8・黒い影法師と三色黒い猫
そっか。10時からクルミちゃんが寝るなんて知らなかった。
「あっ!もうこんな時間だったんだね」
全然知らなかった私とは別に、ミカミちゃんは時計を見てはっとする。さすがにミカミちゃんはクルミちゃんの部屋によく遊びに来てるみたいだから知っていたようだ。
「そうだったのですか、すみません。今から部屋を出ます」
クルミちゃんの寝る時間が決まっているのなら仕方ない。私はミカミちゃんの背中を押して部屋を出ようとした。
「あら?あなたは・・・」
メイドは私を見て驚く。というか、私とミカミちゃんが仲が良いのをみて驚いていたようだ。
「猫が苦手なミカミちゃんが猫といるのが珍しいデス!申し遅れまシタ。ワタクシ、鰯水 宇美といいマース!ワタクシのことは宇美と呼んでくださいデス。ミカミちゃんやクルミちゃんとこれからも友達でいてくだサーイネ!」
時々、片言になりながらの口調で私に感謝をしているようだった。
ミカミちゃんの猫嫌いは宇美も知っていたようだ。私は宇美に軽く頭を下げるとミカミちゃんと部屋を後にした。
ー(幕間)ー
「このあと何しようか?」
私とミカミちゃんはクルミちゃんの部屋を出た後、何もすることがないので、ミカミちゃんに聞いた。
「わ、私も今日はたくさん話をしたので疲れたよ。へ、部屋に戻るね」
ミカミちゃんは深々と頭を下げて急ぎ足で部屋へと戻っていった。クルミちゃんがいれば猫は平気だけど、まだ2人でいることに抵抗があるみたいだ。
ミカミちゃんが慌てて部屋に戻っていったので、クルミちゃんの部屋の前に一人取り残された私。何をしようか考えた。
せっかく廊下にいるので部屋に戻ったら勿体ないような気がした。
私は少しの間、考えに考えてひとつの答えが出たのである。
「あっ!外にいるお姉さんに会いに行かなくちゃ」
そうそれは、いつも庭で泣いている女性、私はその女性の事が気になっており、何度か会いに行こうとしたのだが結局は行けなかった。
やることが決まったら、即行動!私は急いでエレベーター方面に走っていった。私はこの屋敷に来て日が浅いが、だいたいの場所はわかっている。
エレベーターは207号室の前にあった。小さな私にはすごく大きく見える。私が下ボタンを押すと数秒でエレベーターがやってきた。
エレベーターに乗るとボタンが1、2、3があり4のボタンだけがすごく高い所にあり、私には届かない。けど、下にしか用事がない私には関係ないことであった。4のボタンだけが高いところにある事には何も興味を持たなかった。
エレベーターが1階で止まり、私は降りる。そして101号室に向かい歩きはじめた。
101号室の前に外への出入口の扉がある。玄関には屋敷に住んでいる人の為の外出用のサンダルが、三段になっている焦げ茶色のシューズラックに綺麗に並べてある。私は自分に合うサンダルを取り出し、それを履き外へ出る。
扉を開けるとそこはいつも部屋の窓から見ている景色とは反対の場所だった。
こちらの方にも部屋から見ていた庭と同じ広さの庭があり、大きな花壇や噴水があった。数メートルの塀と門がある。ただ、違ったのは門の向こうの景色だった。
門の外側には大きな山が3つあり、すべての山に木が植えられていた。その木も『桃色の花が満開に咲いている木』『緑色の葉っぱがたくさんついている木』『赤々と綺麗な紅葉になっている木』『葉が全て落ちており雪が枝に積もっている木』がランダムに植えられている。
私はこの場所は気候が安定しているからエアコンが無くても寒くも暑くもないのかと思った。この屋敷に来てからは1度も暑さ寒さを感じず、適度な気温で過ごしやすいのだ。
私は暫く門の外の景色を眺めた後、反対側の庭の方へ歩いていった。
裏庭、いつも私が窓から見ている庭についた。そして驚いたことがある。それは窓から眺めていた時はいなかったのだが、半透明で黒い人影が数体彷徨っていたのである。
「うう~。うう~」
数体の黒い人影、影法師と名付けよう。影法師は低い声で唸りながらうろうろしていた。
まるですごく明るい庭にたくさんのお化けがいるようだ。
「みみゃあああ!!!」
私はあまりにもその影法師が不気味すぎて悲鳴をあげたのであった。
ミケちゃんピンチ!




