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印象

初めて書いた小説です。


 春の日差しが心地よく照らしている。

四月半ば……。

ふと気を緩めてしまうと、ついうとうとと眠りに入ってしまいそうなそんな中……。

駅のホームにいつものアナウンスがかかるとりんはベンチから立ち上がり電車が来る方向を長い髪の毛を首元で押さえながら見つめた。

 倫は、電車のドアが開くと一両目の真ん中の二人用のイスに座る。

このイスは、いつも座れるわけではないけれど倫のお気に入りの特等席。

 倫は、お気に入りの特等席に座るとバックからいつも電車の中で読む小説の本を取り出し読みかけのページを開き、発車時刻になった電車はドアを閉じようとす

る……。

後半分でドアが閉まろうとしたその瞬間、一人の大学生、れんが駆け込み乗車をし、息を切らしながら倫の隣にドスッ!と座った。

「あっち〜」

 蓮は肩にかけていたバックの紐をはずすと、バックで自分を扇ぎながら迷惑そうな顔で自分を見ている倫にニコニコと笑う。

 なんか嫌な奴……。

あまりにもずっと自分の顔を見て笑う蓮に、倫はムッとし無愛想に「なにか?」と尋ねた。

「お前、笑うと可愛いよ」

 ……確かにそう。

すぅーっと通った目鼻立ち、カールした長いまつげと二重の大きな瞳に桜色の唇。

 無愛想を除けば、すべてがパーフェクトといった感じの倫。

「……」

「お前、笑うと絶対可愛いって!」

 蓮は、初対面の倫にあだかも自分の友達かのように馴れ馴れしく言う。

「余計なお世話よっ!」

 サラサラした前髪から覗く少しクールな瞳。

でも、笑った顔と口調はすごく人なつっこい感じで軽く悪戯っぽい少年のような蓮は、ぶすっとしながら自分の顔を見ている倫の口元に手をあてるとくちびるの端と端を上げた。

「こうすんのっ!」

 えっ?

いきなりの予想外の蓮の行動に驚き焦った倫は思わず立ち上がり、バッチ〜ンッ!と両手で蓮の顔を挟むように叩いた。

「!?」

 唖然とする蓮と電車の中の周囲の人達。

あっ……。

 倫は、驚いた様子でポカンと口を開けて自分を見ている人達から目線を反らすようにさっと床に落ちた本を拾い、バックに本をしまうとイスに座り俯いた。

 電車が倫の降りる大学前の駅に到着すると、倫はドアが開くと同時に真っ赤なムッとした顔でそそくさと電車を降り、蓮もそんな倫の後ろをついて降りた。

 少しして後ろに何かの気配を感じ、自分の後ろについて歩いていた蓮に気がつくと倫は振り返り「なんでついてくんの?」とバックを蓮の顔の前に大きくぶんっと振った。

気がつえー女……。

 蓮は倫の振ったバックをスッとかわすと、またニコニコと笑い改札口の方を指す。

「俺もこっちなの……」

「……」

 蓮が指す改札口の方を見て、えっ?という顔で動きが止まる倫の横を蓮はふんっと顔を上げ、してやったりという態度で微笑むと歩き出し通り過ぎようとした。

 倫は自分の横を通り過ぎて行く蓮をキッと睨みつけた。

おもしれー女。

 蓮は、怒り心頭でその場に立ち止まる倫の視線を背中に感じながら、飽きないおもちゃが見つかった子供のようにニコニコしながら大学へと向かった。








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