番外編 / DOKIDOKI☆質問コーナー♪
感想ありがとうございました。
簡単ではありますが、戴いた疑問にお答え致しました。
お楽しみいただければ幸いです。
Q / 娘売り払う様な貧乏貴族になんで使用人が居るのでしょうか? 娘を売り払う前に使用人を解雇するのが普通じゃないんですか? (母様ラブ会員25番 一般市民枠女)
A / 貴族だからです。
貴族とは。
他者に仕えて生きる存在だ。
此の国では、中流階級を名乗るにも先ず使用人を一人か二人は雇わなくてはならない。勿論、中流であるならば住み込みではなくても許されるが、通いであるならやはり二人は必要だろう。でなければ、中流階級を詐称する身の程知らずと爪弾きに合う事請け合いだ。一般市民である中流階級ですらこうなのだから、上流階級……所謂貴族と呼ばれる面々に於いては、使用人は最早空気のような存在なのだ。
在る事に違和感を感じず、無ければ生きていけない。
そう云う、存在なのだ――――――貴族とは。
「其れに、跡取りの男児だったら大切にもされるけれど、女児なんて上級家具の様な存在だもの。血が繋がっているから使用人を使う権利はあるけれど、自分の意思なんて無きに等しいのよ?」
フルウがそういうと、目の前で畝作りをしていた少女は鋤を地面に立て、思い切り顔を顰めてうげえと小さく呻いた。
此処は地下の村。
女達の避難場所。
彼女達が母と崇める存在が作り出した、温かく優しい箱庭だ。
最古参と云って良いだろうフルウは、此の箱庭の長の様な役割を果たしていた。勿論、同時期に助けられた女性は多いのだが、貴族階級の女子にとって『治める』と云う事は酷く難しい仕事であった為、多少なりとも適性のあるフルウが表に出る事に自然となっていったのだ。今も新入りである少女と一緒に、フルウは畑仕事をしていた。畝作りをしながら他愛のない言葉を交わしながら、此の地の事について学んでいく。其れには、此の箱庭の自然を満喫でき、大きな音も無い此の仕事が一番適しているからだ。
「でも、貴族のお嬢様って高慢ちきですよね?」
彼の伯爵家に合法的に見せかけ不当に拉致されて来た女であるにも関わらず、珍しく労働者階級出身である少女は、上流階級専門の店のテラスから働く人間を目にした途端に嫌なものを見たとばかりに顔を背ける着飾った少女達を思い起こして云う。と、同じ様に鋤を持っていた手を休め、フルウはそうねえと困った様に笑った。
「周り中に傅かれて、着飾る事がお仕事です……って云う生活に違和感持たない様に育てられるのが貴族の婦女の主流だからかしら。愚かであるのは以ての外だけれど、賢い……違うわね、自分の意思持つ婦女は敬遠されてしまうのよ」
ざっくり、と黒い土が掘り起こされる。
「敬遠されると如何なるんですか?」
労働者階級もまああまりそう云う処変わりませんけれどね、と笑いながら問えば、フルウはそうねえと呟いて鋤をふるった。
「結婚できないから、路頭に迷うかしら」
ざっくり。
音を立てて土に埋まる鋤を其の儘に、少女ははあ?と素っ頓狂な声音を上げる。
「なんで結婚出来ない位で路頭に迷うんですか!?」
働けばいいじゃないかと続ければ、だってと困った様にフルウは笑った。
「働いてはいけないのだもの」
呆然と立つ少女に苦笑を向け、フルウはあのねと言葉を継ぐ。
「貴族の子女は、働く事を許されていないの。女主人として采配を振るう為の勉強はしているけれど、実質は家政婦が取り仕切るから、奥様の仕事は旦那様や家の評判が上がる様に慈善事業をしたり、お茶会に出向いたり……其れくらいね。だから、着飾る事に心血を注ぐのよ。上手に着飾れないで結婚適齢期を過ぎた婦女は恥晒しだもの」
「恥、晒し!」
少女の顔が盛大に引きつる。
