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第12話この関係

  六月に入ったある日。倫の父、良明がフランスから帰国した。

 倫の母、玲の十七回忌の為。

 倫の母は倫が四歳の頃、交通事故でこの世を去り、玲の死後、良明は幼い倫を連れフランスへ

飛びたった。


 パパは十七年経った今もママのコトが忘れられない……。

 お墓参りを済ませた晩、良明は倫と両親に「日本の大学を辞めさせて、フランスに連れて帰り

たい」と話す。

 倫は十三歳で日本に帰国し、父方の祖父母の家で暮らしている。

 後二年で卒業だし、なにより今は少しでも蓮の近くにいたいと思う。でも、『いつか嫁ぐ娘と

少しでも一緒にいたい』と言う父。小さくして母親を失った娘を不憫に思い、母親の様に大切に

育ててくれた父の娘と一緒にいたいという気持ちは痛いほど分かる。

 倫は「少し考えさせて」と返事をした。


 最近、雨ばかりで嫌な日が続く。

 倫は誰もいない静まりかえった教室でイスに座ってひとり窓の外を眺めていた。

 青々とした木々の葉っぱ達は気持ちよさそうにシャワーを浴びているように感じる……。

 

 コンコン。

 誰かが倫のいる教室のドアをノックした。

 振り返ってみると教室の後ろのドアにもたれ腕を組み微笑みながら蓮が立っていた。

 倫もそっと蓮に微笑み返す。

 「お前、やっぱ笑うと可愛いじゃん」ふたりきりのこんな場面、蓮はいつも口癖ののように言う。

 「私だって話してる時は笑うでしょ〜?」倫は膨れっ面で言い返す。

 「おっ、その顔もいい」

 蓮はケラケラと軽い感じで笑うと倫の座る席の机の上に腰を下ろした。

 「どうしたの?」

 法学部の蓮がまた人文学部の棟にいるコトを不思議に思い訊く。

 「里香ちゃんが図書館で、お前が元気ないって……」

 「あー」

 「どうした?」

 蓮の口調が急に真面目になる。

 「ん、うん……あのね……」

 倫は四歳の頃、事故で母親を亡くしたコト、父と二人でのフランスの暮らし、いつも自分の気持ち

を優先してくれた父親に大学を辞めてフランスに帰って来て欲しいと言われて迷っているコトを蓮に

話す。

 珍しく真剣に話を聞いてくれる蓮。

 「そうか……それで、お前は本当はどうしたいの?」

 「……ん」そう聞く蓮の顔を見つめ、倫は、今は蓮くんの傍にいたい。と心の中で呟く。

 「俺の両親なんかさ、お互い別の家庭を持ってて俺を引き取ろうともしない。金とマンションさえ

渡しとけばいいと思ってる……まぁ、そっちの方がすっきりしてて俺はいいけど……」

 そんなコトを笑いながら淡々と話す蓮の顔が倫には少し寂しそうに見える。

 「蓮くん……」

 初めて蓮の名前を小さく口に出す倫。

 「もし、お前が大学を辞めたくないんなら……そんなに大事に思ってくれる親父さんなんだぜ。夏

休みに一度フランスに帰って、自分の気持ちキチンと伝えてこいよ」

 「そうだね。後、二年ぐらい待ってくれるよね?」

 後、二年ぐらい蓮くんのいるここにいてもいいよね?

 「ああ。大事にしろよ、親父さん」

 「蓮くんに似合わない言葉……」

 そう言いながらニコニコ微笑む倫。

 「ひどっ……。人が真面目に聞いてやったのに……」

 いじけて机から立ち上がる蓮。

 「ごめん……ごめんね」

 倫はいじける蓮を見て笑いながら蓮の服の袖をひっぱった。

 「ふーんだ」

 「蓮くーん」

 「やっと名前で呼んだな」

 何度も口にしている名前にようやく気づいた蓮は嬉しそうに笑い、照れながら口に手をあてる倫に

「よくできました」と髪の毛をぐしゃぐしゃと撫ぜた。

 「もぉ、子供扱いしないでっ!」

 「はは……」


 こんな関係が今の二人にはとても心地いい。

 友達以上恋人未満?

 倫は蓮に大抵のコトはなんでも話せるようになる。

 このままこんな関係が続くといいな……。そんな思いで、蓮が言うように,父、良明にキチンと自

分の気持ちを伝える為、倫は夏休みにフランスへと飛んだ。



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