13・怒鳴る白熊と立ち去る狼
兄の白熊が私の部屋から出てすぐ、廊下で大きな音がした。私は自分の部屋のドアを開け廊下を見ると、そこにはすごく恐い顔をしたお兄ちゃんと、壁に寄りかかりぐったりしているオオカミさんがいた。
「何しにここに来た!お前のせいでケイはなぁ!!」
オオカミさんを睨み付けて白熊は怒鳴る。オオカミさんも鋭い目付きで白熊を見るが、最初から目付きが鋭いだけで白熊を睨み付けているわけではないようだ。
大きな音と怒鳴り声で何人かは少しドアを開け様子を見る。ミカミちゃんもその一人だったが、「ひっ!」と小さな悲鳴を上げてドアを閉めてしまった。
私は目の前の光景の意味がわからなかった。確かに、オオカミさんは苦手なんだけど、私はオオカミさんが酷いめにあう事を望んでいなかった。
しかし、オオカミさんも白熊も恐くてその場から動くことができない。
「やめてよ!お兄ちゃん!!」
私は精一杯大きな声で叫んだのだが、2人には聞こえないみたいだ。私の方を向かず、睨み合っている。
「お前たち!何をやってるんだ!?」
木刀を持った茶髪でショートヘアーのメイドさんがやって来た。この人は引田 妃実果で、ここのメイド副長であり、元ヤンである。
とても恐いメイドさんが来たので、オオカミさんや白熊は沈黙した。他の野次馬の住人も逃げるように「バタン!」と部屋のドアを閉める。
「てめぇら!ここで騒ぎを起こすなんていい度胸をしてるじゃねぇか!ここがどこなのか知らないわけではないよなぁ?」
引田は2人を睨み付ける。今にも木刀で殴りかかりそうな引田。気のせいか、オオカミさんも白熊もビビっているような・・・・・・。
「そこまでです!」
ネコミミカチューシャのメイド長、雲木も現れる。
「今日はお2人ともお引き取り願いますか?」
そう言って頭を下げる雲木。見た目は冷静に見える雲木だが、怒っているようだ。
白熊は再びオオカミさんを睨み付けて帰っていく。少ししてからオオカミさんもいなくなる。
しかし、最悪なのはこのあとだ。メイド長と副長は凄く仲が悪い。引田は雲木を睨み付けて、雲木は引田を見ようとはしない。
「雲木ぃ~。なんでいるんだよ」
引田は雲木の顔を覗き込み言う。
「あなたに任せたら乱闘になるでしょ?あなたはそのやり方しか知らないから」
雲木も引田を睨む。
オオカミさんと白熊の乱闘を止めに来たはずのメイドさんが、その場で乱闘をしようとしている。
(ラウンド2!雲木VS引田!レディーゴー!)
私は心の中で、実況者のように叫んだ!