「私、労働者階級ですから貧乏でしたけれど! 周りも貧乏でしたけれど!!! でも、結婚出来なくておばあさんになった人とか普通に面倒見ましたよ? 助け合って! 独り身だってなんとかやっていけるもんですよ!?」
因みに私も独り身貫く予定でした! と豊かな胸を張る少女に、フルウはくすくすと笑い声を上げる。
「そうよねえ。私も、お母様の御力で此の村に来て、色々伺って吃驚したもの。今迄の自分が此れ程少ない選択肢の中で生きてきたなんて思いもよらなかったわ」
うっとりと空を見上げるフルウの姿に、少女はきょとんとして問いかけた。
「えっと、母様は貴族ですよね?」
緑の草木に囲まれた、美しい女児。片手に満たない年齢ながらも己を助け、確りと勇気づけてくれた存在は、どう見ても外の世界を知る術が無い様に思えるのだと言外に告げる少女へ、だがフルウはうふふとうっとりした感情を其の儘に笑みを浮かべて応える。
「お母様の深慮遠謀は素晴らしいのよ。其の御慧眼は決して偏った階級で語る事をなさらないわ」
うふふ、うふふ。
心底嬉しそうな笑顔は、輝くばかりに美しくて甘い。
「はあ……成程」
まだ助け出されて日の浅い少女は母親と皆が呼ぶ恩人との接点が少なく其処迄の心酔し切っていないので、此処迄の陶酔は些か引くものがあるが、己が助け出されたと解かった時の安心感は言葉では表しきれないものがあり…………ざっくざっくと畝作りを再開するフルウの美しい姿を見て、少女は小さく肩を竦めた。
「取りあえず、貴族は子供を捨てて体面を取る外道って云う事は解りました。けど、母様は大好きです」
其の言葉に、フルウはそうねと云って笑ったのだった。
Q / お貴族様の癖に娘を売り払ったド外道な親は其の後如何なったんでしょうか? (母さん大好き同盟12番 王都内隠里在住美青年)
A / 家財を失い没落しました。
「そう云えばぁ」
きらきらと輝く空を見上げて寝転んでいた少年がふと声を上げた。
「姉ちゃん達をウッパラッタ莫迦親って、生きてんの?」
天気が良いのでピクニックしましょうと云って、小さな美女が少年の手をとってやって来たのは大きな木の下。少し高い丘になってる此処は、中腹から裾野にかけて広がる村が一望できる眺めの良さが小さな美女のお気に入りらしかった。
少年は、町で一人生きていたスリだった。其の際立った見目の良さに気付かれ、伯爵家に売られてきたのはつい先日の事。真っ暗な地下から突然緑溢れる室内へ周囲の景色が変わった時は気が狂ったかと己を疑ったが、其の後助けてくれた本人から事情を説明され、暫く此の村で身を潜めていようと云う事になった。そして、助けてくれた本人は、どうせ暇でしょうからと少年に基本的な学問を教えてくれて、時折こうして息抜きまでさせてくれるのだ。
伯爵家の娘の癖に甘いよな、こいつ。
貴族令嬢の暇つぶしだろうと斜に構え、適当に相手をしていた少年は口調も改める事なく接しているのだが、周りにいる女達が憤る事はあっても、少女自体は全く気にしてはいない。
「実の伴わない敬語って、薄気味悪いわよね」
そう云って笑うので、周りも渋々納得しているらしい。
少年が此の村にやってきて思ったのは、吃驚する程貴族率が高いと云う事だった。少年の様に一旦身を隠す目的で幾人か男もいるが、大半は女だった。しかも誰もが目を瞠る様な美しい容姿をしている。少女、と呼ぶにふさわしい年齢から熟女まで。誰も彼もが美しい此の村で全員の敬愛を受けるのは、少年を助けた此の美しい少女だ。
「さあ? 多分、死んだのではないかしら?」
きょとんとしつつもさらりと返した言葉の物騒さに、少年は思わず半身を起して其の美しい顔を凝視する。
「何、あんたが手を回したの?」
さあすがお貴族様! と少年が無邪気ぶって笑って見せれば、少女は気持ち悪い笑いかたしないでと顔を顰めて見せた。
