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アスファルトの道にかかる家々の明かりに照らされながら歩き去っていく黒い背中を、祷は扉に手をかけたまま玄関の前で見送っていた。
「おやすみなさい。瓏衣さん」
とびきりの笑顔で呟く。
扉を開けて中に入り、ただいま戻りましたと大きな声で挨拶をして、祷はまっすぐに自室へ向かう。
ゆっくりと扉を開け、まず電気をつけてから扉を閉めると、勉強机の隣にある低い棚の上の、小動物用のゲージを覗き込む。
「ただいま、ふわり」
ゲージの中では小麦色の毛並みの耳の短い兎が主人の声に反応するように忙しなく周囲を見ては毛繕いをしていた。
愛らしい姿にくすりと笑って祷は手に持っていた鞄を机の上に置くと、制服のままふかふかの白いベッドに体を預け、携帯を取り出す。
開いた画面には映っているのは、先ほどまで一緒だった人が楽しげに誰かと話している姿を隠し撮りしたもの。
その人物は、飯綱瓏衣である。
「……ふふっ……」
見惚れるようにうっとりとした表情で動かない写真の中の瓏衣に微笑んで、祷はその画面を開いたまま携帯を胸に抱き込む。
「やっと見つけた……。私の、素敵で無敵な、王子さま……」
そして、まるですぐそばにいる恋人に囁くように、祷はそっと目を閉じて呟いた。
「……だーいすき」




