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魔剣姫と狂愛の魔女   作者: 澪木 たま
居候編
8/15

7:何歩か前進!

ふわっ、と光が灯った。

私の中から僅かに魔力が抜け出るのと同時に、目の前にあったはずの石が、黄金色に輝いていた。


「やっと、できた・・・」


私は成し遂げた達成感で胸がいっぱいになり、思わず満面の笑みを浮かべ、そのせいでフィリアちゃんが恍惚な顔で、鼻血を出して落ちてしまった。







時は、数週間前に遡る。


魔力と体力と精神力を回復してから、私は色々と実験をしてきた。


ミレディさんから魔法に使う呪文を教えてもらい、許可をもらった物体にだけ付与魔法を掛けまくった。

その結果、ただの鉄屑が触ると真っ赤なドロドロ(モザイクを掛けることを推奨します)になったり、大きな音のする場所を殴り始める薪ができたりした。

そのせいでバルドさんが酷い目にあった。


そう、あれは三人で談笑していた時だった。

バルドさんが、食物を消化する際に発生するガスを、大きな音で体内から排出した(超オブラートな表現)。

ミレディさんがしかめっ面をし、私が爆笑していたとき、私の部屋からあの薪が飛んできて、バルドさんのお尻を叩き始めたのだ。

最終的には、バルドさんが薪を素手で叩き割ったが、余りの出来事に流石のミレディさんも笑い始め、収拾がつかなくなった。

・・・プクク、あれは素晴らしかった。


閑話休題(それは置いといて)


今回の実験で様々な事が分かった。

まずは、呪文。

こちらの世界に来てから使っている言語は、日本語とは全く違うものである。あえて言うなら、青森弁+フランス語的な。訳分からん。

一応、体の持ち主さんの母国語らしいので違和感なく喋る事ができている。

そして、肝心の呪文だけど、な・な・なんと日本語なのだー!正確には古代語らしい。古代は日本人が支配してたのか・・・?

母国語だからなんの問題もなく呪文が使えて、ミレディさんは結構びっくりしていた。発音が難しいんだそうです。私には逆にこっちの言葉の方が難しいよ。


さてさて皆さん、『呪文は私の母国語だ!なんて世界は私に都合よく出来ているんだろう!』


そう思ったとしたら、大間違い。


私が付与魔法を掛ける場合は、指示を正確に文章にして、一息で喋らないといけないのですよ。

例えば、 小石からルビーを創るときは『???と同じくらい紅くて澄んだ色で、今の小石と同じ形、大きさの宝石』とか何とか言わないといけないのです。???の部分は、具体的なルビーと似た色の物を入れます。最後に、名付けの儀式で『ルビー』と名付けると、完璧なルビーになります。ちなみに、呪文の中で『ルビー』を入れたり、途中で息継ぎをしても必ず失敗します。(ドロドロの鉄屑はルビーにしようとした物のナレハテです)形や装飾は、しっかりしたイメージと指示があれば変更可能です。


デメリットの方が多いじゃん!


いえいえ、もう少しだけ良いことがあるのです。


そう!歌いながら呪文を唱えると魔力消費が5分の1になるのです!これが結構ありがたいんですよー。

考えてもみてくださいよ。私が竪琴に無意識に付与魔法を掛けたとき、歌ってなかったら。今頃私は・・・ガクガクブルブル


その他、付与魔法が掛けられる「生きていない物体」の定義なんかも分かったんですが、それはまた後程。


こうして、私の付与魔法について大まかに理解した所で、それを完全に証明するための実験を始めた。

そう、石から黄金を作るのだー!

手頃な石を手にとって、呪文を考える。「形とか大きさはこのままでいいとして・・・色って、どう表現すればいいんだ?」

早速けっ躓いた。

金色って、鉱石の金以外に有るのかな?う~んう~ん。

唸りながら視線をずらすと、窓とその向こうにある景色に目がいった。深い青空と黄金のように輝く太陽。あぁ、今日もいい天気だなぁ・・・ってちょっと待て。今、何か重要なことを言った気がする。さっきのセリフを再生だ。深い青空と黄金のようなた・・・「黄金」があったじゃないか!


