真実の射程と一撃の愛
「人間の意志など、不確実なノイズに過ぎん」
黄金の機体「セラフィム」から発せられる合成音声が、地底の空洞に響き渡る。カイの放った決死の突撃も、ゼノの周囲に展開された「絶対因果防御」の壁に阻まれ、火花を散らすことさえできない。
第二形態 殲滅の千翼
「形態移行。不確定要素を完全に排除する」
ゼノの機体が不気味な金属音を立てて分解・再構築されていく。背中から無数の光り輝くブレードが翼のように広がり、それは一本一本が独立した無人レーザー機として分離した。 空洞は一瞬にして、数千の殺意の光に埋め尽くされる。
「くそっ、どこを狙えばいい!? どこを向いても死角がねえ!」 カイは回避行動を取り続けるが、オンボロのジェイ・フィフティーンの装甲は紙のように削り取られていく。物理的な限界。命の灯火が消えようとしたその時、リアがカイの背中にしがみついた。
「カイ、諦めないで! 奴は無敵じゃない……ただ、『予測』しているだけよ!」
第三形態 虚無の特異点
さらにゼノは変貌する。無数の翼を中央に集め、自らを巨大な「レンズ」へと変えた。地上の太陽から強制的に吸い上げた魔力が一点に収束し、空間そのものが歪み始める。
「最終形態。因果律崩壊。この領域ごと、真実を無に帰す」
発射されれば、奈落の庭園も、そこに眠る記憶も、二人の存在も、歴史から消える。絶対的な絶望。しかし、リアの「真実を映す瞳」は、その絶望の「奥」にあるものを捉えていた。
「見えた……! 奴の心、あの機械の核の中に、お兄様の『本当の記憶』が閉じ込められている!」
それは、帝国が演算のために利用していた、本物のゼノの魂の残滓。 機械神が「無敵」なのは、人間としてのゼノが持つ「妹を守りたい」という執念さえも、防御プログラムに変換して利用しているからだった。
逆転の嘘:ビームの真実
「カイ、お願い! 私を……私を撃って!」 「何を言ってやがる!」 「いいえ、私を狙うふりをして、奴の『予測』の裏をかくの! 奴は私を守ろうとするお兄様の記憶を利用している。だから、私が死ぬという『予測』だけは、奴のプログラムをバグらせる唯一の嘘になる!」
カイは震える手で操縦桿を握り直した。 これまで数え切れないほどの嘘をついてきたカイ。だが、これほど残酷で、これほど美しい嘘はなかった。
「……ああ、わかったよ。最後に最高の嘘をかましてやる!」
カイは全エネルギーを一点に集中させた。ジェイ・フィフティーンの機首が、リアに向けて固定される。 ゼノの機械脳が火花を散らす。 【エラー:リアの死亡確率 99.9%。防衛プログラム……優先順位の競合が発生。全出力を防御に回せ】
ゼノの鉄壁の防御が、リアを守るために、一瞬だけ「内側」に向かって開かれた。
「今だぁぁぁーーー!!!」
カイが放ったのは、破壊のビームではない。リアの「鍵」から放たれた、数万の記憶を乗せた「真実の光」。 それはゼノの懐を貫き、機械の奥底で眠っていた「本物のゼノ」の意識を叩き起こした。
「……リア……カイ……。遅かったじゃないか……」
機械神の動きが止まる。黄金の装甲がボロボロと崩れ落ち、中から現れたのは、かつての親友の優しい微笑みを浮かべた光の像だった。




