温床
軽やかな足取りでは、誰も輪唱できない。
同じ水から来ているのならば、あの山に背をするのは腐敗だ。
私に割らせてください。いつも丁重にもてなしました。
けれどもいつも川はふたつで、それを超えることはどんな、
重圧よりも父親譲りの寂しい森を知ることになるのです。
私はあの時代の夕焼けが好きでした。
それは工事中の淡泊な街に映えた、窓のない家にも、
窓が陽射しを見ない家にも、
洗濯中は気分が優れない。いつも吐気が充満します。
夢のなかでしか人間も人形も飛びません。それは落胆です。
父が許された書庫にも、そのまた父親が見ていた木の薄く
色の濃い、階段にも、
音楽に反故された私にはいつも幽霊のように萎びたものが想像された。
死体という死体で埋め尽くされていたはずです。
きっとそれは丁寧に区画されていた。けれども、全ては上下に、
僕と私の想像を超えるほど巨大な書物の前に、
僕はあまり仮定を知りませんでした、構造上の理由で。
だから元素記号を百まで覚えた。
だけれども僕も科学者を選ばなかった。あとは記憶が答えてくれます。
どちらを選んだって、水はいつも飲むことができるのです。
緩い輪のように、清滝の地に浮かべた砂の塔みたく、
たとえ死体のように冷たくなっても。
私はあの時代の夕焼けが好きでした。
それは工事中の淡泊な街に映えた、窓のない家にも、
窓が陽射しを見ない家にも