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第6話トライアングル

 ……私、蓮くんが好き。

 楠木の葉の香りが漂う夜にはっきりと気づいた気持ち。

 帰りの電車の中での突然の蓮のキス。

 「お前といるとなんか落ち着くよ」そう言ってくれた蓮くん……。

 唯名の家でのホームパーティーのその帰りの電車の中で、二人の間を流れてる空気が少しずつ

変わり始めていた。


 ある日、倫は里香と二人だけでランチをしていると、倫の姿を見つけ、また唯名が倫の所に歩いてきた。

 「こんにちは、倫ちゃん」

 唯名ちゃんはいつ見ても本当に凄く綺麗で、キラキラしたでずっと見つめられると、女の私ですら硬直しそうになる。

 きっと、私が男だったら、蓮くんが唯名ちゃんのコトを好きなように私も好きになると思う。

 「こんにちは、どうしたの?」

 唯名があの日以来、声をかけてくる事がなかったので倫は不思議そうに訊いてみる。

「倫ちゃん今度の土曜日はヒマ?」

 今度の土曜日?

 彼氏がいるわけでもない、テスト勉強もないし友達との約束も入っていない。

 「うん、ヒマ……だけど?」

 「そう、よかった。なら一緒に映画でも行かない?」

 「え、映画?」

 「うん、観たい映画があって……」

 唯名は少し甘えるような声で言った。

 どうして私を誘うんだろう?映画なら他の子を誘えばいいのに……と倫は思ったが、取りあえず観に行く映画の名前を訊いてみた。

「なんの映画見に行くの?」

「あのね、フランス映画なんだけど『休日はあなたと…』っていう映画、倫ちゃん知ってる?」

 「えっ?うそっ」

 倫はフランス映画という言葉と観に行く映画の名前を聞いて声を弾ませる。

 その映画は倫の観たい映画だった。観に行きたいけど里香ちゃんはフランス映画に興味がないし、一人で行くのもなんだかなぁ……と思って観に行くのを保留していた。

 倫は丁度いいから「いいよ」と返事をした。

 「じゃぁ、決まりね!蓮と直樹も誘ってあるから四人で行こう」と唯名は両手を自分の胸の前で合わ

せると嬉しそうに言った。

 えっ?

 唯名の口から出た蓮の名前に倫は一瞬ドキンとする。

 蓮くんも一緒なんだ……。

 蓮も一緒に行くと聞き、映画に行く気が少し失せた。

 蓮と二人きりでいたり、話したりするのはいつものことだし、蓮のコトが好きだから全然問題はない

のだけれど、大学外での蓮と唯名の二人の姿を見るのは、倫にとって辛いことだった。

 「二人も来るんだ」

 「うん、蓮も直樹も映画好きだから誘っておいたの」

 ニッコリ微笑む唯名に「そうなんだ」としか言えなかった。

 「じゃぁ、土曜日、時計塔広場に一時ね!」

 「あ、うん」

 倫とは正反対に嬉しそうに満面の笑みを浮かべ唯名はそう言うと、友達が待つテーブルまで歩いて行

った。


 倫は複雑な気持ちで目の前にあるグラスの中に入ってる水を一気に飲み干すと、食べかけのカレーラ

イスを黙々と口の中に詰め込み食べ始めた。

 そんな二人のやり取りを、この間と同様、今度は倫の隣でクールに座ってまた聞いていた里香は、落

ち着きがなくカレーライスを口に次々と詰め込んでいく倫を見てニヤリと笑うと、「すごい集中攻撃」

と呟いた。

 「えっ?」(んんんんん……)

 里香が言った言葉に思わず声を飲み倫は里香を見た。

 「なーんかドラマ見てるみたい……」

 「……」

 楽しそうに笑う里香はスプーンを皿の上に置くと腕を組み何かを考え始めて、少し経つと「トライア

ングル」と一言。

 「えっ……?」

 トライアングル?

 倫は楽器のトライアングルを思い浮かべ、カフェテリアの明るい陽射しが注ぎ込む高い吹き抜けの天

井を見つめ考え込んだ。

 違う……。

 トライアングル、イコール……三角関係?

 えっ、三角関係〜?

 三角…………。

 「違うっ!」

 倫は大声で否定すると席を立ち上がった。

 「り、倫?」

 私達が三角関係〜?

 「それは絶対に違うっ!」

 息と声を荒げて倫は言う。

 「お、落ち着いて……みんなが見てるから座ったほうがいいよ。ね,倫」

 自分の右腕を掴み、よそに視線を向ける里香の視線の先を見た倫は立ってる自分を、何してるんだ?

と言う顔で見てるみんなを見て「ごめんねさい、何も無いです」と左右前後にお詫びをし、またイス

に座った。

 「里香ちゃ〜ん」

 「だってね……」

里香は自分の顔の前に右手を上げ人指し指を突き出すと、「天辺が竹下蓮。斜め横に下ろして金城唯名。その横が椎名倫、あんた。そしてまた戻すと、はいっ、綺麗なトライアングルの出来上がり!里香ちゃん上出来!」里香は自分の言った事に納得しながら得意げに言う。

 確かにそうかも知れない……倫は一瞬、ゴモットモと納得するが「違うっ!」倫は里香と同じよう

に自分の顔の前に、右手を出し人指し指を差し出すと、「ここが、竹下蓮。ずーっと真っ直ぐ引いて金

城唯名。これでおしまい!」と言い返した。

 「えっー」

 里香は疑いの眼差しで倫を見ると「倫、竹下蓮のコトなんとも想ってないの?」と訊く。

 「想ってない。まーったく想ってない!」

 倫は首をおもいっきりブルブル振り否定する。

 「なーんだつまんないのぉ」

 里香はがっかりするとまたカレーライスを食べ始める。

 「そんなわけないでしょ、余計な詮索しないの」

 「はいはい……」

 倫も残りのカレーライスを食べ始める。

 「はぁ……」

 最近色んな事がありすぎて、少しため息が増えた感じがする。




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