「手なんか回さなくても、行く先何て知れているわよ」
ふふ、と小さく哂い声が漏れる。嘲りの響き持つ其の声音に、少年は促す様に片眉を上げた。
「あのね? 貴族って基本的には領地からの収入で生計立ててるのね?」
自分で働かないとかイケスカネエ~と嘯く少年に小さく笑い声を上げてそうよねえと同意を示し、少女はゆっくり言葉を継ぐ。
「借金するって云う事は、領地経営が上手くいっていないって云う事なの。上手くいっていないって云う事の内容が不作だったり嵐とかの災害が原因な事もあるけれど、大概は単に領地をきちんと統治できなくて収入が無いって云うのが理由ね」
「無能じゃん」
「そう、無能なの」
さらりさらりと笑顔で毒を吐き、少女は柔らかに言葉を紡いだ。
「無能が原因で借金をしたのだもの。返せる訳がないわよね? そして、其の代価として自分の娘を売るような人間に、果たして人はついていくかしら?」
少女は、笑顔だ。だが、其の笑顔の奥には、激しい感情が見え隠れしている。其の覇気に、少年は思わず息を呑んだ。
「貴族社会では、使用人は家具と認識されているわ。人であって、人では無いの。でもね、使用人達は間違いなく――――――人、なのよ」
大きく美しい瞳に煌めく、不可視の炎。
「我が伯爵家はかなり特殊な例だって云うのは知っているかしら?普通、貴族……そうね、其れ程高位でもない、領地経営のみでなんとか体面を保とうとする様な中位以下の貴族は大概が善良なの。驕らず、領民の事を考え、慈善事業に熱心。……でもね、彼等は貴族なのよ」
少年は動けない。目をそらす事も出来ない。言葉を発する事も、何一つ出来ない。
「使用人達にとってはきっと衝撃よね。善良だった筈の自分の雇主が、突然娘を当たり前の様に売り払うのだもの。我が子を裸にして売り払うのよ? 正気の沙汰には思えない筈。……でもね、貴族にとっては、さして感慨は無いのよ。だって、家の存続が先ずありきなのだもの。跡取りならともかく、婦女はさして大切では無いもの」
「女は……いらないのか?」
「華やかさを演出するには必要ね」
んふふ。
口元を引き締め含み笑いする少女は、明確に美しい。そして――――――恐ろしい。
「まあ、雇主一家のそんな姿を見れば、使用人だって態度を変えるのは当たり前ではないかしら。今回の様な豹変がいつ自分に降りかかってくるかも解からないのだもの。さっさと辞めて行くに決まってるじゃないの」
ぱちりと瞬きして、少女は一変、悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「其の時、ちょっと高価なものを失敬していくのは、使用人の権利よね」
使用人と雇主との関係は、完全なる仕事上のもの。故に、執事ですら勤め先を頻繁に変え、数多くの家に仕えた事を己の肩書にしてより良い仕事先を求めるのが常だ。そして、そんな使用人に忠義等芽生える可能性は低く、使用人が小遣い稼ぎに主の秘密を売ったり、家のモノを盗んだりするのは日常茶飯事だった。そうされない様にするには優秀な家令を置くか、忠実なる家政婦を見つけるしかない。若しくは……人柄で、魅了するか。
「使用人の情報力は侮れないのよ。そんな家に良い使用人が働きにくる事なんて金輪際なくなるわ。……手癖が悪かったり、評判の悪い使用人ばかりになるでしょうし、そんな人間だって金目のものが無くなればさっさと姿を晦ますもの。使用人がどんどんいなくなる家なんて、醜聞ありと声高に世間に云ってる様なものだわ。それに、元々が無能で借金したのだもの。すぐに領地経営も破綻してしまうでしょう」
そうなれば。
少女が嗤う。
「破滅しかないわよね」
其の、猛々しさ。
