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年上のお姉さんと歩きます

 再び寒い外へと出た僕とサヤカさんは手を繋いで歩いている。

 さすがに少し慣れてきたけど恥ずかしいのは変わらない。この柔らかい感触、あたたかい手、慣れてしまったらこのドキドキも無くなってしまうのかなと思うと寂しい。

 僕がトイレから戻ると、サヤカさんは直ぐに立ち上がって僕の手を引っ張った。レジで会計を済ませて、観覧車に乗ろうよと笑顔で言った。

 海沿いにあるあの大きな観覧車のことを言っているのかな。そういえば一回も乗ったことがなかった。だってあの観覧車はデートコースになっているから。


 あの観覧車は一周するのにニ十分かかる。そんだけあったら何かできるだろう。いったい何をするのかは僕にはよくわからないけれど、外からは中の様子が見えないようになっているみたいだから、もうそこで愛を確かめろよと言っているようなものだ。

 そんなことは知らない観光客なんかはカップルにまじって乗ったりするから、気まずそうにしながら長いニ十分を過ごすことになる。

 列ができていてカップル達が並んでいたら気づくだろうけど、列がなくて直ぐに乗れたら気づかない。

 そんなのカワイソウとしか思えない。お金の時間と無駄だ。あと心も傷つくかもしれない。観覧車に乗るときは注意をしないといけないね。


 サヤカさんがぎゅっと手に力を入れた。痛くはない、何かを確認するかのようにぎゅっとしたみたいだ。だから僕もぎゅっと手に力を入れた。そうしたら横からふふという声が聞こえてきた。

 喜んでくれているならそれでいい、僕は幸せな気持ちになれるし気持ちがいい。

 前方に横断歩道が見えてきた。信号はチカチカしていて、青から赤に変わってしまった。一斉に車が動き出す。タクシーやバスや乗用車やバイクやトラックが走っていく。

 僕とサヤカさんは手を繋ぎながら信号が青になるのを待っている。この時間もとても幸せだ。


「ねえ遥介君」


「何ですか?」


「遥介君はさ、学校で好きな人とかいないの?」


「いないです。僕は年上のお姉さんにしか興味がもてないんです」


「同級生の女の子も可愛いと思うんだけど。毎日一緒の空間にいるのに意識しないのね」


「何も無いです、好きになるとかそんなこと。友達はどの女子が可愛いかよく言い合っていますが、僕はそれがどうでもよくっていつも欠伸をしています」


「あら酷いね。そんな態度じゃ女の子に興味がないと思われるよ」


「いやそれは大丈夫です。僕が年上が好きなことは友達は知っていますし」


「そうなんだ、言っておいたほうが楽だもんね。それよりさ――――」


 車が一斉に止まりだした。信号がチカチカして赤から青に変わる。信号待ちをしていた人達は皆歩き出す。僕も歩く、サヤカさんと一緒に歩く。

 回りの人からしたら僕とサヤカさんはどう見えているのだろう。カップルに見えているかな、それとも先生と生徒に見えているかな、姉と弟に見えていたら嫌だな。

 そんな事を考えていたらまたドキドキしてくる。年上のお姉さんとデートをしているのがいけないことのように思えてくる。だから興奮してくる、欲望を押さえることができない。


「遥介君? ねえ聞いてるの」


「あっ、はい、何ですか?」


「話はちゃんと聞かないと、授業中もぼーっとしていて先生の話を聞いてないでしょ」


「それは聞いてますよ! テストの時に困りますから」


「私の話は聞いてくれないの? 授業はちゃんと聞くのに」


「サヤカさんとのお話は緊張するしドキドキするから、たまに心が奪われてぼーっとするんです」


「私は遥介君の心を奪っているの?」


「……はい。サヤカさん魅力的ですから心を奪われます」


「へーそうなんだ。私はまだ何もしてないと思うんだけどね」


 何もしていなくてもサヤカさんは魅力的で、僕が勝手に一人で色々妄想して興奮しているんだ。僕は変態だ、恥ずかしくて今すぐ何処かに隠れたい。でも手を繋いでいるから隠れることはできない。

