃらという病気か。しかも重症!!
「うっひょーーー!!」
シシミの目が輝いている。
「これは!ひょっとしてこれは!中二病ですか!?すごいレアです!まさか!まさか!まさか!まさか!こんなに面白い人がいたなんて!!」
シシミはとても嬉しそうに言う。エンリュくんとシシミ。なんかすごく濃いメンバーが揃ったな、と私は深くため息を漏らした。
「エンリュさん!エンリュさん!私の取材を受けてくださーい!」
再びシシミはエンリュくんに向かって駆け寄る。
「なー」
と言い、エンリュくんは再び『動くな!』の文字を見せる。そして、またシシミは止まってしまう。
スラスラと文字を書きシシミに見せる。
『それ以上近付くと地獄の炎で焼き払うぜ!』
と書いてあった。
「おやおやおや!それは!それは!恐いですねぇ。しかし、出来るのなら見てみたい気もしますが!」
そう言いつつシシミは恐る恐る一歩ずつエンリュに歩み寄る。さすがのシシミも本当に恐いのか一歩歩くのに、数秒かかっている。
「出来るのですか?出来ないのですか?私はどんどん!どんどん!近づいていますよ?」
エンリュくんを挑発するシシミ。
「なー」
と言い、またエンリュくんはスラスラと文字を書きはじめる。
『我は闇と契約し者!しかし、契約者が気紛れ故、我は今は漆黒の魔法を放つことは出来ない』
と書いてある。それを見た瞬間!シシミは勢いよく走りジャンプをしてエンリュくんに抱きついた。
「捕まえたのです!」
シシミはエンリュくんを腕の上から抱きついている。なのでスケッチブックで書くことも出来ない。
「なー!なー!」
エンリュくんはシシミを離そうとバタバタ暴れている。
「わっ!わっ!あーばーれーなーいーでーくーだーさーいいいいい!!」
エンリュくんが暴れているので、最後の『い』のところでシシミの体はエンリュくんから離れて後ろに倒れる。その倒れる間がスローモーションになり、私はとっさに手を差しのべる・・・・・・・ハズが、両手を出して一歩踏み出したときに、つまずいてしまい転ける。
結果的に私が転び、その上、私の背中にシシミが倒れてきた。
「うげっ!」
私は潰された衝撃で変な声を出してしまった。
「ぐふっ!」
私が豚の勇者みたいにポッチャリなら少しだけクッションになったのだが、私は太ってない(本当に太ってないもん!)ので、シシミは私の背中の骨に当たり、その衝撃で変な声を出す。
『クックック。我に手を出すと闇に滅するぞ!』
と書いてエンリュくんはジト目だけど、ドヤ顔で書いたスケッチブックを見せた。
(私達は何でここに来たんだっけ?・・・・・・。そっか。確か屋敷三大美声の一人がなんとかだった!)
私は倒れたままその様なことを思っていたが、たぶん今のシシミはそんなこと忘れているだろう。




