表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/14

年上のお姉さんに会いたくてしょうがないです

 サヤカお姉ちゃんと出会ったあの日から今日で何日経っただろう。

 一週間、二週間、三週間……一ヶ月ぐらいかな。メールはするけど電話はまだ一回もしていない。仕事が忙しいらしくてゆっくりお話をする時間もないのだ。だからただ会いたい会いたいと馬鹿みたいに、一方的に押し付けるのはダメだ。声を聞きたいけど、会いたいけど、我慢するしかない。

 それでも僕はずっと愛されている感じがする。側にはいないけど、会えないけど、次に会うときまでにやっておくようにと言われた宿題をこなしているから。スマートフォンを取り出そうとして、一緒に出てきた小さな紙にそれは書いていた。

 だから僕は毎日宿題をする。学校で出される宿題とはまた違うものだけど、ちゃんと結果を出さないとサヤカお姉ちゃんにこの頑張りを見せられない。宿題よく頑張りましたと誉めてもらいたい、そのために僕は今日も……。


 季節は秋から冬へと変わっている。寒いと人肌が恋しくなる、誰かに触れたりくっついたりしてあたたかさを得る。

 この寒空の下、何人の人がそれを求めているのだろう。僕も求めたい、一人でこうしているには寂しくて虚しい感じがするから。布団のあたたかさと人肌は全然違うから。


 僕はテーブルの上に置いたスマートフォンに手を伸ばす。布団から手を出しただけで寒い。でも全然眠れないからしょうがない。

 窓から外を見ると真っ暗で今は皆が眠っている時間帯。そんな夜中に僕はあたたかさが欲しくなって、あの日の出来事を思い出して、優しくされたい愛されたいと思い続けている。

 溜まりにたまったこの欲を押さえることはサヤカお姉ちゃんにしかできない。宿題でも少しだけ押さえることができるけど、それはその時だけで少し時間が経つとまた欲が甦ってくる。

 欲は脹れ続ける。どこまでもどこまでも、破裂することはなく膨張していく。宿題は僕をよりおかしくする、より強く欲を求めてしまう。

 欲深い僕の体が熱くなる。熱くて熱くて、燃えてしまいそうだ。


 苦しいし辛いし我慢していて切ない。でもこれを耐えないといけない、耐えて耐えてそのことを誉めてもらうその日まで。その日はいつだろう、明日かな明後日かな明々後日かな。

 僕は受信メールを見ている。親からのメール、友達からのメール、いっぱい並んでいるけどここには用がない。僕はサヤカお姉ちゃんのフォルダーをタップする。

 するとそこにはサヤカお姉ちゃんから届いた、可愛くて綺麗でエロいメールがいっぱい並んでいた。今はこのメールだけが唯一の繋がり。一つ一つの文字がとてもキラキラと輝いているように見えた。

 僕はあの日まで遡ることにした。


『今晩は、メール遅くなってごめんね。

 今日は楽しかったね、遥介君の可愛い顔を色々見れて嬉しかったよ。今日は時間がなくて途中で終わったけど、次はゆっくりじっくりが良いかな?』


『おはよう、これから仕事だよ。

 遥介君は学校かな? しっかり勉強してきてね。良い子にしていたらまた会えるから宿題も忘れないようにね』


『今晩は、今送られてきたメール見たよ。

 遥介君相変わらず可愛いね、とくに四つ目が私は好きかな。全部可愛いから好きだけどね。最高だよー、よくできました。

 じゃあ、次の宿題を出すよ』


『何日か返せてなくてごめんね。でもこの前送られてきたものを見て、私の欲はまた出てきたから。

 宿題はできたかな? 学校のじゃのくて私からの。もし出来ていたら、今すぐ提出しなさい』


『返信早いね、ずっと私からのメールに集中しているの? ほんと遥介君は変態だなあ。

 今回も良いね! ていうか頑張りすぎじゃないかな、宿題出してる私が言うのもアレだけど。

 可愛いなー、また会いたくなってくるなー、仕事さえ落ち着いてくれたらすぐに会いたい』


『気遣いありがとう、疲れはあるけどやりがいがある仕事だから楽しいよ。

 うん、そういうことかな。この仕事のストレスを遥介君に癒してもらう。それとついでに欲もね。

 それより遥介君に送りたいものがあるんだけど住所教えてくれるかな?』


『また返信できなくてごめんね。寂しかった? 私は送られてくるメールで寂しくなかったけど。

 真面目に宿題をして偉いね。あんなことまでして大丈夫だったの? ちょっとそこだけ心配。

 ていうか遥介君とは違う子がいたけど、あの子はお仲間かな?』


『へーそんなことがあっあんだねさようならしたあとに。びっくりしたんじゃないの?

