番外編「アートですの!ミジャなのじゃ!」
みなさん、おはようございます。こんにちは。こんばんは。
今回から番外編です。
「今日も退屈なのじゃ!」
そう言って部屋に高級そうな白いガーデンテーブルと椅子を置き、足をくんで優雅に紅茶をすするのは、310号室の住人で13才の少女である。
彼女の名前はミジャという。髪の色は金髪、後ろで輪っかを作った一つ結びで左右の耳の前にたてロールが一本ずつ。黄色と黒のドレスを着ている。目はオッドアイで右目が青で左目が赤である。
いつもつり上がっている目が、少しイライラしてるからか余計につり上がっているように見える。
「さようでございますね!ミジャお嬢様!」
彼女の横に立っている24才の男性は彼女の執事の右流明 羊である。
執事の服に白い手袋、右目には片眼鏡をしている。髪型は茶色のミデイアムウルフで左右に羊の角がある。
羊はミジャの横に立っている。
高級なテーブル&椅子、おしゃれなドレス、優雅なお嬢様。羊はミジャを横目で見る。ただし、裸足にスリッパなのは見なかったことにする。
「何か面白い事はないかしら?」
「ここで優雅に紅茶を飲むだけでは面白いことはありませんよ?」
ミジャは紅茶の入ったティーカップを置き、羊を横目で見るが、ちょい毒舌を言うように羊はミジャの質問を受け流す。その羊の態度にミジャは頬を膨らました。
「ミジャはここで面白いことを待ちたいのじゃ!わざわざ動きたくないですもの!」
ミジャは座ったまま地団駄を踏み、そう言った後に不機嫌そうにティーカップを持ち紅茶を一気に飲みほす。
「今日はあの豚の勇者様は来ないのかしら・・・・」
飲みほしたティーカップを置き、遠くを見るように目を少し細めてミジャは言う。
「彼も子供です。こんな気持ち悪くて悪趣味な場所には近付きたくないでしょう?」
そう言いながらミジャの空になったティーカップに紅茶のおかわりを注いだ後に周りを見渡す羊。
「これはアートですの!素晴らしくて美しいと思うのじゃ!ミジャは蛇が大好きなのじゃ!」
そう言ってミジャは目を閉じ自信満々に両手を広げる。
この部屋には何種類かの蛇の絵画や彫刻が飾られてあり、全部ミジャのコレクションなのだ。
「ほんっっっとうに素晴らしくて悪趣味でございます」
そう言ってクスッと笑う羊に対してまた頬を膨らませるミジャ。
「悪趣味ではないのじゃ!なぜ、蛇の素晴らしさが分かりませんの?」
ミジャは羊の言葉にむきになる。
とても退屈をしているミジャと違い羊は自分のお嬢様をからかっているので全く退屈などはしていなかった。
「はぁ~。退屈なのじゃ!」
ミジャがため息をつき、再び言う。
彼女は椅子から立ち上り蛇の彫刻の場所まで歩いていく。
「ああ!やっぱり蛇は素晴らしいのじゃ!」
「私にはどうしても悪趣味にしか見えません」
蛇の彫刻に『素晴らしい』とか言いながら頬ずりをしているミジャに羊はドン引きの視線を送る。
「いちいちうるさいのじゃ!では、あなたは何の動物が好きですの?」
羊があまりにもからかい過ぎるのでミジャは怒ってしまい、羊が好きな動物をからかおうと思い指を差し質問をする。
「もちろん!羊でございます。あの可愛らしい目にウールのもふもふ感がたまりません」
羊は自信満々に言う。
「ま、まぁ。羊が可愛いことは認めましょう。しかし、一番はやっぱり蛇で決まりなのじゃ」
少し頬を赤くしてミジャは言った。思っていたより可愛い動物を言ってきたので、からかわずに同意してしまった。
トン!トン!トン!
ミジャが次にどのようにして羊をからかおうか考えていた時、ドアからノックの音が聞こえる。
「どちら様じゃ?」
ミジャはドアに向かって声をかける。しかし、返事がない。
「私が見てきましょう」
そう言って羊はドアを少し開ける。
「お嬢様!客人でございます」
羊はノックをした相手が誰だかわかると、ミジャの方を振り返り言う。それと同時にドアが開き、頭には戦国の兜、右手に勇者が持っているような剣、左手に盾を持ち黄色のシャツとズボンを着て、豚鼻をしている10才くらいの男の子が立っていた。
「屋敷の見回り異常なしでした!お姫様」
かっこよく剣を掲げる豚くん。
「蛇も好きだけど、豚も良いのじゃ!」
「羊も好きですが、豚も良いですね」
羊とミジャが癒されるように同時に言う。
ミジャはさっき自分が座っていた椅子に腰を掛ける。
「勇者様、こちらにお座りなさい。ミジャは退屈なのじゃ!話し相手になって差し上げてもよろしくてよ」
ミジャは堂々としており明らかに人に頼み事をする態度ではない状態で座ったまま豚の勇者に訪ねる。
「おう!屋敷の見回りも終わったし、後は部屋に戻るだけだったからいいぜ!」
豚の勇者が言うと同時に羊はミジャと豚の勇者が向き合うように椅子と紅茶を用意する。
「勇者様、こちらへどうぞ」
羊は椅子を引き豚の勇者を座らせるとミジャの横に戻る。
ミジャは退屈な時間にさよならをして、豚の勇者と楽しく話をするのであった。
(ミジャお嬢様も変り者ですが、豚の勇者様も変り者でございます。ミジャ様を『お姫様』だなんて。二人とも変り者ですから、気が合うのでしょう)
そう思いクスッと笑う羊であった。