9・2人の門番と見上げる猫
私はとても怯えていた。目の前の無数の影法師が不気味すぎる。私は足がガクガク震えている。この影法師はいったい何だろう。とても怖い・・・・・。
しかし、影法師は私のことには気付かない、というか見えてないかのように歩いているだけなのだ。
私は勇気を持って恐る恐る影法師に手を伸ばして触れようとしてみる。すると、不思議なことに私の手は幻を掴むかのように影法師を透けてしまったのだ。影法師も私が手で触れたことに(透けたので触れたというか分からないが)気付かないのか「うう~。うう~。」と言って歩いているだけだ。
次に私は数歩後ずさりをした。そして影法師に向かって走り体当たりを試みた。当然、私の体は影法師をすり抜け地面へぶつかってしまう。
「あいたたた・・・・・」
私は顔面から地面にぶつかったので、両手でほっぺたをすりすりする。その後、体当たりをした影法師を見てみるが影法師は私に興味を持っていない。
つまり影法師はただ歩いているだけで、影法師からも私達は見えていないという結論を勝手に出した。
「へへーん!あんたたちなんか怖くないからね!!」
影法師が何も害がないと分かればこっちのもの。私は調子に乗り、影法師に足幅を少し広げ、左手は腰に当て右手で指を差し言った。しかし、不気味といったら不気味なのだ。私は急いで走り去り、その場所を後にした。
ある程度歩いたら目的地の近くに着いた。ここは私がいつも窓から景色を見ている場所。右手に噴水があり、左手に大きな花壇がある場所だ。
女性はいつも花壇近くの場所でうずくまって泣いている。私は噴水の反対側に行く。
しかし、そこにはいつも泣いている女性はいなかった。私は屋敷の方を見上げる。私の部屋の窓が見えることを確認した。
(ということは、私がいつも見ている景色はここだ。なのにあの女性はいない?)
私は訳がわからなかった。あの女性が一度も動いたところは見たことがない。
しかし、それは私が見たときだけだ。もしかしたら見ていないときに移動しているのかもしれない。
私は庭を探してみたが、見当たらなかった。
私がうろうろしながら女性を探していたら、いつの間にか大きな門の前まで来ていた。門をじぃ~っと見つめる。
「もしかしたら、この門の向こうかも・・・・」
私はそう呟き、門の方へ歩いていく。一歩、一歩私は歩いて行く。それにしても庭はすごく広い。私は確かに門に向かって歩いていっているが、まだまだ門に近付くことはない。門に向かって歩いているときに何体かの影法師とすれ違うが、私はもう影法師のことは気にしない。
時間がかかったが、私はとうとう門の十数メートルまできた。私は少しだけ見上げる。近くで見ると本当に大きな門だった。そして、私はまた一歩、一歩門に向かって歩いて行く。私が門に近付くのが分かると同時にドロンという音が似合いそうな煙が門の左右に現れて、煙から数メートルの大男が2人現れた。
右側の男は馬の頭の鉄兜をしており、上半身は筋肉むきむきの裸でブーメランパンツ、鉄の靴を履いており両手持ちの槍を持っている。
左側の大男は角の生えた鉄兜をしており、全身を鉄の鎧で身を固めている。右手には大きな剣を持っており、左手には中央に牛の顔が彫られてある大きな盾を持っていた。
「ここを開けようとするやつは一体誰じゃあ!!!」
私が門を開けようと心の中で思っていただけなのに、心を読まれたのだろうか、尻もちをつきそうなくらいの大きな声で馬の男が言う。
「我々はここの門番なり!許可のない奴はここの出入りを一切禁止する!!」
牛の盾の男が剣を器用に片手でグルングルン回しながら言う。
「みみゃあーーーーー!!!」
私は驚き大きな悲鳴をあげる。私はすぐ悲鳴をあげたり、ビビったりしてなんて怖がりなんだろうと思う。
「あ、あの・・・・・」
「あぁん!?」
「ひっ!」
恐る恐る訪ねる私をヤンキーのように言葉を返す馬の門番。
この2人はとても恐い!女性の事だけ聞いてさっさと帰ろうと思った私だった。
「こ、ここを最近、人が出ていきませんでしたか?肩までの黒いストレートヘアで学校の制服っぽいの女性とか・・・・」
私はもうすごく怯えている。恐くて体が震えているが、両手でジェスチャーをしてなんとか相手に人探しだということを伝える。
「なんだ!人探しか!!」
馬の門番がそう言って威嚇をするのをやめた。
「ここを出た者は今はいない!門の向こうから来た人はいるがな!」
牛の門番も威嚇をやめて優しい口調で言った。
この2人は門を開けようと近付いた者には容赦がないが、そうでなければ優しいのだなと私は思った。
「向こうから来た人?誰なの?」
私は2人に聞いてみた。もしかしたら、その女性も向こうから来た人かもしれない。ってか2人とも声がでかすぎ!
「1人は最近、老婆が向こうから来たな。まぁ、その日の内にこの門を通って帰ったが。あっ!その時老婆が通ったから一応出ていった人はいるか!ヴァッハッハ!!」
牛の門番は最初は真面目に話していたが、後から一本取られたという感じで笑い出した。
「そしてかなり前だが、黒い猫が一匹向こうから入ってきたな!」
本当にかなり前の事だろう。牛の門番は思い出すように言う。
ん?黒い猫?私の事ではないだろうか?しかし、そんなことはない。だって最近の話だが、私はちゃんとここの屋敷に住んでいる黒猫なのだ。
「まさかお前ではないよなぁ?」
そう言って牛の門番はギロリと私を睨み付ける。私はその睨み付けで硬直してしまった。
「しかしお前ではなく、ちゃんと猫の姿をした黒猫だ!」
と微妙に馬の門番が私をフォローする。ん?私をフォローしたのか?
「そうだった!お前じゃなく普通の黒猫だった!ヴァッハッハ!」
牛の門番は私を睨み付けるのをやめて笑い出した。
どうやら馬の門番は頭はいいが、牛の門番の方は頭はあまり良くないようだ。
「そう、わかったわ。ありがとう」
私はこんなところにあまり居たくないのでお礼を言って門を離れた。私が門に用事がないとわかった瞬間、ドロンという音が似合いそうな煙が再び出て門番の2人は消えた。
私は確認でもう一度、女性が泣いていた場所に行ったが、女性に会うことはなかった。
ー(幕間)ー
ガチャリ!ギギィ・・・。
私は自分の部屋に帰ってきた。時計はもうすぐ正午をさそうとしていた。
とても長い時間庭にいた気がしたのだが、意外と時間が経っていないことにびっくりする。
ドアを閉めると、私は一直線に窓の方に歩いていき、窓を開け庭を眺める。
門には門番はいない、というか見えない。彷徨う影法師も見えない。しかし、いつもの場所で泣いている女性はいたのだった。
花壇や噴水の場所は庭に行ったときと同じなのだが、なんだか見ている風景が違うような気がした。
ガチャリ!
「ミケちゃ~ん。ご飯よ~」
私が外を眺めていると急にドアが開き、男性なら絶対胸を見てしまうだろう、大きな胸の可愛いメイド、佐次田 五月が昼食を持ってきた。
次からは番外編を入れます。




