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「はぁ……! う、くっ……!」


 陽が地平線の彼方へすっぽりと収まり、やがて空に星が一つ二つと輝き始めた頃。人の姿が途絶え、夜闇に紛れ始めた運動公園の隅で、小太郎は木にもたれかかりながら体を蝕む痛みに耐えていた。

 いや、痛みというよりは体を蝕まれていく感覚そのも、というべきか……。一瞬でも気を緩めれば即座に体を、精神を、意識をすべて呑まれそうになる。

 といっても、何をしても体から消えないコレに、ほんの少しの隙をつかれて、さっきのような失態を犯す羽目になったわけだが。そしてあまつさえ、その現場を瓏衣たちに見られるとは。


「……っはは。……マジだせぇな……。うっ……!」


 足先からなにかが這い上がってくるような、あまり好ましくない感覚が襲いくる。無理やり木に頭をぶつければ案の定少しの血が滴ってくるが、正気を保つには十分で。痛みはするがそれでも視界が、頭の中がほんの少しだけスッキリした気がした。


「まーだ呑まれてなかったのか。がんばるねぇ」


 後ろから小バカにするような声がして、小太郎はやっとの思いで目線だけを横に滑らせた。

 するとやはり、すぐそばに長い足を曲げて不良ヤンキーのようにしゃがみこみ、興味深そうにこちらを見ている男がいた。


「……また、てめえか……。堕天使……!」


 昨日の帰り道、千鶴と別れた帰り道に出くわし、そして隙をつかれ、無理やり影堕ちに引きずり込んでくれた張本人。


「そーやって我慢すンのもそろそろ疲れたろ。一思いに呑まれちまいなって。楽になるぜ?」


 黙らせようと振り上げた拳に力なく、男に掠りもしない。


「だま、れ……! 失せろ……!」


 言いながらも、体に力が入らなくなってきて、小太郎の体は芝生が茂る地面に吸い寄せられるようにゆっくりと倒れ込む。

 油断した。あの日、瓏衣が先に突っ走って帰った日。その帰り道でまさか堕天使に遭遇し、まんまと影堕ちさせられてしまうなんて。

 それだけ、あのときの自分は気を落としてしまっていたのか。


「こんなところで遊んでいたのかい?」


 不意に、金髪の堕天使とは違う声が聞こえた。初めて聞いた声だ。条件反射でそちらを向こうとしたが、体は鉛のように重く、思うように動かない。

 かろうじて視界の中には入っていたが、それでも見えたのは金髪の堕天使と同じ白い服装を着込んだ長い脚。


「いやあ、カッコウの獲物がいたんでアイツ《・・・》への嫌がらせついでに堕としたんだけど、案外しぶとくってさァ。素直にならずに抵抗してンのよ」


 少しの間会話が途絶えて、こちらを見ているのか視線を感じた気がした。


「どうせ、あの子の目覚めはまだこれからだ。焦ることはないよ。それより、一度戻ってきてもらえるかな。ベリアル」

「へいへい。タイショー殿」


 感じていた視線が消えたかと思えば、長い脚が踵を返して去っていき、やがて空気に溶けるようにして姿を消した。すると、しゃがみこんで小太郎を見下ろしていた堕天使が腰を上げて、そのあとを追って同じように消え失せた。

 満足に動かせない体で、追いかけることなど当然できるはずもなく、いつの間にか小太郎の意識は途切れていた。





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