 そうやってサヤカさんは、羞恥心を僕に与えているのだろうか。誰か知らない人が行き交うこの道で、大衆の面前で、この変態っ子を見てやってよとS的な攻撃をしてくる。

 その攻撃によって興奮しているということは、ひょっとして僕はMなのだろうか。そんなの考えなくてもわかるだろう、僕の頭のなかに思い描いた欲望とはいったい男だったのか、それを思い出すとすぐにわかることだ。


 また僕の顔は赤くなってると思う。顔に出やすいから、だからすぐにバレてしまう。そんなんだからババ抜きとかやっても負ける、嫌いな人をきかれてもバレる、エロいことを考えていてもすぐにわかる。

 だから昔からからかわれるのかな。サヤカだけからかってるわけじゃない。いやサヤカさんのはS的なやつだからいいんだよ、むしろもっとしてもらいたいよ。いじられキャラで、それに満足しているから、つまりそれはMだということになるのかな。

 もう別にそれは何でもいいんだけど、サヤカさんのことが好きという気持ちはどんどん膨れていく。


「ねえサヤカさん」


「なーに」


「僕のこと気に入ってくれましたか?」


「遥介君は可愛くていい子だからね、また会ってみたいかな」


「……本当ですか? 嬉しいです」


「本当にそう思ってるのね、顔が赤いもん。ふふふ、イタズラしたくなっちゃう」


「僕は何でも受け入れますよ」


「そんなに心を許してもいいの? 私はそう言ってくれて嬉しいけどさ。開けてはならない扉を開けるみたいで」


「開けていいですよ。そのために僕はサヤカさんと会ったんですから」


 胸のドキドキは物凄くて苦しいぐらいだ。それぐらい緊張と興奮がグルグルと回っている。そこにいけないこと、恥ずかしいこと、禁断の何とか、そんなワードも飛び込んでくる。

 それが悪いとは思わない。皆もやっているでしょ、これとは別の形かもしれないけど誰にも言えない秘密のこととかあるでしょ。だから別に気にすることなんてない。

 僕はまだ年齢的には子供だけど、女性に興味津々だから年上のお姉さんが大好きだから、何より中学生男子には溜まりに溜まっているだろう欲があるから。


「じゃあさ、私とキスしてみる? 間接じゃなくて直接」


「……したいです」


「ふふふ、顔が赤くて遥介君可愛い」


「だって恥ずかしいから、嬉しいから。サヤカさんから誘ってくれたことが」


「可愛い遥介君の、可愛いこの口を私が奪ってもいいの? 初めてのキスが私でいいの?」


「……はい、もう決めましたから。僕をどうしてくれても構いません」


「どうしてもって……君は相当な変態ね」


 サヤカさんにそう言われて興奮している自分がいる。僕はどうやら本当に変態らしい、ただの変態ってだけで仮面を付けて悪いやつを倒すヒーローとかではない。

 でも世の中変態だらけでしょ。だからさっきもここは日本なのかってぐらいカップル達がイチャイチャしていた。そんなの家でやれと思ったけど、今思えばあれは皆に見せつけたいだけだったのかな。見せつけたいというより見られたい?

 ああ皆変態だったんだ、仲間だったんだ、何だか急に親近感というか仲良くなれそうというかそんな気がしてきた。


 恋愛というやつは少女漫画のような、キラキラとしていて甘酸っぱいものばかりではない。

 昼ドラのような最近流行った不倫ドラマのような、ドロドロしていて刺激を求めるものばかりではない。

 人それぞれの恋がある、人それぞれの愛がある。それがキラキラしてるかドロドロしてるかその他なのかの違いだけだと思った。

 僕の恋愛はどうなるのかな。そもそも出会い系サイトで出会った二人はそこに恋や愛はあるのかな。

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