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 瓏衣たち三人の家はそう極端には離れていない。瓏衣と千鶴の家はお互いに近くにあるが、二人が住む区から小太郎の家までは少し距離がある。

 大学から歩いて、駅を東に十分ほど過ぎたところで分岐し、さらにもう十分ほど行けば二人の家があり、もしくは北東に二十分ほど進めば小太郎の家だ。

 なので、少し遠回りにはなるが、千鶴の家は小太郎の帰路の通り道である。


「送ってくれてありがとう。またね小太郎くん」

「おう。じゃあな」


 小さな門の前で手を振る千鶴に小太郎もひらひらと手を振り返して、踵を返す。

 見送る千鶴はその背中に差す影に再び黒いモヤの錯覚を見て、咄嗟に彼を呼び止めた。


「小太郎くん!」

「あん? どしたよ」


 応えてこちらを振り返る彼の様子はいつも通りだ。千鶴は安堵しながら首を振る。


「ううん。何でもない。またね」

「ああ」


 今度こそ千鶴も彼に背を向け、玄関扉の奥に消えた。

 小太郎はポケットに手を突っ込んで歩き出す。

 しかし歩くほど、小太郎の表情は暗くなっていく。


───ダメだ。戦えないお前じゃ危険すぎる。千鶴を家に送ったら、お前もすぐに帰るんだ。


 先ほどの瓏衣の言葉を思い出して、ムカつきと歯がゆさに小太郎を奥歯を噛んだ。

 なぜ、瓏衣のなかで勝手に自分まで守られる側に振り分けられているのか。今まで一緒にバカやって、一緒に不埒ものを叩きのめしてきた自分より、なりゆきで出会ったばかりの者達を戦う仲間だと言うのか。ああ。腹が立つ!

 早く帰って夕飯まで寝よう。そう考えて、橙色の空の下、住宅街を進む小太郎の足が早くなる。

 だが突如、小太郎の足が止まった。視線と、気配を感じた気がする。


「誰だ!」


 威嚇するように言いながら、後ろを振り返る。見渡すと、住宅街の角から誰かが出てきた。


「なァんだ。バレてたか……」


 姿を見せたのは長身の男だった。輝く金髪を後ろに流し、蜂蜜色の双眸はややタレ目である。何がおかしいのかにやにやと緩んでいる口元はタバコをくわえていて、スーツを模しているようだが大幅に着崩されたその服装が男から軽薄な雰囲気を漂わせている。


「んだてめぇ……」


 見たところ、女ウケのよさそうな、しかしいけ好かないそのツラに覚えはない。睨んでやると、男は苦笑いしながら肩を竦めた。


「おーおー、コワいねぇ」

「誰だか知らねぇが俺は今虫の居所が悪ィんだ。とっとと失せろ」


 男はニヤついた顔を崩さず、煙草を手に持ち、煙を吐き出す。


「まあ聞けよ。お前、飯綱瓏衣ってガキ知ってっか?」


 小太郎はわずかに目を丸くするも、今度はより一層男を睨みつけた。なんとなく分かった。きっとこの男は、アイツの敵だ。


「だったらなんだ」


 すると、男が愉快そうに口元を歪め、その背中に黒いモヤが現れる。それは大きくなり、輪郭を持ち、やがて形を成した。

 目を引くそれは、大きく黒い、翼。


「っ! てめえまさか───!」


 男の双眸が、光った。

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