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康司の光、光の康司

陰り

警告!ヒロインが多分病んでます。カレールー的な表現でおおよそ甘口ぐらい?お腹空いた。

 とある味噌脱糞狸曰く、人生とは重き荷を背負って歩くものだそうだ。いかにも天下人らしい含蓄のある言葉だと胸に染み入ったものだ_____今この時までは。

 地方最大級の名士の家の次男に婚姻を申し込まれたと思ったら、後ろ盾は別の家と聞かされた日には人生を歎こうというもの。

 クーデターですか内乱ですか、いやあお盛んですね。ふざけるな。なにゆえ、本来無関係の人間までもがギャンブルのチップにされねばならないのか!いくらなんでも荷が重すぎやしませんかね?神は私に死ねとおっしゃるようだ。

 ああ、いや、問題なく進んでいても生還率は頗る低かったでしょうが。


 そんな訳で私、春日光は頭を抱えております。抱える頭があるうちに惜しんでおこうと、それはそれは念入りに。

 康司の子飼いを除いた新田、新田に傅く家々、後ろ盾となる家の内外問わずの反対勢力。実質的に周りのほとんどが敵。味方がいない。春日の家はまったくの役立たずであるし、康司の子飼いはあくまでも康司のものだ。

 加えて、表向きの婚姻の理由として康司は春日光に溺れていることになっている。しかも、どいつも、こいつもが、ろくでなし共はこぞって真実と見做してやがる。康司はぼんくらだと信じている。

 つまりは、この春日が嫌がらせや牽制の良い的になってる訳です。顔も忘れた幼稚舎の同窓生を誘拐され、人質にされたりします。春日の家の門下の者も虫食いが見られます。何度でも言おう。ふざけるな、と。

 「新田康司ィ!貴様の首を貰い受けねば、我らの示しが立たん」

 たまに康司に会いに行くと、自慢の薙刀で康司を切り付ける春日の門下生に遭遇するわ。その門下生がかつて胸の奥で想いを寄せた人物であったりするわで心労が絶えません。

 正直なところ、春日の為と名目を掲げた母に想い人と引き離されたことを考えると春日にさして未練はない。

 けれども、実利の面で春日を無視できない。悲しいことだが、光の援護を頼めるのは春日ぐらいしかないのだ。

 兄と慕った男性、初めて意識した男性。彼を篭絡して春日とのパイプを繋げる作業は筆舌に尽くし難い程消耗した。

 「へぇ、光はああいう男が好みなんだ」

 後に、戯れにパイプを壊しに掛かる康司を宥めるオプションまで必要だった。

 わかっている。こんなものではない。光だけで身を守れる筈もない。降り懸かる火の粉の大半を康司が払ってくれていることを。

 だとしても、これまでの過程が怒りを掻き立てる。康司は光にとって紛うことなき破滅を齎す使者だ。

 「君は俺を愛さなくてもいい。ただ、視界の隅に置いてくれれば俺はいっぱい満たされるから」

 手を取って話す康司。搾り出すような声が長く長く光の耳に留まる。

 驚いたことに、聞けば見た目遊び人の康司は童貞で、新田に虐げられてもいたようだ。名ばかりの息子。中々に辛そうな立場だ。

 同情も共感もしやすい相手だな。だからなんだ。康司は私の手を握るのが一番の楽しみ?だからなんだ。

 止めてくれ、お願いだから。もう誰かを好きになりたくない。辛いよ。

 あいつは酷い奴だ。自分勝手で、光の持っていたものをねこそぎ奪った。でも、康司のおかげで春日から出られた。すかすかの空洞を埋めてくれた。

 気付けば康司のことばかりが浮かぶ。光は康司を突き放す度に不安が積もって行く。いつか光は康司を拒めなくなるだろう。明日か明後日か、はたまた来年か。

 そのときは、どうすればいい。自分が自分でなくなる感覚が強い。怖くてたまらない。こんな私知らない。油断したら康司に縋ってしまいそうな腕を縛って眠るのが日課になった。

 『いつも光に優しい』康司が、勝手に寝室に訪れるなど一度もなかった。これからも有り得ないことだと笑いながらも、光は康司の訪れを望んでいた。

 崩れてしまう前に、噛み砕いてくれないか。康司に壊されるのが待ち遠しい。もう、そっと触れられるだけでは満たされない。元々、光は拘束されて生きてきた女だ。縛りが甘いと不安定になる。さっさと康司のものにされたくて仕方がない。

 どうかこれ以上想いが募らないように、ボロボロに、物のように扱って下さい。逃げられないように身体の奥まで深く深く、刻んで。

 全部康司の一部になりたい。駄目かな。



この先はR18になる予感しかしないので、とりあえず筆を置きます。・・・・・・どうしてこうなった。

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