『太陽の光のような色で、今の小石と同じ形、大きさの鉱石』


即興のメロディーにのせて呪文を唱える。すると、石の色が徐々に薄くなり、眩しく輝き始めた。次は名付けの儀式。


『汝に名を与え、この世の物としようぞ。』


『汝の名を「金」とする』


そして・・・冒頭の部分に戻る。


ちなみに、しばらくして復活していたフィリアちゃんが、『ごちそうさまでした~』と言って、また鼻血を出していた。貧血にならないのかなー?


ひとまず、付与魔法に関しては一歩進んだ感じかな。これからはもっと実用的な物を作っていこう!


・・・と覚悟を決めたところで夕飯の時間になりました。

今日のメニューは、ロリロリ鳥の果実酒煮込み、豆と山菜のサラダ、キノコのスープ、デザートは蜜柑に似ている果物でした。美味しすぎて頬っぺたが落ちそう!

黙々とロリロリ鳥を食べていると、バルドさんが話し出した。


「そのロリロリ鳥はな、昨日俺が仕留めてきたヤツなんだ。この鳥の習性が可笑しくてな。小さい女の子が大好きで、いつも追いかけているんだ」


名前!名前つけたヤツ誰だ!?っていうかこんな鳥を創った神様はどういう神経をしている!?


「いやぁ、しかも」


バルドさんが、ニヤァと笑った。い、嫌な予感がする!


「ショタショタ鳥って呼ばれている鳥がいてな。ロリロリ鳥と見かけがそっくりだけど色が正反対っていうやつで、これまた習性が面白いんだ。なんと小さい男の子を追いかけるのが大好きな鳥なんだ」


・・・もう何も言うまい。


「食事中になんて話をしてるんですか。ほらシルヴィも引いてるじゃないの」


ミレディさんがバルドさんを叱ってくれた。けど、手に持っているのは何ですか。なんだか、トゲトゲした塊のように見えるのですけど。アレですか、モーニングスターという武器ですか。・・・え、何に使うんですか!?いやー、まさかバルドさんに使うなんてことは・・・振りかぶってる!?振りかぶっちゃってる!?


「ミレディさん、や、止めてください!!バルドさんが死んじゃいます!」


「あら、いつもタメ口にしなさいって言ってるのに、シルヴィちゃんはまだ敬語を使っているのかしら?それなら貴女にもO・HA・NA・SHIをしないといけないわね~」


ニッコリと笑うミレディさん。目が全然笑ってない。

とばっちりを喰らったヤバイ緊急事態(((汗


「分かったから止めてあげてよお母さん(・・・・)。そう!今日はね、なんと石を私の付与魔法で金に変えたんだよ!」


途端に機嫌を直してにこにこするミレディさん。必殺技『お母さん』を出して、更に話題転換をしたよ。バルドさん、貸し1ね。


「バルドは後でお話し(・・・)をするとして。シルヴィちゃん、とうとうできたのね!お母さんもとっても嬉しいわ♪」


バルドさん忘れられてなかった。御愁傷様。


こうして、ミレディさんやバルドさんに今日の出来事などを色々とお喋りしているうちに夜が更けていった。


普通の人にとっては当たり前の毎日でも、前世の記憶を持つ私にとっては、心暖まる日々だ。バルドさんとミレディさんに拾って貰えて、本当に良かった。

そして、私はいつの間にか隣にいたフィリアちゃんと一緒に暖かいベットで眠りについた。










***************







満月が煌々と辺りを照らし、世界を完全な暗闇に閉ざされないようにしている。


しかし、深い森の中には、太陽と比べて弱々しい月光が射し込むはずもなく、夜行性の動物でも目を凝らさなければならないような黒に覆われていた。


そんな所に、時々躓きながらも懸命に走っている小さな影がいた。その少し後ろでは巨大なモノが夜の静寂を破って恐ろしげな咆哮をあげている。小さな影は、それでも止まらずに、少しも止まらずに、走る。


『ハッハッ・・・ははうえ・・・』


余りにも頼りない小さな影に、月は、光を弱めて敵から見えないようにしてあげることしかできなかった。




大変お待たせ致しました!

活動報告にも書きましたが、約2週間で更新する予定です。詳細は活動報告を見てください。



さてさて、謎が増えるばかりですが、これからどうなるのでしょうか・・・。

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