11・噂話好きなメイドとお喋り猫
ここは、診察室。私は1週間に1回は医者に診てもらう。いつもみたいにワンピースの上から聴診器を当てられて。
「グヘヘヘ!今回も異常なしだよ~。さよ~なら~」
この屋敷にいるヤブ医者はいつもみたいに適当に診察をして消える。
「ヤブ医者!」ということを言う気にもなれない。
部屋にポツンと一人残された私は無言で診察室を出る。そして、診察室のドアをゆっくりと開ける。
「お待ちしておりましたー」
診察室の外にはおっとりとしたメイド、佐次田 五月がカートを持って待っていた。適当なヤブ医者の対応で不機嫌な私はゆっくりとカートに乗り、自分の部屋に戻るために運ばれる。
「ねえねえ!宇美っちから聞いたのだけど、クルミちゃん、ミカミちゃんと仲がいいみたいだね」
私を運んでいる間、ワクワクしながら五月は聞いてきた。
「うん!最初はクルミちゃんの歌声が聴こえて、その歌に誘導されるようにクルミちゃんの部屋に行ったんだ。そのあとミカミちゃんが来て、私が観ていた魔法少女のアニメを知っていたから、それで2人と仲良くなったよ」
「へぇ~。けど、ミカミちゃんは猫が苦手だったような・・・・」
私はどうして2人と会って、仲良くなったのかなどを五月に話した。五月はミカミちゃんの猫嫌いを知っていたらしく、私にミカミちゃんの事を聞いてくる。
「確かに最初はすごく怯えて大声で悲鳴をあげていたけど、今では3人で仲良く遊んでいるよ!」
私は目を閉じ思い出しながらドヤ顔で言う。
「3人で遊んでいるけど、まだミカミちゃんはミケちゃんの事が苦手なんじゃないのー?」
「そんなことないよ!」
五月はミカミちゃんがまだ私の事を苦手なことを聞いてきたが、私はすぐ五月の言ったことを否定するように言う。
「そっかー。『3人で』ねぇ。けど・・・・・」
五月は何かを言おうとしたが、私は聞かないという仕草をしたので五月も何も言わなかった。
「「・・・・・・・・・・・・・」」
そのあと2人は沈黙していた。五月から何かを言うこともなく、当然私も何も言わなかった。
「部屋についたよー」
五月から出たその言葉は、しばらくの間、私と五月の別れの言葉になった。五月は無言で私をカートから降ろすと、そのまま帰っていった。
私が悪かった。ミカミちゃんとは実はあまり上手くはいっていない。しかし、私はその事を認めたくないから五月の言った『ミカミちゃんは私が今も苦手。』という言葉を否定してしまったのだ。
私は自分勝手に五月に怒ったことを後悔して、恥ずかしく思った。心の中で五月に『ごめんなさい。』と謝る。
私はやっと『お花のお姫様』が読めると思った。部屋に戻った私がが本を開こうとしたとき、ノックの音が3回なり大きな白熊が入ってきた。この屋敷にいる人のほとんどが人間の姿に動物の耳と尻尾だが、そこに立っている白熊は100%白熊の姿をしていた。
「あっ!お兄ちゃん!」
私は久々にお兄ちゃんが訪問してきたことに驚いた。私がこの屋敷に住んでから、お兄ちゃんが来たのは初めてだった。