閑話
はっと目を覚ますと、私は衆議丁の自室にいた。心路も一緒だ。背中を向けて、座っている。こちらを見ていない。満点だ。
「満点だよ、心路」
やっと心路が振り返る。仏頂面で。百点じゃ、点数付けられないね、と思った。
「で、あんた。ここに来たからには、冒険してもらう必要があるんだけど」
「そうだね。のんびり暮らしていたいわけじゃない」
「とりあえず、戦に出るしかないな」
「痛くないかな」
「痛いだろうな」
「じゃあやだな」
「嫌なんだ?」
本心を見た、と言わんばかりに心路が微笑む。あざ笑うのではない、微笑んだんだ。
「でも、一回ぐらいは出とこうかな。死なない程度に」
「戦だから、死ぬときは死ぬぞ」
「死ぬのかな、私」
「さあ」
「なんとなく、あなたが守ってくれる気がしてる」
「どうだか」
とにかく、と心路が立ち上がった。
「林冲さんのところに行こう」
「さんってつけるんだ」
「悪いか、馬鹿」
手を差し伸べられ、私はそれを取る。
「万里、だよ」
「何が」
「私の名前」
「知ってる」
「知っててね」
「知ってる」
ぎゅっと手を握る。この人と、このよくわからない世界で、あんまり痛みもなく、死にたいなと思った。どうしてそんなに死にたいのかは、あんまりわかんないや。