だが少年は思う。此の強い笑みは、何処かで見た笑みだと。そう、例えば……其れは、薄汚れた下町の片隅で子供を抱えた売春婦が値段を値切ろうとした男に対して向けるモノだったり、理不尽な暴力をふるおうとするろくでなしから乳飲み子を守る女の顔だったり。決して屈する事の無い女の笑みだと、少年は小さく身震いする。少年には、親の記憶は無い。だが、多分――――――母親の表情とはこう云うものなのだろうと。少年は、突然、確信した。
「因果応報。天網恢恢疎にして漏らさず。……悪しきは悪しきへ、善きは善きへ」
にっこりとほほ笑む、其の美しさ。
伯爵家もきっと滅ぶわねえと何でもない様に笑顔で云う少女へ、少年は心の儘に抱き着いた。
吃驚した様に体を強張らせながらも、如何したのと柔らかに問いかけて来る少女の小さな体を抱き締め、少年は決意を込めた目をむける。
「俺も、悪い奴だから。あんたと一緒だよ」
きょとんとする少女へ、少年はにっかりと笑って見せた。
「悪しきは悪しきへ……なんだろ? インガとかカイカイとかは解からないけどさ。あんたが悪いから悪い事に呑まれるって云うなら、俺が一緒に居てやるよ」
あまっちょろい、外道伯爵家の一人娘。
少女の言葉は余りにも少女自身の境遇の危うさに直結していたのに、本人からは全く不安な様子が感じられない。そんな相手に、少年は笑顔の儘に真剣な光を目に宿す。
「悪でもなんでも良いじゃん。俺が、あんたを守るよ」
そんな少年の言葉に、少女は一瞬唖然として……だがゆっくりと笑った。花が咲く様に、笑ったのだった。
Q / 息子達は一体何処で何をしている? (王都 大将軍)
A / 普通に生活しています。
伯爵家で扱っていた商品は、ほぼ大半が女だ。生存競争力に乏しく生活能力が低くいが教養は高い貴族の婦女は、逃げ出す可能性が全く無い上美しいので成り上がりの商人等に大層人気だった。
反して。
男の場合は、先ず貴族からの納品は望めない。跡取息子を売りに出すような莫迦は流石に貴族ではありえないし(跡取の不在は家を潰す理由として利用価値が高い)、次男三男であっても、流行病や万万が一の事故死等を考えれば、代替品として手元に置こうとする為だ。故に、男を仕入れようとすれば、貴族以外の社会からの納品となる訳だが、中流階級以下の方が子供に対する愛情が強く、見目麗しい子供であれば其れは常日頃から親が愛情を注いでいる事が多い為決して手放そうとしないし、無理矢理奪おうとすれば命を捨てての抵抗を見せるので、悪名高いが表向きは模範的な伯爵家としては面倒事を避ける為に専ら路上での捕獲を行っていた。所謂、路上生活孤児を狙う訳だ。男は生体部品として売り払う事が前提ではあるが、やはり美しい者の方が高い値がつく為、外見はかなり精査される。そして……そんな過酷な生活をしていた見目麗しい男、と云う存在は、ほぼ確実に裏の世界でかなりの力量を発揮できる才能があった。そうでなければ――――――無残に食い散らかされて、終るのみだ。
華姫と呼ばれる伯爵令嬢が秘密裏に助け出した男達は、女達の様に長期に渡り保護される事は全く無く、大概はある程度匿われた後、己の足で生活に戻っていた。匿われている最中に施された学問の勧めは男達に大層良い影響を与え、戻った後の己の地元で二度とへまをしない処か己の立場をかなり強くする事に多大な効果を齎した。
詰まる所。
結社を立ち上げた訳だ。
王都の貧民街。労働者階級と無生活能力者が入り混じって住む其処に、其の建物は在った。襤褸ではあるが、見た目程脆弱な造りでは無い其処は、此の王都の裏側の三分の一程を掌握する結社のアジトだ。此処を拠点とする結社は弱者の保護と地域の発展を目的として掲げており、市民層に幅広い支持を得ていた。