 何か三人で楽しそうね、この女の子可愛いじゃん。まぁ私にその趣味はないから欲は出てこないけど。この子はあっち系なのね、可愛い顔だから遥介君と一緒に仲良くしたいけど……。

 ちょっとお姉さん嫉妬しちゃうな!』


『メールありがとう、そんなに謝らなくていいよ。私は怒っていないから。

 でも言うこと聞けなかったのね、約束破ったのね、私と会う時まで我慢する約束だったのに。それが少し悲しいの、ただそれだけ。

 罰として難しい宿題を出すから。それで許してあげる』


『メールいつもより遅かったね。宿題に手間取ったのかな? それでもしっかり提出するとこはさすがね。偉いよ遥介君。

 難しい宿題なのによく頑張ったね。こんな難しい宿題を出すなんて私は酷い人間ね。ちょっとやりすぎたかも、ごめんね。

 遥介君とこの子が可愛い。二人とも笑顔が素敵、そしていじめたくなる』


『えっ、この子いじめてほしいの? 私のことを何も知らないのに? 相当な変態ね、でも魅力的ね。

 うん、もちろん遥介君もいじめるよ。そういうの好きでしょ? わかっているんだからね。

 寒いからちゃんとお風呂であたたまってね。あたたかい格好もしてね』


『こんにちは、仕事中だけど今しか送れないような気がするからね。

 宿題頑張りすぎじゃない? 私に喜んでほしいってのはわかるけど。学校の勉強も大事だからね、遥介君受験生ってこと忘れてないよね。

 成績下がると悪いから、ちょっとそういうのわかるもの見せてくれない?』


『おそようございます。今日は仕事休みー、そっちは授業中かな?

 送ってくれたの見たけど特に影響はなさそうね。遥介君賢いじゃん、賢くて可愛いなんてヤバイね。そんな子があんなことしてるなんてねえ、ふふふ。

 宿題はちょっとお休みしてね。大人しく良い子を演じておくように。これも宿題なのかな』


 メールを読み返して改めて思ったのは、サヤカお姉ちゃんとの約束を破ってしまったことが悪いことだということ。我慢の限界だったんだ、あのままでは僕は僕をコントロールできなくなってしまうと思ったから。欲は爆発寸前まできていた、それをおさめるにはしょうがなくって。

 あの日目撃してしまった二人に次の日早速話しかけた、僕も仲間だよと言うとびっくりしたけどすぐにそっかと受け入れてくれて仲良くなれた。

 そこから三人だけの秘密が出来て、今まであまり話したことがなかっけどよく話すようになった。

 自分がいかに変態なのかを言い合ったり、友達はあっち系だから僕のほうをよく見てきたり、元バスケ部のキャプテンは二人ならいいよと何がいいのかわからない発言をしたり。とにかく学校が楽しくなった。

 もっと早く仲良くなりたかったな。あと数ヵ月で卒業だからさ。


 僕は熱くて余計眠れなくなった。眠ろうと思っている時にそんなことを考えたら逆効果だね。でもこの時間は静かで、何でも暗闇に隠せるし、部屋には僕一人だからそういうことを考えたくなる。

 ムラムラっていうか、モヤモヤっていうか、頭の中にはサヤカお姉ちゃんがいて笑顔でこっちを見ている。そして一枚一枚、服を脱いでいく。

 ああダメだ駄目だ、このままじゃ本当に眠れない。眠れないまま朝が来たら学校がキツそうだ。授業中に寝てしまうかもしれない。


 僕は何も考えず、眠ることだけを頑張るためにスマートフォンを元あった場所に置こうと思った。しかしブルブルと震えた。誰かからメールが来たみたいだ。

 タップしてメールを確認すると僕の心は一気にドキドキした。眠ろうと思ってたけどそんなのどうでもよくなった、授業中に寝ればいいんだよ怒られたらそれで済むんだから。


『こんな遅い時間にごめんね、でも早く言いたくってメールしたの。

 今度連休あるでしょ、土日月って。その連休で私と旅行に行かない? 遥介君と二人でね、観光したり美味しいもの食べたりお風呂に入りたいよ。

 考えておいてね!』


 サヤカお姉ちゃんからのメールは旅行のお誘いだった。久しぶりに会える、あの日会った時以来久しぶりに会える、胸が痛いそれぐらいドキドキしている。

 僕は急いでタップする。顔は見えないけど嬉しくて笑っているだろう。そして興奮もしている。早く手を繋ぎたい、頭を撫でられたい、体を触られたい、宿題の成果を試したい。


『絶対に行きます! ちょうどその連休親が旅行に行くから僕が何をしてもバレません。

 今から楽しみです。まだ二週間もあるから辛いですが、楽しみができたので頑張れそうです。

 嬉しいから写メ送って良いですか? サヤカお姉ちゃんに見てもらいたいです』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