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第10話約束と誰かの一目惚れ

や……こんな所でそんなコト言うなんて……。

満員電車の中、密着する身体と蓮の言葉に倫の頭はオーバーヒート寸前。

ダメだ……窒息死しそう……。私、このまま死んじゃうのかな……?

人の熱気とドキドキする心臓に火照る身体で上手く呼吸ができない。

早く……駅について。早く。

そう思った時、電車はやっと大学がある駅に着いた。


電車のドアが開き、ドアの手すり側にいた倫と蓮は人に押されるように電車の外に出た。

倫は自分の火照った赤くなっていると思う顔を蓮に見られたくなくて、人にまだ押されるような

フリをして蓮の先を歩いた。

「おい、無視すんなよ」

どうして無視すんだよ?

蓮は倫の少し後ろで倫のぎこちない後姿を見ながら声をかける。

「……」

「待てよ」

「……」

「おい、倫っ!」

無視し続ける倫の名前を蓮は初めて呼んだ。

ビクンッ。

「……や」

これ以上無視すると、気づかれちゃうかもしれない……。

う〜。

初めて呼ばれた自分の名前に立ち止まりさっき以上火照った感じの顔で倫はそろ〜と後ろを振り返っ

た。

う〜。

「ヤダッ!!何言ってんの?なんであなたにそんなコト言われなきゃいけないのぉ?」

「いいじゃん、着てこいよ」

「イヤッ!」

「倫ってば」

また自分の名前を口にする蓮の声に意識し、今度こそ蓮に意識してるコトに気づかれるんじゃないか

と感じた倫は蓮に背を向けた。

「……」

「あの服……凄く似合ってたから……」珍しく恥ずかしそうに照れながらぶっきらぼうに言う蓮を倫

は可愛いと感じ「あ、明日ね……」と横目でチラッと蓮の顔を見る。

「やった」



 

次の日、倫は昨日蓮と約束をした、青い小花柄のワンピースを着て駅でいつものように蓮が来るのを

待った。

「遅いなぁ、蓮くん」

最近は、駆け込み乗車をしない蓮。電車が駅に入る少し前には階段を駆け上ってくるのに今日はそん

な気配もない。

寝坊でもしたのかな?倫はホームに入った電車のドアが開くと先にお気に入りのトクトウセキに座った。

今日の電車の中いつもと同じでそんなに混んではなく、曇って太陽が出ていないせいか少し肌寒く感

じる。

蓮くん遅いな?辺りを見渡してみる。ふふ……今日は久しぶりに駆け込み乗車するのかな?倫はそう思

って一人微笑んでいるとドアは閉まり、「えっ?」電車は発車した。


昼から降りだした雨。

倫はカフェテリアで里香と二人でランチをしていたが、蓮はカヘェテリアにも姿を見せなかった。

「倫……今日、なんか寒くない?」辺りをキョロキョロ見回し寒そうに二の腕を擦る里香。

「そうだね」倫は俯きながらパクパクとサラダを食べる。

「そう言えば今日竹下くんは?」

「知らない……唯名ちゃん達とランチしてるんじゃない?」不機嫌そうに答え、トマトに箸をぶすっと

刺す倫。

あはは、倫ってモロ態度にでるよなぁ……。

これは何かあったと里香はにらんだがあまりにも不機嫌に暗いオーラを放ち落ち込んでる倫に突っ込む

コトはできなかった。


倫はランチを終えると、図書館で調べ物がある。と里香と別れ、一人ガラス張りの渡り廊下を歩いて

いた。

もう、あんな奴知らないし口も利きたくない。あんな奴、もう相手にしないっっ!

倫は頬をぷぅーと膨らませながら、怒り心頭で自分に言い聞かせる。

あー、もうヤダヤダ〜。なんで?

ドンッ!!

ドサドサドサァッ!

ぶつかった拍子に何冊かの本が倫の足の上に落ちてきた。

「痛っ」

足元を見ながら歩いていた倫は、分厚い何冊かの本を抱えてた男に気づかずぶつかった。

「あ、すみませんっ。前が見えなくて……」

しゃがみ込み本を拾いながら倫に謝る男に倫もしゃがみ込み座り「あ、私の方こそ前を見ていなかった

から……ごめんなさいっ、ごめんなさい」と何度も謝り一緒に本を拾い始める。


透き通る栗毛色の色素の薄い髪の毛がサラサラと色白い肩から流れ、華奢な腕で重い本を何冊か拾う

倫の姿を男は見つめた。

確か、この子、同じ学部の……椎名……んー?

綺麗な子だなぁ。

いつも廊下ですれ違うぐらいだからなんとなくしか思わなかったけど、こんな綺麗な子……だったんだ……。

男は俯き本を拾う倫の姿を見つめた。

「ごめんね、ありがとね」男は自分の鼻下まである高さの本を重そうに抱えるとニッコリと微笑んだ。

「重そうですね、半分持ちましょうか?」耳下で髪を押さえ倫はニッコリ微笑み訊く。

「えっ、いいよ」

「そうですか?」

「今から、図書館行くんでしょ?」

「あ、はい……」

彼女との間に優しい空気が流れる……男はそう感じる。

「じゃぁ……」男は倫に優しい顔で微笑みかけると

「はい」倫はお辞儀をし図書館に向かい歩きだした。

すれ違う倫の甘い香りと色素の薄い髪の毛が靡くのを横目で追う。

本当に綺麗な子だなぁ。

僕は、この子に一目惚れをした。







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