第15話おかしい自分
蓮は、マンションに帰ると、そのままベットに入り、ずっと、ずっと考えている。
六歳の頃、離婚した両親のコト。
好きになった女達のコト。
軽くて後腐れのない元カノ達のコト。
しつこい元カノのコト。
唯名のコト、もちろん倫のコト……。佐奈に言われるまで、倫に対して深く考えたコトなんて
なかった。
俺はどうしてあの時、倫に声をかけたんだろう?
一番苦手なタイプなはずなのに……。
タイプじゃないけど可愛かったから?
唯名の代わりにしようと思った?でも、俺はなぜ、いつものように倫に軽く『付き合おう』と
言わなかったんだろう?
あいつは落ちないって感じがしたから?
なぜかあいつといる居心地のいい空間を失いたくなかったから?
疑問文ばかりが浮かんでくる……。
俺は気づかないうちに倫を好きになってた?
昔から、好きな女ができても、そいつをいつか失うのが怖くて、友達以上に進展させれない自
分のコトは分かっていた。
いつから倫を好きになっていたんだろう?
あ〜〜もぉ……わけワカンナイ。
どうしてこんなコト考えてるんだろう?俺って??俺ってなんか馬鹿じゃん。今の俺ってカッ
コわりィ。
蓮はベットから降りると、タバコに火をつけ大きく息を吐いた。
当たり前だけど倫から連絡はない。
こっちに帰ってくるコト、もう諦めた倫?
里香ちゃんに倫の電話番号を聞けばいいことなのになぜか聞けない。
会いたくてたまらない。
タバコを灰皿にぎゅっと押し、まだ吸えるはずなのに火を消す。
倫、早く帰ってこい。
「会いたくてたまんねーよ」
こんな気持ち今まで好きになった女になんか沸いたことがない。
「俺、どうしたんだよ?」
こんな自分に物凄く戸惑う。
タバコの箱がいつの間にか空になっている。
「あれ?帰りに買ってきたばっかりだろう?」
今、消したばかりのタバコにまた手を伸ばす。
ローテーブルの上に置いてある灰皿には見事山のようなタバコの吸殻。
「あーうそ……」
最近、またタバコを吸う回数が増えたのは、会えない倫のコトばかり考えてるからだということ
にも気づく。
「馬鹿たれ」
蓮は、空になったタバコの箱をダストボックスへ投げ捨てた。
十月に入ると大学内は月末に行われる合同祭のため慌しくなる。
蓮達が通う大学は、毎年、創立記念祭と学園祭が同時に行われかなり壮大な行事になる。
いつもは智史達と合同祭に向けて盛り上がる蓮だったが、今回の蓮はまったく乗る気がなかった。
「蓮、お前はいつからそんな不健康男になったんだ?」
「は?」
智史は両手を広げ「最近お前の周りに女がいないっ!」とぼやく。
「あのなぁ……」
「俺、お前が森本と付き合うかと思ったのに……」
「なんでだよ」
「おー、俺もそう思った」
直樹も蓮と佐奈が付き合うと予想していた。
この間のコンパの後、二人で消えていったからには絶対何かある。
それに高校時代、蓮と佐奈は想い合っていた。こうくりゃ、百パーセント何かがあってもおかしく
ない……。
でも、予想外の結末(大袈裟?)に二人は驚いた。
『昨日、あれからどうだった?』智史。
『ん、何が?』蓮。
『いしし……とぼけんなよ。ほれ、森本……』
『あー、わけの分かんねぇコト言うから、置いて帰った』
『はぁ?』
『……』
『何、言われたん?』
『忘れた……』
『……』
唖然とする智史……。
「だってよ、お前、昔、森本のコト好きだっただろ?今は、唯名が本命なんだし、ぜってー手ぇ出し
てるかと思った」
確かに智史の言う通り。
自分でもそう思う。
今は唯名を好きであれ、倫を好きであれ、以前の自分なら絶対そうしてると思う。
「ぅーはぁぁ……」
蓮は深くため息をつく。
俺、絶対変……だ。
「お前、おかしいぞっ」
智史……お前には言われたくない……。
「さぁ、図書館行くかなぁ……」
「わっ、俺、鳥肌がっっ」
「うそ、行かねぇよ」
「ナンパに行こうぜ!蓮」
「嫌だ。勝手に行けや。俺は帰って寝る」
「この不健康男っ!」
智史はバックを握りしめいじけ始める。
「よし、じゃぁ、みんなで蓮んち行こうぜ」
直樹は蓮の肩に手をかけた。
「しゃぁねぇーな」
「よっしゃぁー」
ほんと俺、俺が俺じゃない。
倫は、まだフランスから帰ってこない。
でも、倫が帰ってきたら俺はどうするんだろう?
また、ちょっかいなんかかけて倫にきっとバックなんかでバッシッて殴られて……。
でも……。
ああ〜、もう考えるのよそう。
「酒でも買っていかねぇ?」
「よし、きたぁ!」
「なんか俺たちって寂しくねぇ?」
「いいの、いいの」
今日はとりあえず何もかも考えずトコトン飲み明かしてやる