弱者の保護とはあらゆる犯罪組織から貧民層を養護する事であり、地域の発展とは暗部の排除を示す。こうなれば勿論周囲に五万といる犯罪者やごろつきから敵視され、しかも運営も大変だと思われるかもしれないが、実情は全く異なる。暗部を排するのは暗部を知る者。そして、此の結社を構成する人員は皆、同じ背景を持っている為、非常に結束が強かった。
「皆! 朗報!!!」
ばたん、と扉を開け、幹部室へ飛び込んできたのは見目麗しい男。部屋の中には十人程のこれまた其々が別の美しさを誇る端正な男達が思い思いに寛いでいた。其の男達が一斉に視線を向けるが、青年の域にようやく差し掛かり始めた若木の様な男は些かも怯まず、いっそ堂々と其の視線を受けて立った。
「如何した」
物憂げに返す男も又、美しい。気だるげな表情に鋭い眼光が相俟って凄まじい妖艶な色香を放つが、飛び込んできた男は全く意に介さずぱんと一つ手を打った。
「母さんがパーティーに来るって!」
刹那。
「「「「「よおおおおおおおおおおし!!!!!!!」」」」」
響いた声音は、当に雄叫び。
沈着冷静と名高い結社の幹部連中が不意に上げた声音はアジトを大きく揺るがしたが、其の場に居た構成員達は慣れた様子で己の仕事に戻って行った。
そんな部下達の様子を全く意に介さず、幹部連中はわいわいと楽しげに声を上げ始める。
「んじゃ、俺、森の中の家物色してくるわ! ついでに村人も募集して体裁整えるから後詰頼む!」
すたっと手を上げて立ち上がったワイルド系美形へ嫋やかな美女系の美男が御待ちなさいと声をかける。
「南の森の最深部に木製の屋敷が放置されてる筈です。廃棄されて然程時間は立ってませんから、其れを使うと良いでしょう」
云いながら放り投げられた本をワイルド系がぱらぱらと確かめ、軽く眉を上げた。
「うわ、今は亡き侯爵様の隠れ家かよ。王家がチェックしてんじゃねえの?」
「あ~だーいじょーおぶ~! 其処さ~最初に見つけたの俺だしね~」
年老いた猫の様な福々した表情でのんびり笑うのは、小柄な美形。何処か老成した童顔に笑みを浮かべ、男はぱたりと手を振って見せる。
「王宮がぐっちゃぐっちゃになるちょっと前に暗殺依頼してきたから~あ、ちょっと頭の中を失敬して管理してたんだあ~」
へへえと何とも無邪気に怖い事を云う童顔を周囲がじっとりと眺めやる。
一見無害極まりない此の小柄な男は、実は元々暗殺を生業にしており、其の関係で伯爵家に捕縛されたという過去がある。勿論、今では廃業しているが、其の関係で其の手の事に耳が早く……手も、早い。
「……ま、いっか。ばれる様なへま、しやしないしな」
さくっと割り切って、ワイルド系美形が再度ドアへ向かう。
「必要な人材と資材の見積もりは明日中に出してくださいね」
「了~解」
さっさと出て行く男に最早向ける意識は無く、残った男達も早々に動き始める。
「皆に連絡回すよ~」
「村人希望は貧民街からの永久処置で良いよね~」
「母さんが好きな花なんだっけ!? 植えとかないと!!!」
「料理! 料理如何する!? 田舎料理っぽいの捏造する!?」
「いや、此処はあえての王宮御用達料理のデリバリで!」
「「「「莫迦だろお前!!!」」」
お疲れ様パーティーと銘打った、母親を愛でる会に向け、男達は早々に動き始める。
「隠里とか云った手前、まさか王都にアジトがあるとか云えないもんなあ」
「同意」
苦笑と一緒に紡がれる言葉の明るさは、其れに対しての負の感情を感じさせない。
……こうして、男達は作り上げ磨き上げた『隠里』に母親が訪れた時の笑顔を糧に
様々な趣向を凝らしていくのだ。――――――そして、此の会が滞りなく開催されるように、と云う幹部連の気持ちが一つになった以上に半ば暴走し、王都から大きな争いが軒並み息を潜めたのだった……。